'シュールマン-NYプログラム型記憶強化デバイス'(AC34D/NC77Q/95DCS)
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JP翻訳版タイトル: 'シュールマン-NYプログラム型記憶強化デバイス'(AC34D/NC77Q/95DCS)
翻訳責任者: TOLPO TOLPO
翻訳年: 2025年
著作権者: WrongJohnSilver WrongJohnSilver 、Cyantreuse(アカウント削除済み)
原題: 'Schulman-NY Programmable Mnestic Device' (AC34D/NC77Q/95DCS)
作成年: 2018年
初訳時参照リビジョン: 17
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/schulman-ny-programmable-mnestic-device-ac34d-nc77q-95dcs
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AC34D/NC77Q/95DCS | |
---|---|
状態 | 販売中 |
需要 | 低 |
価格 | 1機あたり8000アメリカドル/6000GBP |
入手可能性 | 現在在庫有(210機) |
識別名 | シュールマン-NYプログラム型記憶強化デバイス |
説明 | この商品は失われた記憶を強制的に励起させる機能を持った超小型デバイスです。プログラム可能な電子部品と、生化学的な静脈穿刺部品もしくは腰椎穿刺部品で構成されています。この商品を使用することによる記憶の励起確率は、異常な経緯で失った記憶かどうかにかかわらず、94%となっています。 |
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
初期報告書01 | |||
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筆者 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 日付 | 2014年1月15日 |
重要性 | 中 | 識別名 | シュールマン-NYプログラム型記憶強化デバイス |
超常社会に身を置く顧客が存在する以上、やはり財団やGOCの行う記憶処理への対策は必要不可欠です。このような状況及び潜在的な需要を鑑み、私は記憶処理の影響を完全に消す装置を開発いたしました。 | |||
マーケティングメモ: この商品を使用することによって、使用者の記憶を使用者だけがアクセスできる形式に変換可能です。したがって、誰にも見られることなく、個人的な用事や会議の議事録を思い出すことが可能となります。 | |||
以下のファイルが開かれている: | AC34D/NC77Q/95DCS | ||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
在庫情報 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
所有者 | 総量 | コメント | |
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 | 210機 | 需要に応じて供給者から入手可能。 | |
財団 | 8機 | 偽の顧客として送り込まれた財団エージェントが1機購入。その後、ノースカロライナの倉庫にて7機が盗まれる。2015年7月15日現在、いずれも財団サイト-42にて使用もしくは保管されている可能性が高い。 | |
その他顧客 | 394機 | 394人の顧客が1機ずつ購入。 | |
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
メモ01 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
送信者 | エイモス・マーシャル | 受信者 | ブルース・シュールマン・ジュニア |
ノースカロライナにて、数人の財団職員との衝突(この商品とは無関係)が発生。販売チームのメンバーが一時的に拘留されるも、記憶処理を受けて解放。件のマーケティングチームメンバーは、このデバイスを用いる(日付指定と忘れた商品の詳細に関する情報をプログラムした)ことで、財団からのAクラスエアロゾル記憶処理によって失った記憶を取り戻すことに成功した。その後、財団によって押収された商品情報が社内で共有される。やがて30日と経たずして、社内エージェントが商品を奪還した。 この事例から、僕が懸念しているのはただ一点。このデバイスが正しく記憶にアクセスするためには、ある程度まとまったテキスト情報が必要だということだ。使用者が失った記憶に関する情報を、他の人間もまた持っていなかった場合、記憶を取り戻すことはできない。この技術的ハードルはかなり高いけど、同時に注目すべきだと僕は考えてるよ。 |
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マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
インシデントレポート01 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
