0版 - 因習辞典
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クレジット

タイトル: 0版 - 因習辞典
著者: machikawa machikawa
作成年: 2024

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愛(あい) - きっとまだ僕は知らないもの。知らないうちは伝えられないと思い込むもの。

挨拶(あい-さつ) - 僕らが話すようになったきっかけ。僕と君の家まで続く三叉路で一回目を始めた儀式。

青(あお) - 一日に目にする色のなかで、最も痛みを伴う色。

青褪める(あお-ざ・める) - 無意味なこと。死体に近づくための変化。類語: 耳鳴り、立ち竦む、嘔吐。

朝(あさ) - ふと窓の外を見た時に現れる、本当は綺麗だと思わなければいけないもの。

明日(あ-す) - 罪もなく恨まれるもの。

後の祭り(あとのまつり) - 例え手遅れであっても、精一杯歌い踊る勇気。

貴方/貴女(あなた) - 今、できるだけ聡明であることを願われている人。

雨(あめ) - 冷たさにより、見上げることを拒絶する天候。

家(いえ) - 眠る前と、眠る時と、不安を覚えた時と、窓をふと見てしまった時以外、安息を感じている場所。

遺書(い-しょ) - 書きたくないもの。また、美しくとも、醜くとも、もうこれ以上見たくないもの。

痛み(いた・み) - どうでもよいこと。また、どうでもよいのに、常に付き纏ってくる感覚。

意味(いみ) - この辞典に存在しなければいけないもの。まだ手放せない希望。

違和感(いわ-かん) - 君と僕が感じてしまったもの。

因習(いん-しゅう) - とうにこの世界をおかしくしていた呪い。

後ろ(うし・ろ) - 怖かった場所。また、本当は今も怖い場所。

嘘(うそ) - ひとりでに開いた扉を、自分が開けたことにして閉めること。

歌(うた) - (何も起きなかった場合)楽しさを共有するための道具。

自惚れ(うぬ-ぼ・れ) - 君が誤った理由。また、僕が謝った理由。

映画館(えい-が-かん) - 積み重なった彼らのおかげで、もう入れなくなった場所。

液体(えき-たい) - 1.流れてしまうもの。2.気を抜いた時に、自意識が至る状態。

壊死(え-し) - 黒、あるいは紫、あるいは青色、あるいはその他の未知の色に体が書き換わる様。

絵馬(え-ま) - 玄関先に複数個吊るされていた魔除け。意味がなかったものの例え。

円(えん) - 1.世界では価値がなくなった、価値を保証するもの。日本円。2.広がっていく範囲。

嗚咽(お-えつ) - 登下校中にずっと聞こえている、人間が出すことのできる音。

沖合(おき-あい) - まだ沈める猶予のある埋立地。綺麗な墓場。

大人(おとな) - 子供ではないだけの、結局は目を瞑り眠るしかない人。

オリジナル(original) - 自分であるということ。胸を張って唱えるまじない。

終わり(お・わり) - 来ないもの。

怪異(かい-い) - 今最も恨まれている非存在、あるいは存在。この辞典が書かれている理由。

過去(か-こ) - 君たちと、もう消えた流れ星だけがある場所。

過失(か-しつ) - 1.あると失敗して困るもの。2.無いのに失敗すると、とても困るもの。

勝ち(か・ち) - 。

カメラ(camera) - 夢の中で手にしていても、絶対にシャッターを切ってはいけないもの。

体(からだ) - あまり変わらないもの。日ごと重くなるのは気のせいであるはずのもの。

川(かわ) - 流せてしまう場所、釣り上げてしまえる場所。

寛解(かん-かい) - 僕らには未だ前例のないこと。類語:前人未到。

記憶(き-おく) - まだ花火が上がっていた頃が、初めて見た君の浴衣が、まだここにあるということ。

儀式(ぎ-しき) - 太鼓が鳴らなくても、誰も踊っていなくても、本当は始めることができること。

犠牲(ぎ-せい) - 音のしない丘の上で選ばれるもの。小さな祝詞を聴くもの。

絹(きぬ) - 祝詞を聴いているものが見に纏う、綺麗なのに美しさのない衣服の素材。

忌避(き-ひ) - 逃げることを否定すること。狂気を孕む固定観念。

君(きみ) - 最初の友達、初めて好きになった人、両親、最初の犠牲になった人、全ての去っていった人の総称。

狂気(きょう-き) - 無理解を押し付けるべきもの。

禁忌(きん-き) - 心当たりのない罪。正当性のないはずの暴力に、正当性をつけるもの。

杭(くい) - 普通、左足、左肩、左手、右くるぶしに刺し込まれる、鋭利な棒。

釘(くぎ) - 普通、右腕全て、頬、腰骨に打ち込まれる、鋭利な工具。

鎖(くさり) - 普通、左足に打ち込まれた杭に繋がれる、金属製の拘束具。

薬(くすり) - 普通、人を行動不能にするために用いられる、化学物質。

蜘蛛(く-も) - 倉庫などの隅にいることが多い、何かを捉えるためにじっと待つことができる虫。

下衆(げ-す) - 細い糸を通すことに、何も思わない怪物。

煙(けむり) - 美しさがなくても、空に登れることの証左。

鍵盤(けん-ばん) - 一つぐらい鍵が別の用途に使われていても、誰も気にしない演奏器具。

呼吸(こ-きゅう) - 心地よさを感じないのに、やめたくないもの。

子供(こ-ども) - なるべく助けたいと嘘をつかれながら、自我の薄さを利用される生き物。

