企画案2014-512(仮): "パンドーラーの声"
評価: +61

クレジット

タイトル: 企画案2014-512(仮): "パンドーラーの声"
著者: ©Jiraku_Mogana Jiraku_Mogana
作成年: 2020

評価: +61
評価: +61

名前: アルテュール・ベルジュロー

タイトル: パンドーラーの声

必要素材:

  • オルゴール筐体 (銅ベリリウム合金製、10 c×ばつ10 c×ばつ10 cm) 1個
  • 上書き可能なオルゴール機構 1個
  • 深さが4 m以上の泥沼 1個
  • コンピュータ基盤 1枚
  • 建築資材や建築設備のミニチュア 複数
  • 人間のミニチュア 複数
  • 音声の録音および編集機器

要旨: "パンドーラーの声"は蓋が開いた箱状のオルゴールと、周囲を取り囲む底なし沼から構成される。オルゴール筐体の内部にはオルゴール機構の他にコンピュータ基盤と建築に必要な道具のミニチュアなどを入れ、筐体の外には働く人間を並べる。オルゴールからはリヒャルト・シュトラウスの『メタモルフォーゼン』が流れ、聴取したものはこのオルゴールの箱を称賛し始める。人々は箱に群がるが周囲の底なし沼に阻まれるため、到達することなく沈んでいく。オルゴールは、沼に捉われながらも箱に熱狂的な喝采を送る人々の声を録音し、その音声を元の曲に重ねて演奏を続ける。十分な量の人々の音声が収集された後、オルゴールの蓋は閉められ"パンドーラーの声"は完成に至る。

意図: この作品は実験音楽の作成とその作成に至る副次的な人間の滑稽さを楽しむパフォーマンスアートです。『メタモルフォーゼン』という嘆きの音楽は、筐体を褒めそやす希望にあふれた声で次第に埋もれてゆきます。しかしその声を発していたものは泥の中へと沈み徒死します、筐体から救いが与えられることもなく。

パンドーラーの箱に関してはもはや説明はいらないでしょう。人類最初の女性であるパンドーラーが神から与えられた箱を開けてしまうと、中から様々な災い、絶望が飛び出す。驚いたパンドーラーは蓋を閉めてしまい「ἐλπίς」のみが箱の中に残った。この箱の底に残った「ἐλπίς」が「希望」であり、希望は人類の元にまだ残っているというのが一般的な説明です。一説には「ἐλπίς」は「予兆」であるともされ、予兆が箱の中に閉じ込められたため人類は恐るべき未来を知ることができなくなったとされることもあります。

さて、「ἐλπίς」とは本当に希望なのでしょうか?泥沼に沈みながら箱という希望に縋り続ける人々、その姿は幸福に見えるでしょうか?そもそもその箱は本当に希望ですか?きちんと箱から流れる声は聴こえているのでしょうか?

人類は希望が残っていると信じてしまうから、災いに立ち向かわなくてはならなくなったのではないでしょうか?希望が無ければ絶望することもなかったのではないでしょうか?いっそ、最初から絶望と仲良くする方が幸せなのではないでしょうか?

果たして出来上がったオルゴールの音は希望に聴こえるのでしょうか?絶望に聴こえるのでしょうか?




宛先: "アリ"
差出人: "ルリタテハ"
件名: パンドーラーの声について


アリ、君は確か筐体計画に関して協力を拒否していたよな?俺と違って。だから君は筐体に興味がないと思っていた。それゆえ発見された君の作品"パンドーラーの声"とその企画案を財団のやつに聞かされたときは驚いたぜ。

企画案では触れていなかったが、ありゃどう考えても筐体計画に対する皮肉だろ?協力要請の時は詳細を聞かされてなかったくせに、ちゃっかり内容を把握しやがって。

まあそれはいい。問題は発見された場所だ。鉄錆の果実教団とかいう小物のカルト集団の拠点だった。財団のエージェントが発見したときはオルゴールの蓋は閉じていて、教団員は全員底なし沼の中でオシャカサマになっていた。

エージェントが調べてわかったことなんだがな......。鉄錆の奴らはなんでも神格存在召喚儀式の真っ最中だったそうだ。終末に絶望し救済を求めてそんなことを行ったらしい。もっともオカ連の奴らの軽い分析じゃ、召喚できたとして救済なんてことはなく、ただ辺りを破壊しつくす厄介なアホしか出てこなかったみたいだが。ただまぁ、厄介なことは確かで、もし教団員が全滅せず儀式が成功してたら俺たちの計画が妨害されていた可能性もあったらしい。

つまり、だ。お前の作品は俺たちを助けたんだ。

よくわかんねぇんだよ。作品の内容は俺たちがやってることを批判しているのに、作品というかお前は俺たちに与する行動をしている。お前はいったいどういう立場なんだ?「絶望と仲良く」などと書いていたが、ほんとはお前こそ絶望を打ち破る希望が現れるのを冀っているんじゃないのか?

宛先: "ルリタテハ"
差出人: "アリ"
件名: Re:パンドーラーの声について


僕はとっくに諦めているよ。その計画も、この世界も。あと3週間で世界が滅ぶらしいけど正直ピンと来てないしね。だから僕はどちらの味方でもない。気が向いたら手を差し伸べるし、後ろから脳天に銃弾を撃ち込むこともする。鉄錆だったっけ?その拠点に試作品を置いたのは、ちょっと奴らがノイジーだった。ただそれだけのことさ。助けるだとか買い被られちゃ困るぜ。


P.S. まだ君たちはやることがあるんだろう?諦めるのは愚者にまかせておけ。

Sommes-Nous Devenus Magnifiques?

ページリビジョン: 7, 最終更新: 08 Jun 2022 12:37
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