筆者 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 日付 | 2015年7月15日 |
先月から、この商品の売上高は目に見えて減少しています。もう今月の折り返しを過ぎていますが、状況に変化はありません。考えられる理由といたしましては、ひとえにこの商品が民間の異常研究者パッと見マトモなカスに盗まれたことに気付かず、手を打っていなかったから、ということになります。件のカスリケジョは、私に研究室の画像や動画、執筆した論文などを提示していました。信用に足る人物だと思った矢先にこれです。その後、ウチのセキュリティ担当から報告が届きました。どうやら、あのカスはノースカロライナのサイト-42に在籍する財団の研究者の可能性が高いとのことです。セキュリティ担当がウチのオフィスのセキュリティフィードと財団職員データベースを相互参照し、顔認識システムを動員することで、この事実に漕ぎ着けた形となります。失われたのはたかだかデバイス1機ですので、わざわざこちらから財団サイトに仕掛けることはありません。失ってから1ヶ月経っている以上、もう財団はデバイスの分解や分析は終えているでしょうしね。どうあれ、財団がこのデバイスをリバースエンジニアリングするのは時間の問題です。何を企んでいるにしても、間違いなくこちらの脅威となるでしょうね。 | |||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
売却記録 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
記録範囲: | 2014年1月から2018年4月 | ||
月 | 売却数 | コメント | |
2014年1月 | 23機 | 初期販売分。うち6個は独占予約によるもの。 | |
2014年2月 | 12機 | ターゲット層の間で人気が出たものの、売上は減少傾向。 | |
2014年3月 | 13機 | 数ヶ月間、同様の状態を維持。 | |
Q2 2014 | 31機 | グラフを簡潔にするにあたり、四半期ごとの売上記録に切り替え。 | |
Q3 2014 | 36機 | ||
Q4 2014 | 38機 | ||
Q1 2015 | 39機 | マーケティングチームのミスにより、2015年の販促カタログにおいてこの商品についての説明が欠落していた。 | |
Q2 2015 | 28機 | 著しく需要が減少。当初はマーケティングチームのミスだと推測されていた。半年ごとの売上記録に切り替え。 | |
Q3 2015 | 25機 | ||
Q4 2015 | 33機 | ||
Q1 2016 | 25機 | ||
Q2 2016 | 17機 | ||
Q3 2016 | 19機 | ||
Q4 2016 | 14機 | ||
Q1 2017 | 9機 | ||
Q2 2017 | 9機 | ||
Q3 2017 | 10機 | ||
Q4 2017 | 4機 | ||
Q1 2018 | 6機 | マーケティングチームのミスにより、2016年および2017年の販売カタログにおいてもこの商品についての説明が欠落し続けていた。マーケティングチームの経験不足が要因だと判断。2018年にマーケティングチームを再編した。 | |
2018年4月 | 3機 | ||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
社内メッセージ: | |||
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ブルース・シュールマン・ジュニア/エイモス・マーシャル | |||
開始・終了時刻: | 2018年03月23日, 12:56 〜 13:05 | ||
時刻 | ユーザー | メッセージ | |
12:56 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 繋がっていますか? | |
12:56 | エイモス・マーシャル | 問題ないよ。 | |
12:56 | ブルース・シュールマン・ジュニア | トラブル発生です。 | |
12:56 | エイモス・マーシャル | 何があったんだい? | |
12:56 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 超広範囲の記憶異常が発生。状況は悪化の一途を辿っています | |
12:56 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 正常性維持機関が対処中ではありますが、これは商機だと考えております。すぐに大規模なマーケティングを展開しましょう。善は急げ、ですよ。 | |
12:57 | エイモス・マーシャル | 記憶異常による悪影響はやはり懸念事項だと僕は思う。財団が対応に追われているということは、やっぱりそういうことなんじゃないかな? | |
12:57 | エイモス・マーシャル | 少し考え直して欲しい。 | |
12:57 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 超常社会全体で、一刻も早い事態の収拾が望まれています。報告書によると、記憶異常の発生頻度は当初と比べて85%近く高くなっている上に、指数関数的に上昇しています。 | |
12:58 | エイモス・マーシャル | 売り上げを伸ばしたい気持ちは分かるけど、世間が自ずと異常に気付くまで待って欲しい | |
