それでも帰るというの? |
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アイテム番号: SCP-1000-JP
オブジェクトクラス: [Deleted]
特別収容プロトコル: 探査機062-Aへの信号送信は、特別な場合を除いて禁止されています。小惑星AL120の軌道は、常に3箇所以上の観測所によって監視されなければなりません。AL120の軌道に変化があった場合、特別対策班"ペイルブルードット(PBD)"によってトリノスケールの再判定が行われます。L7以上の判定が出た場合、探査機062-Aおよび付属物は即時無力化リストへ編入され、保護措置は破棄されます。当該オブジェクトの情報は、F5以上の表象領域が割り当てられた職員のみ閲覧できます。
説明: SCP-1000-JPは、小惑星(2001-AL120)の試料採集を目的に製造された、深宇宙探査機(標識番号2003-062-A)の付属物です。
探査機062-Aは、現在一切の遠隔操作を行えない状態にあります。AL120表面で再発見されて以降、探査機062-Aが何らかの信号を受信した場合、AL120の軌道成分に影響する異常現象が発生しています。軌道の変化は、16箇所の財団併設観測所と、221箇所の民間観測所が確認しており、信号受信との確実な関係性を示しています。観測された変化は、軌道長半径の縮小や軌道速度の減少などの微細な変化ですが、何れも天体衝突の可能性を高める変化です。AL120の持つ膨大な質量から、破滅的絶滅イベント(ELE)が発生する危険性があるため、探査機062-Aへの信号送信は当面凍結されています。
2003年5月9日 探査機062-Aは、小惑星から試料を採取する計画のために打ち上げられました。機体の建造には、財団も費用の負担と一部機材の貸与を行いました。機体は打ち上げ後、約3.1AUまで航行しましたが、近接する恒星のフレア(X28クラス)に遭遇し、交信途絶状態に陥りました。復旧作業には財団も寄与しましたが通信機能は回復せず、2006年12月31日を以て機体喪失と見なされ、運用は停止されました。
機体喪失から690日後、探査機062-Aの通信機能を担当した研究室と、財団のCETI観測所(6EQUJ5)が8406.99MHzにおいて微弱な信号を受信しました。信号は062-Aから発信されていることが判明しましたが、上記の異常現象が確認され、財団が管轄する案件となりました。
代替シナリオには人工惑星(J102E3)が選定され、再発見から帰還までの記録を再生成し、大気圏への再突入によって無事消滅しました。
SP062AoffimageA001.jpg |
探査機062-Aから最初に受信した画像。062-A着陸予定地点と推測される。 |
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探査機062-Aの撮影したAL120の表面は、輝線スペクトル分析の結果とは異なっており、日本列島中央部に位置する山岳周辺と相似しています。当該画像の受信後、撮影続行の命令を送信した際、AL120の軌道変化が観測されました。
ノストロモ計画 |
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探査機062-Aを収容するため、有人航行計画が立案されました。AL120表層にSRAパネル14基を組み上げ、現地で収容状態へ移行させる計画です。当計画において、人的資源の回収は行われません。
組立型収容施設 SRAパネル(SRP-005BC) 仕様 ※(注記)1基当たり | |||
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質量 | 85kg | 最大幅 | 1,650mm |
最大平衡濃度 | 70Hm/h | 安定現実性濃度 | 2Hm/cm3 |
稼動出力 | 150W | 動作可能時間 | 150,000h |
着陸船 ナーシサス(IMS-001) 仕様 | |||
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合計質量 | 15,120kg | 最大積載質量 | 720kg |
最大航続時間 | 160h | 降下推進出力 | 44.4kN |
最大幅 | 4,760mm | 全高 | 6,880mm |
脚間距離 | 9,070mm | 最大乗員数 | 2名 |
運搬車 ロードジム(IRV-001) 仕様 | |||
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運転質量 | 260kg | 最大積載質量 | 320kg |
蓄電池容量 | 200Ah | 最高出力 | 80kw(105PS) |
全長 | 3,160mm | 全幅 | 1,890mm |
全高 | 2,600mm | 最大乗員数 | 2名 |
SP062Aimage001.jpg |
最終点検時の探査機062-A。 |
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搭乗員を3名、予備搭乗員を3名、計6名に決定する。
意思確認と特別保存書簡の執筆。
AL120の周回軌道へ移行。ナーシサス降下準備。
ロードジム起動。SRAパネル運搬開始。
実験的な現地調査と採取物および記録の保存。
エージェント ジョーンズ -[IDNo.C2007]
エージェント アッシュ -[IDNo.C2260]
ミシマ博士 -[IDNo.B4603]
SCP-109-JP-Aに変質した後も、職務を全うできたことに最上の感謝を示し、最後の任務に就けることを誇りに思います。 -A.ジョーンズ
SCP-515-JPによる不可逆の情報子汚染を受けた私が、この任務に就くことは最善の選択と考えます。異論はありません。全ての職員に健やかな未来のあることを祈ります。 -A.アッシュ
君たちを許さない。
ノストロモ計画の凍結が決定されました。探査機062-Aの収容は無期限に延期されます。
通達: オルメイヤー計画は継続されます。投入表象は増員予定です。
接続船ナーシサス受信情報取得クエリ
ナーシサスの受信情報取得にはRAISAの許可が必要です。
閲覧端末のIDと以下の認証コードを照会しますか?
