SCP財団

(訳注:Veraltaは著者Sinagsikap Sinagsikap 氏のSCP-7015投稿時点でのWikidotユーザーネーム。)

事の始まりは数か月前で、『高い城の男』や『The Anglo-American Nazi War』といった作品に影響を受け、別の歴史についての記事を書こうと思い立った。そこでとあることに気が付く。ナチスと日本が勝利した作品や、逆に史実よりも酷く叩き潰されたような作品は多い(例えば『Decisive Darkness』やAANWはそうだ)。しかし、中国が枢軸国に加盟し、日本が連合国に加盟するというシナリオへの探求は、不思議にも欠けていた。軍事協定や多額の資金援助、そしてドイツが中国を高く評価していた事実など、中国がドイツと共に枢軸国に入っていたかもしれないチャンスが存在した、という多くの証拠があるのにも関わらずだ。

ところで、もしこの設定のためにした調査が知りたいのであれば、SCP-6815の著者コメントを見てほしい。APAスタイルの参考文献で、一切合切を載せたつもりだ。

いずれにせよ、ここで疑問が出てくる。大日本帝国が現代まで存続したとして、ファシストで保守的な民族主義国家という特徴を引きずっておきながら、なおかつ近隣諸国とはそれなりに支持されているとしたら、一体世界はどうなってしまうのだろうか?

Ecronak Ecronak と話し合った結果として、複数の財団支部を同時に怒らせるような真似をすることを少し心配はしてくれたものの、SCP-6815というお試しの記事を作ることにした。SCP-6815は多くの韓国人、日本人、そして中国人をそれから多くの国のオタク(otaku)たちが参加するSCP Wikiが、ジェノサイド的な設定に好意的な反応を示してくれるかどうかを確認するための試みだったのだ。とても暗く悲観的なオチだった割には、6815の感触は良く、そこでこう思ったのだ:

アニメと洒落込みますかね。

まあ俺の楽観主義の為せる業と言ったところだろうか。

じゃあ何でアニメなん?という話だが、『高い城の男』のような別世界線モノのシリーズや作品に登場する日帝についての議論を見ると、「日本はまだアニメ/漫画を作っているのか?」という疑問が主な関心の一つだった。良い例が見たければ、日本にフォーカスした別の歴史の動画をYouTubeで漁ってみるといいだろう。

俺の答え、少なくとも7000コンに向けての答えは、NOだ。なぜか?まず、戦前日本は検閲と情報統制が非常に厳しかった。憲兵隊......特高警察(小説家たちを殺した)......等々。2つ目に、アメリカの占領下に置かれることのなかった日本には、西洋のカートゥーン、特にディズニーの影響を受けなかったであろうし、日本が孤立主義に走れば輪をかけてそうであったであろう。大日本帝国は元々、西洋が好きではなかったのだ。

3つ目に、実写のショーや特撮と違い、アニメは、声、超熱心なアニメーター、それから優れた脚本さえあればよい。だからこそ、声優は顔を出さなくても済むのだ。さらに言えば、漫画は声すら必要なく、時間と情熱を持った多くのアーティストによって制作されうる。革命家の手にかかれば(国家にとって)危険な素材にもなりうるし、実際にこのSCPではそれが起こったのだ。従って、日本はこれらを禁止するにあたった。

それこそが彼らの完全なる弱点となる。自らが長い間見捨てたものによって打倒される可能性があるというのだ。

この世界の歴史では、日本はかなり退屈な国だ。孤立主義を貫くということは、メディアは世界に目を向けないということだからだ。さらに、アーティストや作家を(現実における中国のように)極端な検閲で縛り上げれば、文学や芸術のシーンが盛り上がるわけもない。一方、朝鮮や中国も、大量虐殺され、日本と同化しつつあるので、同じく退屈な運命を歩むことになる。

『高い城の漫画家』のもう一つのギミックはここにある。アニメを否定する世界の中で、非常にアニメ的な作品であろうとする試みである。また、非常にアニメ的でありながら逆に反日(反日帝)的な記事でもあるという皮肉も込めて書いた。

