出典: SCP-6287
著者: Dr Leonerd Dr Leonerd
作成日(EN): 2022年06月01日
備考: Rev.2(2022年06月01日)まで反映。
著者についてですが,Dr Leonard Dr Leonard 氏ではなく恐らくDr Leonerd Dr Leonerd 氏かと思われます.
追記: ただの感想ですが、短い記事の完成形の1つだなと感じました。"声泥棒"然り、"初めから存在しなかったもの"然り、氏の作品には独特な読後感があっていつも驚かされます。
書かれていることが全てでしょうし、隠された要素を探すような記事じゃないと思います。謎が解けるような記事が好きなら面白くないかもしれませんけど、そういうタイプじゃない短い記事の手本の様な作品だったと思います。短い記事書くときのリファレンスにしたいくらいです。
オブジェクトのビジュアルや構成、余韻が優れているといった感じでしょうか。自分には他で見かける所謂「情報不足な記事」と何が違うのか分かりませんでした。
面白さを理解したくても何が評価されているのか分からず、もどかしいです。
まず話の流れが優れていますね。短い中で綺麗に起承転が描けているので、好印象です。オブジェクトを街としたのも良かったです。小さくなった街の人たちの困惑も想像にかたくないし、突然踏み潰されて死者多数になるのも、それを意図せずやってしまったエージェントの苦しみも理解できるので良いです。これが人のいない森とかだったらここまで繋がりません。そして余韻というか、終わり方も良かったと思います。懲戒処分を出さず休暇としたのも、財団としても「この事案はさすがに仕方なかった」と判断したのだろうと感られるので、最低限の情報でその辺まで想像出来る内容になっています。
情報不足だと感じるのは、"なぜ街が縮小したのか"しかないように考えているのですが、それが解明されても記事の構造とも街を踏みつぶしてしまったエージェントという面白さの主軸にも絡まないし、書いてないことで理不尽な現象系の記事にも取れるので、現状がベストだと思います。逆に何が情報として足りてないんでしょう。
この記事の秀でているポイントは構造の簡潔さとコスト対効果の比率です。
「街が消えていた → 本当は縮小しているだけだった」という大枠を構成しつつ、さらに二つの伏線(破砕音は何? 狂乱したのはなぜ?)を張って、それらを一気にオチで回収しています。
登場人物の感情表現を極力抑え、さらに感情を伏線で再解釈の対象にしているため、読者が登場人物の感情を理解する過程が生じ、小さな共感を生みやすくなっています。
結びはありきたりですが、読後感の調整の役割を担っています。
異常性のオリジナリティは不足していますが、以上の工夫を高密度に繰り出しているので、読者が読解にかけるコストと得られる面白さのバランスが釣り合っています(実際面白さにあまり貢献しない"守備"の文章が特収プと更新一文目しかないのは驚異的です)。簡潔な記述もわざとらしさを削ぐことにつながっています。
一方で長めの文章を読む読み方が強い読者(文ベースより段落ベースの理解が強い読者)に対しては、伏線が働く前にオチが来てしまうので脆弱な構造だと思います。設定の緻密さ・理解していく過程の面白さ重視の読者についても同様ですね。間口は広いものの人を選ぶ記事であることは間違いないので、面白くないと思う層がいて何らおかしくないと思います。
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私はこの手の記事が大好物なのでUVしました。
あまり評価を得られていない、本記事と類似する短い記事に於いて、「報告書が異常性の説明に終始している」と評されることがあります。その上で、本記事はオブジェクトの異常性とオチが渾然一体となっており、その後のエージェントへの休暇の適用とカウンセラーの紹介で締めることでスムースに1つの物語を完結させることが出来ています。
インタビュー記録等を使わずにエージェントの絶望、生き残った町民の絶望を第三者の視点のみで表現出来ている点も素晴らしく、記事の短さと併せて完成度の高い、誰も救われない物語として良く成立していると感じました。
パットは大きな破砕音と形容されるものを聞いたと報告し、数秒の沈黙を経て狂乱状態に陥りました。
ここに少し違和感を抱きました。いくらエージェントとはいえ、『モノを踏ん付けて数秒で何を行ったかほぼ完全に理解する』とそこまで察しが良いものかと感じて少し気になりました。「踏ん付けた物を念のため帰還後に分析し、その結果を知って狂乱状態。カウンセリングを受ける」と多少順番を前後させても問題ないかなと思います。
しかしそれ込みでも全体的な構成は面白く、良いと感じたのでUVです。
このアイデアをこれ以上に最適化するのは難しそうですね。
UVこそしませんが、こういう記事として十分に完成していると思いました。