クレジット
初確認時のSCP-1033-JP
アイテム番号: SCP-1033-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1033-JPはサイト-8102内の低危険度中型生物用ケージ機械給餌/清掃システムおよび麻酔ガス噴射機構を備えた大型生物用チャンバー内に収容されます。チャンバーの外周および上下階に簡易型Dクラス居住ユニット3室を配置し、メルツ=ルフレット顕潜両極イメージ投射試験/1033-JPにより「ウサギについて収容違反リスクの高い知識を持たない」と判定されたDクラス職員各1名を生活させてください。それ以外の人員による各居住ユニットおよびチャンバーの出入り口に続く通路への立ち入りには、SCP-1033-JPの担当職員またはサイト管理者の認可が必要です。監視・研究はカメラおよび無人機を通して行われ、Cクラス以上の職員による直接接触は許可されません。
説明: SCP-1033-JPは一般に「ウサギ」として認知される形態をとる実体です。2018年03月03日現在、体長47cmのヤブノウサギ(Lepus europaeus)の姿をしています。SCP-1033-JPは不定期に、最も近くに存在する人間が持つ「ウサギ」のイメージのいずれかに合致する形態に変異します。このプロセスはSCP-1033-JP実体の視覚的な揺らぎとして観測され、いずれも数秒のうちに完了します。変異を妨害する試みは今のところ成功しておらず、死亡を含む損傷は変異時に完全に回復します。複数回の変異を通して共通した身体的特徴は右耳介内側に記された刻印のみです。刻印の内容は以下の一行です。
日本生類創研 う-033-Prototype / 技術参考: Imaginanimal
変異後のSCP-1033-JPは、その姿の原形となったイメージに対応する能力および自我を持ちます。形態によっては対話も可能ですが、SCP-1033-JP自体としての一貫した自我は確認できておらず、今のところ有益な情報は得られていません。主立った変異の記録は以下に示します。
記録番号: 1033-JP-001
発生日時: 2017年04月21日
説明: 体長36cm・白色のエゾユキウサギ(Lepus timidus ainu)。
備考: エージェント・西条が長野県佐久市において異常現象の疑いとして報告された「服を着たウサギを追いかけて子供が失踪した」との情報を調査中、体長30cm程度の茶色のアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)と思われる形態から変異する瞬間を目視。その他の異常行動が見られないことを確認後、確保に至った。
記録番号: 1033-JP-002
発生日時: 2017年04月22日
説明: 体長22cm・ベージュ色のホーランドロップ品種のアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)。
備考: 後に担当の野辺山博士から「幼少期に飼っていたウサギが同品種・同色だった記憶がおぼろげにある」との追加報告がなされた。
記録番号: 1033-JP-006
発生日時: 2017年05月03日
説明: 大きさ24cm・白黒の斑模様のウサギを模したぬいぐるみ。
備考: 非生物の形態へと変異した最初の記録。次回の変異までの間、SCP-1033-JPが自律的に動くことはなかった。
記録番号: 1033-JP-021
発生日時: 2017年06月08日
説明: 体高15cm程度・ピンク色のデフォルメされたウサギ型実体。青色のリボンと首飾りを身に着けており、二足歩行および発声を行う。
備考: 次回の変異までの期間が短かったため、非接触中の映像記録のみ。日本語で「ここはどこなのか」「誰もいなくて淋しい」と言った趣旨の独言が見られた。非実在キャラクターと思われる形態へと変異した最初の記録。知性の存在およびコミュニケーション可能性を踏まえ、特別収容プロトコルが改定。
記録番号: 1033-JP-045
発生日時: 2017年07月16日
説明: 所謂バニーガールの衣装を着用した人間女性型実体。西ヨーロッパ系人種の特徴を有するが、日本語でのみ会話が可能であった。
備考: 変異記録1033-JP-021を踏まえた観察体制の強化により臨時インタビューが実現。SCP-1033-JPは変異によって記憶および自我を共有しないことが示唆されている。インタビュー記録1033-JP-045/抜粋
<SCP-1033-JPは状況に混乱している。重要性の低い音声は編集済。>
野辺山博士: では、あなたはここに来た時の記憶は持っていないのですね?
SCP-1033-JP: そうよ。ここは何の施設なの? 病院ではなさそうだけど。
野辺山博士: その質問にはお答えできませんが、危害を加えないことはお約束しますよ。
SCP-1033-JP: マンハッタン・グランド・カジノへ帰してくれない?
野辺山博士: そうですね......担当者へ伝えておきます。
SCP-1033-JP: ううん。早く仕事に戻りたいんだけど......