いずれにせよ、以上がこの設定を作るにあたっての舞台裏である。楽しんでくれたら幸いだ。

ホセ・リサールはこの作品をどう見るだろう?特に彼は日本滞在中、日本人の女の子を心から愛していたのだから。

とにかく、話をしよう。二年ほど前、高1(Grade 10)の授業で『El Filibusterismo』(直訳すると"国家転覆")を読んだんだ。その前日譚であるところの『Noli Me Tangere』と違って、皆El Filibusterismoに熱中したんだ。NoliとFiliの簡単な要約はこうだ。

『Noli Me Tangere』では、ヨーロッパで大学を卒業した若く理想主義的な教師・イバラが、祖国フィリピンへと戻ってくる。しかし、植民地総督と司祭たちの恨みを買い、彼は全てを失ったのだ――愛した人(修道院へ送られた)、学校を創る計画、家族の名誉、親友、財産のほぼ全て、そして周りのフィリピン人からの信頼を。彼に残されたのは家族の森に埋めていた金のみで、それを元手に復習と愛する人を取り戻すことを誓いキューバへと向かう。彼はシムンと名を変える。

キューバで彼は友人を操り、強大で強欲な植民地総督へと仕立て上げ、フィリピンへと送り込む。彼の計画はこうだ。プロパガンダと、植民地総督を非常に間違った方向へそそのかすことで、民衆の不満を募らせ、革命を引き起こす。彼は革命家、幻滅した学生、そして虐げられた農民と接触する。その一方で、彼は多くの植民地当局や司祭たちと親交を深め、非常に深い裏工作のために彼らの信頼を得られるようにする。

ランタンはここで登場する。7000コンのためにEl Filiを再読していたのだが、俺自身、SCP-6815(朝鮮のものだが、これにもランタンが登場する)とかなりの偶然の一致をしていることに驚いた。

ランタンはフィリピンの有力者全員が集まる重要なパーティに持ち込まれる(祭作戦と類似しているのが分かるだろう)。ランタンにはニトログリセリンが仕込まれ、芯が完全になくなれば爆発する。実際にパーティに持ち込まれるのだが......

とあるナイスガイ(こいつの名前は出すべきでないほど憎らしい)が全てを台無しにしたのだ。パーティはその男の元カノ(浮気した)の結婚式だった。とにかく、奴はランタンを盗み、川に飛び込み、ランプをそこで爆発させ、全てを無かったことにした。さらに侮辱的なことに、奴は何にも苦しまず、のうのうと生きている。一方、シムンは逮捕しようとする警察に追われ、革命は明確な合図を欠き露と消えた。読んでいて本当に遣る瀬無い気持ちになった。

かくして、リサールのフィリピンは一人のカスのせいで次世紀まで絶望に叩き込まれたのだ。

El Filiの中でのランタンを爆発させるという使い方を非常に気に入った。7000コンで爆発させちゃいけない理由なんか無いだろう?実際に革命を起こすような、な。

そこで、俺の考えたすべてのアニメ的解釈と、『El Filibusterismo』のストーリー展開とを組み合わせたのだ。この作品はEl Filiのアニメ・東アジア版と思ってもらってよい。自国の文学の知識(これは西側では本当に漠然としていて、ほぼ誰も気にしないだろう)、韓国(朝鮮)人や中国人の革命精神への共感、それからアニメへの深い愛情を組み合わせた結果として、非常に個人的なSCPとなった。

そういえば、ソヴリン任務のCODEの意味を書いておく。全てはプロジェクト・グーテンベルグ版の『El Filibustersimo』から引用されている:

Mamayang gabi’y magkakaroon ng pista...

"夜更けに、宴が始まる。"

Ang lampara ay magbibigay ng isang maningning na ilaw.

"ランタンは鮮やかに輝くだろう。"

Papalundagin mo ba ang ilaw sa ilog?

"光を川に沈めてしまうつもりか?"

Kapag tinangkang itaas ang lambal ay puputok ang isang kapsula...