RAISA認証コード-RBP-000012
閲覧可能ファイル: ノストロモ計画(NST+002)およびオルメイヤー計画(OME+001)
表象の漏洩が認められた場合は
直ちに通信を切断しRAISAの指示に従ってください。
…
[ID情報を中継局へ送信]…QID0012-NST-0017
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まず、私たちも混乱しており、正しい現状を把握できていない可能性があります。
探査機062-Aの周囲一帯(B310)には、天候が存在します。小型無人機の観測では、Dfb気候およびET気候に属していると見られます。より広範にはCfa気候が再現されています。気候の見られる地域には、コケ類やシダ植物が生育しており、少数ながら種子植物も存在しています。昆虫や魚を含め、動物は一切生息していません。AL120表層全域に呼吸可能な大気(湿潤空気)が存在しており、気密服を着用せずに船外活動が可能です。
気候と植生から、B310地点付近は日本列島中央付近の環境が再現されていると考えられます。実在の場所と大きく異なるのは、現実強度の数値です。
B310地点における、AL120の現実性濃度は550Hm/cm3を示しており、他2箇所(B331,A197)でも同様の数値が計測されました。AL120表層の現実性は過飽和状態にあると見られ、あらゆる異常現象の介在を許容しません。
AL120の環境は、異常性を帯びた生物や物品には恩恵と言えます。現実性濃度が平衡状態へと移行する作用により、AL120の現実性が異常存在へ流入します。現在のAL120の環境は、限りなく正常に近い現実性を示しており、全ての異常存在は次第に希釈されると考えられます。
u4E00u756Au76EEu306Fu6620u50CFu8A18u61B6.jpg |
[不明なエラー] |
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[ID情報を中継局へ送信]…QID0012-NST-0023
SP062AC2260image104.jpg |
062-A本体と周囲を撮影。 |
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SRAパネルによる探査機062-Aの収容は依然成功していません。
着陸船ナーシサスと探査機062-Aまでは、距離にして14.2km離れており、標高差も2450mあるため、SRAパネルの運搬が困難なことに加え、着陸船がAL120の正常性に希釈される可能性があるため、食料と重要機材の保護にSRAパネルを7基使用している状況が要因です。運搬車ロードジムはすでに正常性に希釈され、後部の積載部品を喪失しました。
残るSRAパネル7基も、我々が睡眠をとる場所として使用しており、収容計画は大きな修正を必要としています。SRAパネルの平衡能力にも限界があり、支給された"リンゴ"が2つ失われたため、計画完了後の終了方法も新たな手順が必要です。
各計測対象の現実強度:
AL120表層上の物体では、A.アッシュの異常性が最も高く、探査機062-Aの現実性濃度はAL120の異常現象を説明できるほどには高くありません。AL120の持つ強力な正常性によって希釈された結果か、あるいは最初から収容する必要のない存在であったかは判別できません。
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[不明なエラー] |
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A.アッシュとA.ジョーンズの異常性は、AL120表層上の調査活動中に希釈され、外見以外の異常性はほぼ喪失しました。
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[ID情報を中継局へ送信]…QID0012-OME-0105
ようやく見つけました。私はついに目標を確保しました。
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[不正なエラー] |
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探査機062-Aを分解し、着陸船ナーシサスへ運ぶ計画の途中で、内部に収容された物品を発見しました。当該物品は外見上、剣に見えます。長さ60cmほどの金属製の剣です。回収時の当該物品には、電源とモデムが接続されていて、電力が供給されていました。通信規格は保全サーバーと一致しており、ナーシサスからも接続が可能です。ナーシサスのCTスキャナ解析により、当該物品は一種の補助記憶装置であることが判明しました。
内部の記憶領域には膨大な情報体が存在し、多数の知性反応が確認されました。これが表象領域なのでしょうか。参照不可の領域が存在することから、F5までの階層を保存しているものと見られ、高レベルクリアランス職員を内包した中枢領域の予備サーバーと思われます。
小型無人機の観測により、当該物品は気候と植物の存在する領域の、中心に位置していることが判明しました。
内部に保存された職員の表象が、AL120表層の現実性に干渉し、現在のAL120の環境を生成しているとすれば、表象の遮断は生存可能領域の消失を意味します。当該物品をSRAパネルで収容することは危険を伴うため、現在は電源を確保した上で、着陸船に収容している状態にあります。
AL120表層上の過剰な正常性が、表象の総意なのだとしたら、やはり財団は、異常性を帯びた職員を排除したかったということでしょうか。24年前、私を排除したように。
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[不明なエラー] |
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u4E94u756Au76EEu306Fu9B42.jpg |
もうやめようよ |
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アッシュとジョーンズは、すでに正常な世界になってしまいました。いずれ私もこの領域に希釈されると思われます。私はいったいどうやってここに来たのか、もはや思い出すことはできません。
この星にも太陽が昇ってくることを発見しました。もう帰ることのできない向こう側にも。わかってる。ここは私の生まれた星なのだから。
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ここはこんなにもすばらしい。 |
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…
…[… ……]
RBPnonePBD.jpg |
どこにいるの? |
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…
…
[中断]
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