[以下編集済]
記録番号: 1033-JP-058
発生日時: 2017年08月11日
説明: 体長20cm程度・白色の不明な種のウサギ型実体。門歯が大きく発達しており、異常な筋力および瞬発力を見せる。
備考: 収容チャンバー内での身体測定中にSCP-1033-JPは想定外の攻撃行動に移り、潮沢補助員が門歯により頸部を切断され死亡。野辺山博士は左腕を負傷するもチャンバーから脱出し扉を封鎖、収容は保たれる。直接接触の危険性を踏まえ、特別収容プロトコルが改定。
追記: 2017年10月06日、SCP-1033-JPの収容違反が発生しました。
記録番号: 1033-JP-077
発生日時: 2017年10月06日
説明: 体高110cm程度・水色および白色のデフォルメされたウサギ型実体。二足歩行およびジェスチャーによる感情表現を確認。
備考: 事案1033-JP-077が発生。
事案の現場が複数に渡るため、以下は関係者の証言・監視カメラの映像を総合した時系列順の記録となっています。
2017年10月06日
<12:00> SCP-1033-JPはサイト-8102内セクター03の収容チャンバーに設置された中型生物用ケージ内で活動中。研究主任の野辺山博士が昼休憩に入る。新任のエイヴリー補助員が収容チャンバーに隣接する研究室からの観察および監視を続行。
<12:12> ケージ内にてSCP-1033-JPの変異が発生、変異記録1033-JP-077の形態を取る。エイヴリー補助員は観察レポートに書き込みを開始する。
<12:12> SCP-1033-JPはケージの扉を掴んで揺らし、開かないことを確認すると考え込むようなポーズを取る。数秒後、何かを思いついたような仕草と同時にSCP-1033-JPの頭上に不明な方法で白熱電球が出現する。SCP-1033-JPは電球を掴んで叩き割り、フィラメントの先端を曲げてケージの錠前に差し込み、開錠する。エイヴリー補助員は事態を把握するため監視カメラの映像を注視する。
<12:13> SCP-1033-JPはチャンバー出入り口の電子扉を引き開けようと試み、大げさな身振りで肩をすくめる。その後チャンバー内を見回し、清掃用具などの入ったロッカーに歩み寄るとそれを蹴り開け、替えの作業着の胸ポケットからサインペンを取り出す。SCP-1033-JPが出入り口の反対側の壁面にドアの絵を描くと、それは壁面ごと本物のドアのように開く。SCP-1033-JPがチャンバーを退出。エイヴリー補助員は野辺山博士に呼び出しをかけ、ドアの描かれた壁の先の地点を確認に走る。
<12:14> セクター内通路の常設カメラに何かを捜し歩いている様子のSCP-1033-JPが映り込む。エイヴリー補助員が開かれた壁を確認。
<12:15> SCP-1033-JPが通路上で青沼研究員に遭遇。SCP-1033-JPはジェスチャーで何かを伝えようとするが意図は不明。青沼研究員は何らかの収容違反と判断し、手持ちのPDAからサイト管理者へ報告を試みるが、SCP-1033-JPに素早く口を塞がれる。SCP-1033-JPは口元で指を立て「静かに」とのジェスチャーを示してPDAを取り上げるが、その瞬間PDA本体の着信音が大音量で鳴り出して通常の操作を受け付けなくなる。SCP-1033-JPは当惑した反応を見せ、青沼研究員およびPDAをその場に残し逃走。
<12:17> エイヴリー補助員が野辺山博士と合流。現状確認の短い会話の後、収容違反としてサイト管理者へ報告がなされる。
<12:21> セクター03内のセキュリティ担当者4名がチームとして出動。常設カメラは人目を警戒しながら階段を下りるSCP-1033-JPを確認している。セキュリティチームは上階と下階の各2名に分かれ、挟み撃ちの形で確保する作戦が立てられる。
<12:23> 1-2Fの階段にてSCP-1033-JPと下階チームが遭遇。SCP-1033-JPは驚いた様子で飛び上がり、来た階段を駆け上る。すぐに行く手を塞ぐ形で駆け下りてくる上階チームに気付いたSCP-1033-JPは唐突に異常な跳躍力を見せ、上階チームの2名を踏み越える。2F廊下へ。
<12:23> SCP-1033-JPは廊下を走るが、前方から同階層を移動中の笛栖研究員およびエージェント・斑鳩が接近する。互いを認識し、エージェント・斑鳩が構えを取り、SCP-1033-JPは前後を見回す。SCP-1033-JPは背後に迫るセキュリティチームを認識すると、再びサインペンを取り出して床面に円を描き、追い付かれる寸前に円の中に飛び込んで消える。セキュリティチームのうち2名が転落。残りの隊員2名は階段へ引き返し1Fに向かう。