"誰かが灯心を掻き出そうとすれば、容器は弾け飛ぶ。"

Sa ikasiyam ay nakaputok na marahil ang makina at ang tunog ay nadinig.

"午後九時、ランタンは爆ぜ、その音が響き渡るだろう。"

Pagkadinig ng putok, ang mga mahihirap, ang mga sinisiil, ang mga naglalagalag na inuusig ng kapangyarihan, ay magsisilabasan na may sandata.

"爆発音が響き渡れば、貧しき人々、虐げられた人々、それから放浪の人々、権力者に虐げられてきた者達が武器を持ち立ち上がるであろう。"

Ano ang mapapawi?

"何を失うか?"

一方、経過ログのCODEはホセ・リサールの最期の言葉だ。"Consummatum est"は"全ては成された"という意味である。

さらなるトリビア――"Mene thecel pares"はシムンがパーティに遺したメモに書いてあった言葉であり、主に死ぬ前に総督府へ大胆不敵なキメ台詞を言うのが目的であった。

とにかく、フィリピンについての文学と文化の授業を楽しんでくれたなら幸いだ。それがいかに7000コン記事に反映されてるかも注目してね!^^

1. 何よりもまず、共著のthd-glasses thd-glasses へ。マンガ画像や構文訂正だけでなく、彼は俺のSCPを辛抱強く推敲してくれた。特に韓国(朝鮮)の文化について、歴史的、神話的、文化的なミスを事細かに指摘してくれた。彼は記事のプロットの根幹からは外さずに、かつスラスラと読めるものにしてくれたキーパーソンでもあった。SCP-KO Discordにも繋いでくれ、マンガ・アニメのイラストを描いてくれる人を探すのにも役立った(実際は、彼自身が描いてくれたのだが)。
2. Dr Lerche Dr Lerche 。このSCPを書き始めた2ヶ月ほど前、未完成な初期原稿を支えてくれた。
3. Ecronak Ecronak 。同時に3つの財団支部から磔にされかねないとしても、度胸を持ってこのSCPを追求するよう勧めてくれる会話相手でいてくれた。また、俺がアニメに突っ走ろうとし過ぎないよう最前線で見守ってくれていた。
4. Arcydziegiel Arcydziegiel とpsychicprogrammer psychicprogrammer の2人は。自分が収容プロトコルと説明をあまりに曖昧な書き方をしてることに気が付かせてくれた。彼らの批評を受けたのち、収容プロトコルと説明を、実際に読者を引き付けられるようなものに改善できた。
5. Ruskied Ruskied 、Esoterica、Marcelles_Raynes、Tyumen Tyumen 、Kothardarastrix Kothardarastrix 、PlaguePJP PlaguePJP 、Nickthebrick1 Nickthebrick1 、SphereFinale SphereFinale 、cdithink cdithink 、basirskipreader basirskipreader 、DrChandra DrChandra 、RadioactiveRADS RadioactiveRADS 、そしてtorcsandantlers torcsandantlers 。構成、ワードチョイス、構文、ストーリー展開について多くの批評をくれた。
6. 最初にイラストを描いてくれるよう交渉したときにはダメだったけど、それでもLOVEMARGINAL LOVEMARGINAL はこの作品のためにとても素敵なイラスト(ポスターにした)を提供してくれた。

ファイルページ: philogo

ファイル名: philogo.png
タイトル: philogo
著作権者: Veralta
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 2022

ファイルページ: animebanner_2

ファイル名: animebanner.png
タイトル: animebanner_2
著作権者: Sinagsikap
ソース: https://scp-wiki.wdfiles.com/local--files/scp-7015/animebanner.png
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 不明

ファイルページ: poster

ファイル名: poster.jpg
タイトル: poster
著作権者: 不明
ソース: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Poster_saving_for_nation_nippon_01.jpg
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
公開年: 1945以前

ファイルページ: nuclearbomb_2

ファイル名: nuclearbomb.png
タイトル: nuclearbomb.png
著作権者: National Nuclear Security Administration / Nevada Site Office
ソース: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NNSA-NSO-1083.jpg
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
公開年: 1958