12:58 | エイモス・マーシャル | そこからでも遅くないはずだよ | |
12:58 | エイモス・マーシャル | このデバイスにどれだけの時間と労力をかけたかも、僕には分かる。けど、真に需要が増えるのはもう少しだけ後なんだよ。頼むからもう少し待って欲しいんだ | |
12:58 | エイモス・マーシャル | この記憶異常の発生頻度が臨界点にまで達すれば、今度は僕らのターンだよ。ネット上が記憶異常の話題で持ちきりになったら、総出で追い込みをかける。 | |
12:59 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 了解しました。となれば、財団よりも先んじて行動しなくてはなりませんね。 | |
12:59 | エイモス・マーシャル | 財団に「このデバイスを売ってくれ」と頭を下げさせればこちらのもの、ということだね? | |
12:59 | ブルース・シュールマン・ジュニア | おっしゃる通り。嫌でも首を縦に振るでしょうね。 | |
13:00 | エイモス・マーシャル | 財団の科学技術力は、まぁ実際舐めちゃいけない。とはいえ、財団だけでどうにかなるほどの記憶異常じゃないだろうね、これは | |
13:01 | エイモス・マーシャル | 財団がやってるのはあくまで対症療法だ。「記憶を取り戻す」という方面でのアプローチを行っていないからね | |
13:01 | エイモス・マーシャル | 記憶処理剤をばら蒔いて「忘れたことさえも忘れさせる」──誤魔化してるだけさ | |
13:01 | エイモス・マーシャル | 財団の常套手段だよ。 | |
13:01 | ブルース・シュールマン・ジュニア | とはいえ財団にこの商品を購入させたとて、財団が一般人に対してこのデバイスを使用するとは思えません。まずは財団職員に配備し、記憶消去イベントの頻度が更に増えるまで財団は待ちの姿勢を貫くでしょう。やがて全ての人々から記憶が消えた後、財団は自らの望むままに記憶を取り戻させる。財団にとって都合の良い記憶だけ取り戻させて、都合の悪い記憶は忘れられたままにする。......といった可能性もあるかと。 | |
13:02 | エイモス・マーシャル | たしかにその懸念はもっともだね。関係者各位に伝えておくよ。 | |
13:02 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 私の読みが現実になったとすれば、財団はヴェールを自ら破棄するでしょう。わざわざヴェールを維持する理由がありませんからね。財団の思い通りの世界が構築されているわけですし。MC&Dは財団によって強制解体され、いよいよもって私たちの知っている世界は存在しなくなります。 | |
13:02 | エイモス・マーシャル | 停滞こそすれど、それで世界が終わるわけじゃない、か...... | |
13:02 | エイモス・マーシャル | まっぴらだね。とはいえ、この事態は記憶消去イベントの原因究明と、デバイスの需要の急上昇期を利用すれば防げることだ。 | |
13:03 | エイモス・マーシャル | さて、期限はもうすぐだよ。間違いなくね | |
13:03 | エイモス・マーシャル | 残された時間を使って、この記憶消去イベントの原因を調査してくれ。これがMC&Dが現在取れる最善手だと僕は思う | |
13:03 | エイモス・マーシャル | ここ数年売上が低迷していた商品ではあったけど......マーケティングチームには期待しておくとしようかな | |
13:04 | エイモス・マーシャル | さてと、じきに来たるはこのデバイスの正念場。──この世界の全人類に、この商品を売ってやりますとも | |
13:04 | エイモス・マーシャル | 財団への対応については、情報セキュリティ部門に任せることにするよ。 | |
13:04 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 委細、承知いたしました | |
13:04 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 何かお困りのことがあれば、お知らせください。私は情報収集に努めます。 | |
13:05 | エイモス・マーシャル | 了解。報告ありがとう。こちらからも社内の別の人間に伝えておく。会議を開くとするよ。 | |
13:05 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 承知いたしました。 | |
13:05 | ブルース・シュールマン・ジュニア | 接続終了 | |
記録終了 |
状況報告書01-レテ |
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AC34D/NC77Q/95DCS |