<12:24> SCP-1033-JPが1Fの職員用売店区画に到達。驚く売店員をよそに、SCP-1033-JPは何かを考えているような仕草で売店内を歩き回り、商品棚からいくつかの食品および資材を胴体側面の毛皮がポケット状になっていると思われる部分にしまい込む。代金としてか、同ポケットから取り出された異常性のない20米ドル紙幣2枚が売店員に支払われた。
<12:25> セキュリティチームの2名が売店区画へ到達。SCP-1033-JPを区画端の壁際に追い詰め、ヒルベルト隊員が催涙スプレーを構えるが、同時にSCP-1033-JPがポケットから炭酸飲料の瓶を取り出して開栓。明らかに異常な量と勢いの炭酸飲料が噴出し、ヒルベルト隊員を巻き込んで吹き飛ばし通路脇の窓ガラスを突き破る。隣の平田隊員が怯んだ隙にSCP-1033-JPはその場に積まれていた売店の搬入用段ボール箱を投げつけて被せ、即座に飛びかかってダクトテープによる梱包を施し、箱ごと割れた窓の外へ投げ飛ばす。段ボール箱はちょうど窓の外に停車していた詳細不明なトラックの荷台へ着地し、トラックは即座に発車。セキュリティチーム全員が無力化される。カメラを通して監視していたサイト管理者からサイト-8102常駐戦術部隊る-06("エンドロール")に出動要請がなされる。
<12:26> SCP-1033-JPは口笛を吹きながら階段を上り、元いた収容区画へ向かう。職員に進路上から退避するようアナウンスがなされる。
<12:28> SCP-1033-JPが自身の収容チャンバー隣の研究室へ侵入。観察デスク上にポケットから出した数点の物品を置き、すぐに退出する。
<12:28> SCP-1033-JPは収容チャンバー裏の開いた壁から室内へ入り、清掃用具ロッカーからモップを取り出し、閉じた壁を拭う。描かれたドアが消えるとともに壁面は一切の隙間なく元通りに修復される。SCP-1033-JPはチャンバー内のケージに戻り、寝藁の上で仰向けに足を組んで眠り始める。
<12:30> 収容が復元された旨がアナウンスされ、野辺山博士・エイヴリー補助員が研究室へ戻る。エイヴリー補助員がデスク上に置かれた物品を見つけ、添えられたカードのメッセージを読み、脱力した様子で笑いを漏らす。報告によると品目は以下の通り。全てSCP-1033-JPが1F売店で購入したものから構成されており、一切の異常性は確認されなかった。
- 赤いリボンのかけられた紙箱。内容物は4号ホールのショートケーキであり、上面に花火が█本・蝋燭が█本立てられていた。
- 装飾用造花で作られた花束。花の間に生のニンジンが8本ほど混じっている。
- カラフルな包装紙およびリボンでラッピングされた包み。中身は16色セットのクレヨン1箱と大判のスケッチブック1冊であった。
- メッセージを書き込めるグリーティング・カード1通。一般的な英語で以下の内容が書かれていた。
親愛なる███・█████
ハッピーバースデー!!
君が小さな頃からずっと僕らの世界を愛してくれていたこと、
それを忘れ去ることなく今日このウサちゃんと出会ってくれたこと、感謝するよ。
恩返しって言うにはちょっとした大騒ぎになっちゃったけど、
なかなか愉快なスペシャル・エピソードが撮れたんじゃないかな?
<12:31> 物品の確認を終えたエイヴリー補助員が収容チャンバー内のカメラ映像を視認。近接カメラに眠っているSCP-1033-JPが映されるが、不明な原因によりカメラ映像の領域が画面端から円形に狭まって行く。SCP-1033-JPの顔だけが映っている状態になると収縮は止まり、一瞬の間をおいてSCP-1033-JPが目を開け、満足気な表情でカメラに向けてウィンクをする。その後再び映像領域の収縮が開始して全面が黒一色となった後、「THE END」と書かれたロゴがフェードインした状態で映像は停止。十数秒後に自動的にカメラの電源が切れる。再起動後には一切の異常は確認されなかった。
<12:32> 戦術部隊る-06("エンドロール")がセクター03内へ到着。
事案1033-JP-077の記録後、エイヴリー補助員からSCP-1033-JPの変異が近傍の人間の潜在意識に依存する可能性が指摘されました。野辺山博士による変異記録1033-JP-002についての追加報告も合わせて検証に値する仮説と判断され、エイヴリー補助員はSCP-1033-JPの担当から離任。ウサギをモチーフにした伝承・フィクション類のうち、収容違反リスクの高いものについての知識を持たないことが試験により確認されたDクラス職員を選抜・移送して検証実験が行われ、現在の特別収容プロトコルが制定されました。以後、収容違反に繋がりかねない変異の報告は█件に留まっています。