ファイルページ: dreaming.png

ファイル名: dreaming.png
タイトル: dreaming.png
著作権者: Joe Le Merou
ソース: https://www.flickr.com/photos/lemerou/23261712239/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2015

ファイルページ: haetae.png

ファイル名: haetae.png
タイトル: haetae.png
著作権者: Carty239
ソース: https://en.wikipedia.org/wiki/File:Haetaea.jpg
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
公開年: 不明

ファイルページ: manga.jpg

ファイル名: IMG_0640.jpg
タイトル: manga.jpg
著作権者: 不明
ソース: https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Anonyme_-_Le_Docteur_endormi.jpg
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
公開年: 1912-1926

ファイルページ: manchuria.png

ファイル名: IMG_0641.jpg
タイトル: manchuria.png
著作権者: South Manchuria Railway Company
ソース: https://blogs.loc.gov/maps/2021/06/manchoukuo-come-for-the-prosperity-stay-for-the-harmony/
ライセンス: パブリックドメイン/CC0
公開年: 1928

ファイルページ: dragonball.png

ファイル名: IMG_0642.jpg
タイトル: dragonball.png
著作権者: thd-glasses
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 2022

ファイルページ: dragon.png

ファイル名: IMG_0643.jpg
タイトル: dragon.png
著作権者: Marion Doss
ソース: https://www.flickr.com/photos/ooocha/2847698370/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2008

ファイルページ: peachblossom.png

ファイル名: IMG_0644.png
タイトル: peachblossom.png
著作権者: thd-glasses
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 2022

ファイルページ: utopia.png

ファイル名: IMG_0645.jpg
タイトル: utopia.png
著作権者: Giuseppe Milo
ソース:
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2018

ファイルページ: esprit.png

ファイル名: IMG_0646.jpg
タイトル: esprit.png
著作権者: the-glasses
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 2022

ファイルページ: entrance.png

ファイル名: IMG_0647.jpg
タイトル: entrance.png
著作権者: Herry Lawford
ソース: https://www.flickr.com/photos/herry/407800140/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2007

ファイルページ: wenchanganime.png

ファイル名: IMG_0648.jpg
タイトル: wenchanganime.png
著作権者: thd-glasses
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 2022

ファイルページ: wenchang.png

ファイル名: wenchang.png
タイトル: wenchang.png
著作権者: Catherine Poh Huay Tan
ソース: https://www.flickr.com/photos/68166820@N08/43879413680/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2018

ファイルページ: preparations.png

ファイル名: IMG_0650.jpg
タイトル: preparations.png
著作権者: H Matthew Howarth
ソース: https://www.flickr.com/photos/flatworldsedge/6512208491/
ライセンス: CC BY-SA 2.0
公開年: 2011

ファイルページ: japanesefoundation.png

ファイル名: japanesefoundation.png
タイトル: japanesefoundation.png
著作権者: thd-glasses
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
公開年: 2022

ファイルページ: celebration.png

ファイル名: celebration.png
タイトル: celebration.png
著作権者: Klim Levene
ソース: https://www.flickr.com/photos/99092496@N00/23517540915/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2015

ファイルページ: explosion.png

ファイル名: explosion.png
タイトル: explosion.png
著作権者: katesheets
ソース: https://www.flickr.com/photos/katesheets/2539048325/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2008

ファイルページ: ph.png

ファイル名: ph.png
タイトル: ph.png
著作権者: Jmar G
ソース: https://www.flickr.com/photos/114130416@N07/48966159472/
ライセンス: CC BY 2.0
公開年: 2019

ファイルページ: meeting_alt

ファイル名: Bukchon_Hanok_Village_20150119_04_(16136482787).jpg
タイトル: Bukchon Hanok Village
著作権者: Republic of Korea
ソース: https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Bukchon_Hanok_Village#/media/File:Bukchon_Hanok_Village_20150119_04_(16136482787).jpg
ライセンス: CC BY-SA 2.0
公開年: 2021

補足:
元記事画像のライセンス未記載のため画像差し替え中