私は今、これまでにない規模の記憶消去イベント最高のビジネスチャンスの原因究明・解明のために、この報告書を書いている。財団ではレテ・イベントと呼称されているそれは、ゆっくりと世界中に拡大しつつある。この記憶消去イベントは、集団──都市、群、州ごとに、特定の記憶を忘れさせる現象だ。 現状では消える記憶の内容はランダムだと考えられ、財団はネットの反応を隠すのにますます躍起になっている。非常に身近なモノを認識できず、SNSに狼狽を示す絵文字付きの写真をアップする者が急増している。スキッパーのネット検閲さえも追い付かなくなってきている状況だ。先述したように、この記憶消去イベントは都市、群、州などといったまとまりごとに発生している。まるで地理的な境界線を知っている誰かが、特定の州ないしは都市を標的として行った自動攻撃のように思えてくる。 数週間前のことだ。MC&D東アメリカ支部管轄の、ノースカロライナ沿岸部倉庫が、財団工作員の襲撃を受けた。7機のデバイスおよび出荷予定だった古書(熟読したかった)が被害に遭った。古書にいたっては襲撃の際にぶちまけられたデバイス内の記憶物質により汚染され、使い物にならなくなってしまった。この野蛮人共が......。さて、財団は既にデバイスを密売によって1機所持しているわけだが、なぜより多くのデバイスを求めることになったのか。ろくな意図でないことは明白だ。私はマーシャル氏に、サイト-42にて現在行われているリバースエンジニアリングについての懸念を確かに伝えた。財団が私の技術にタダ乗りし、人類を財団に都合の良い機械に作り替えようとしているのは確実だ。いきなり全人類を作り替えるとまではいかないだろうが、まず手始めとしてDクラスにプロトタイプを使用してテストを行うくらいは平気でやるだろう。その後に、完成版をレテ・イベントによって記憶がなくなった一般人に対して使用する......というのが財団の目論見だと考えられる。 |
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
メモ48 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
送信者 | エイモス・マーシャル | 受信者 | ルーカス・モナコ |
またこの商品がカタログに記載されていないことに気が付いたよ。誰も詳細を知らない商品を、一体どうやって販売するんだい? 最新の状況報告書から察するに、この商品は将来バカ売れ間違いなしなんだよ。なら、然るべき場所カタログに載せてやるのが筋ってやつだ。マーケティングチームは、この状況に関する報告を明日までに済ませること。この商機を逃さないようにね。 | |||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
状況報告書02-レテ |
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AC34D/NC77Q/95DCS |
ドイツの技術書の内容を忘れないように、記憶のバックアップを取っておいた。──先見の明過去の私に感謝したい。結果的にこのデバイスを用いることで記憶消失ボケ防止に繋がった。忘れ去られた記憶から新たな記憶が生えてくるとは、なんとも皮肉な話ではあるが。さて、レテ・イベント初期においては、「眼窩葉部」という言葉が忘れ去られた言葉の一つとして挙げられる。だが、「眼窩葉部」という言葉は記憶消去の当事者に認識されることがなくなっただけで、きちんと存在している。また、人体の免疫系は脳に決して侵入しない。したがって、このデバイスを用いることで、何者にも邪魔されることなく、独立していた記憶物質と記憶物質は再びニューロンという糸で繋がり合う。 さて、ニューロンは非常に多種多様な化合物で構成されている。だが、その中からMC&Dが必要とする物質のみを取り出すなど朝飯前だ。この記憶強化デバイスに加えて、生物由来であるオステオトロニック・キューブを文字通りの記憶ストレージとして用いるなど、方法はいくらでもある。将来、外部の影響を受けない別次元に、絶対安全な倉庫データバンクを構えることも可能だろう。 オステオトロニック・キューブは、完全にMC&Dのドル箱としての地位を確立しつつある。倫理的な問題は今更もう誰も気にしない。 中に人が入っている、というわけでもないのだから。 |
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
メモ49 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
送信者 | ルーカス・モナコ | 受信者 | エイモス・マーシャル |
冗談言っちゃいけねぇぜダンナ。ウチのシステムに「シュールマン-NYプログラム型記憶強化デバイス」とかいう製品の記録はどこにも存在してねぇ。ずーっと前にカタログから消しちまったとかそんなオチだろ?この商品について知ってる人間なんざ1人もいやしねぇよ。ンなことよりもよ、ウィルミントンの倉庫に新製品のためのスペースが欲しいんだが構わねぇか? ブルースのボウズが言うにはな、オステオトロニック・キューブに使う神経細胞の新たなアテができたんだとよ。余剰分の生物資源や電子部品を分解してキューブなり何なりにリサイクルすりゃいいだろってさ。 | |||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
メモ50 | |||
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AC34D/NC77Q/95DCS | |||
送信者 | エイモス・マーシャル | 受信者 | ルーカス・モナコ |
了解。やっちゃっていいよ。じゃんじゃか稼ごうじゃないか! いよっ大将!見事な仕事ぶり! | |||
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合 |
ページリビジョン: 4, 最終更新: 07 Sep 2025 00:43