小部屋(こ-べや) - (大部屋に比べて)監禁が行われやすい環境。

米(こめ) - 潰れた時の姿が、足の指に似ている穀物。

桜(さくら) - 咲く時、散る時、植える時、枯れる時に、人が死ぬ植物。

酒(さけ) - 痛覚を鈍らせる薬品。

攫う(さら-う) - 神にしか許されていないが、人が行っても罰されない行為。

死(し) - よくあることと、自分に言い聞かせるべき現象。

死因(し-いん) - 人間が死んだ時、その原因。主なものに溺死、失血死、窒息死、中毒死、墜落死など。

死者(し-しゃ) - 握った手の温度が、少しずつ冷えていく君。抱きしめることにも、話しかけることにも、埋めることにも、本当は意味のない物体。

死体(し-たい) - ついぞ廃棄物として扱われることになったもの。

睡眠(すい-みん) - 無防備な状態を晒すこと。何をされても良いという意思表示。

双六(すごろく) - 幼い頃は意味もわからずサイコロを触れた遊戯。

素振り(すぶ・り) - 行われる破壊の予備動作。類語: 余震、手遊び。

炭(すみ) - 生きるためと、生かすために主に使われる燃料。

相撲(す-もう) - 塩がないために、禁じられている運動。

世界(せ-かい) - この村。

背筋(せ-すじ) - 22時を過ぎて玄関を通る時に、抑えなければいけない場所。

背骨(せ-ぼね) - よく魚のものが庭に飾られている、ない場合に死ぬもの。

蝉(せみ) - 二年前からいなくなった、必要なはずの騒音。

線香(せん-こう) - 死者の魂を癒すため、墓に火をつけて焚べられるもの。 類語: 供物、へりがった。

底(そこ) - 見てもよい場所。

祖父(そふ) - 馬鹿をして死んだ人。

祖母(そぼ) - 死んだ人。

空(そら) - 見たくない日と、見たい日がある、外で上を見ると高確率で見ることができる所。

滝(たき) - 水の落ちる音が、時々君の泣き声に聞こえるので、行かない方が良い場所。

太刀(た-ち) - 世界に一本だけある、錆のない刃物。

狸(たぬき) - 山を無許可で出歩く人間、あるいは動物。鍋に用いられる。

戯言(たわ-ごと) - 君が言っていた作戦。僕が引き継ぎ呟いた、呪いのない祈り。

血(ち) - 主に左足を抉った時などに流れる液体。

父(ちち) - 自分が逃げ出した場合、責任を取らされるであろう人。

地下(ちか) - 逃げ出す時に想定される道。

窒息死(ちっそくし) - 逃げ出すのに失敗した時に想定される死因。

土(つち) - 逃げ出した場合に想定される、主な食物。

手(て) - 夜の冷たさに感覚がなくなるたび、君の冷たくなるそれを思い出すもの。

伝承(でん-しょう) - 伝えられ続けているが、伝えてはいけないもの。

戸(と) - 急いで閉めた入り口、あるいは出口。

逃避行(とうひこう) - 今。

帳(とばり) - 今や世界でも使う家の少ない、隔てるための布。 例文: 「逃げるなら、夜の帳が下りる時だ」と、君が言っていたのを思い出す。

止まれ(と・まれ) - 自明の言葉。

夏(なつ) - 苦しみだけを始めた季節。

[中略]

柱(はしら) - 縛り付けられる場合の第一候補。

破損(はそん) - 杭、釘、鎖にないもの。

話(はなし) - 怪異の伝染元。

母(はは) - 次に責任を取らさせるだろう人。

破魔矢(はまや) - 効力がないことを誰もが知っているのに、捨てられないで飾ってあるもの。

腹(はら) - 次に杭が打ち込まれる場所。

春(はる) - 迎えられないだろう季節。

反抗(はん-こう) -

光(ひかり) - 火薬が炸裂する時に、最初に届くもの。

非行(ひ-こう) - 決まりへの抵抗。間違いをもって間違いを正す意思。

備蓄(び-ちく) - すでにないもの。

秘密(ひ-みつ) - 暴かれた時、火の手に倒れた老若男女が、一斉に立ち上がるもの。

不可思議(ふかしぎ) - 理屈の通じないもの。今さら気にするべきでない出来事。

札(ふだ) - 当然破られているもの。

冬(ふゆ) - どうにか迎えたい季節。

塀(へい) - 一時的にやり過ごすための、小さな安全。

下手の考え休むに似たり(へたのかんがえやすむににたり) - とにかく走るべきであるということ。

放棄(ほう-き) - 君達と、君達の墓を、一度諦めること。

星(ほし) - まだ見えているのだから、行かなくてはいけないという勇気。

墓地(ぼち) -駆け抜けた場所。

松(まつ) - 横切ったもの。

道(みち) - すでにないもの。

村(むら) - 出ることができないと思っていた場所。

迷走(めい-そう) - 何も知らなくても、とにかく走ること。

物語(ものがたり) - 怪異の生まれる所。因習の始まり。

破る(やぶ・る) - 始まり。

勇気(ゆう-き) - 振り絞っているもの。

夜(よる) - 戦うことを決めた時間帯。

理屈(り-くつ) - なくても、きっと戦えるもの。

ルール(rule) - 君が破ったもの。僕も破りたいもの。

0版 - 因習辞典(れいはん・いんしゅうじてん) - 選んだ、戦いの方法。物語を通さず、因習を続けず、意味だけを伝えるやりかた。

[後略]

ページリビジョン: 9, 最終更新: 20 Oct 2024 15:33
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