異常を見つけられないあなたのために教える効率よく異常を見つけるコツ講座 - 因習村編
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タイトル: 異常を見つけられないあなたのために教える効率よく異常を見つけるコツ講座 - 因習村編
著者: SealBaby-V SealBaby-V
作成年: 2024

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さて、ここに集められた人たちにはある共通点があります。ある程度察している人はいると思いますが、皆さんは異常発見部門の中でも特に業績が低い人たちです。ここにあなたたち12人がこの1年間で発見した異常の合計数があります。

5個です。1年間で12人いてたったの5個、しかも2個以上見つけている人がいないというのはあまりよろしくないということはわかると思います。なので今回は異常を見つけられないあなたのために教える効率よく異常を見つけるコツ講座を開きあなたたちを参加させました。これを機にあなたたちもコツを掴み、異常を発見できるようにがんばりましょう。

さて、紹介が遅れましたが、私は濱内はまうち分析官です。よろしくお願いします。


異常発見事例

異常発見部門




ではまず初めに手元の資料を見てください。あなたたちには実際に今までどういうものが発見されてきたのか例を見てもらいます。今回は因習村いんしゅうむらに絞って見てみましょう。異常発見部門のフィールドエージェントなら特に関わりのあるものですので、注意して聞いてください。

因習村事例

落降村

担当エージェント: 豹堂ひょうどう 夏目なつめ

調査実行経緯: 落降村には平家の落武者伝説があり、現在も村の中にある洞窟に落武者の霊が彷徨っているという噂がありました。近年村おこしのため洞窟を観光地にしようとする動きがある一方その動きに反対する村人もおり、村は険悪な雰囲気になっていました。観光地化に賛成している村人が定期的に失踪していることが報告されており、村内では落武者の祟りが要因であるとされています。落武者および祟りの存在の確認をするため調査を実行しました。

異常:

報告: 落武者やその祟りは存在せず、連続失踪事件の犯人は観光地化反対派の一人であることがわかりました。村自体には異常性はなかったものの犯人は液体を切ることができる異常性を持った刀を用いて犯行を行っていました。その刀は人間に対し使用すると切断面から血・臓物などが飛び出なくなり、死体を隠す際に体を切断し小さくまとめることが可能であったという証言が犯人から取れました。現在は収容部門が刀を回収し、カバーストーリー流布の後犯人は逮捕されました。殺人事件が起きたことにより観光地計画が頓挫し、村人間の断裂が深まり再び異常事案が発生しないか継続的な観測が必要であると考えます。



さて、これはエージェント・豹堂が作成した報告書からの抜粋ですね。ではまずこの報告書ではどういったところから落降村に異常があると判断したのか、ではあなた答えてみてください。

正解です。まず1つ、「落武者伝説」ですね。こういった因習的な伝承がある場所には異常が関係している可能性があります。蒐集院や五行結社、IJAMEAなどといった団体に関わったことがある人はそういった傾向にあるということを理解しているでしょう。確かにこれは異常だと判断するのに良い要因ではありますが、伝承があるという点だけではあまり強いものではありませんよね。

ならばもっと異常が関連していてそうな要因が無いといけません。では豹堂は他に何を見て調査を実行したか、わかる人はいますか?お、手を挙げた人がいますね。では答えてみてください。……「落武者の祟り」ですか。少し正解に掠ってはいるのですが違います。落武者の祟りから考えるのであれば先ほどの落武者伝説から考えたというのとあまり変わりません。正解は「村人が定期的に失踪している」です。

そもそもとしてですが異常の有無にかかわらず因習のある村というのはたくさんあります。問題はその因習から発生する事象にあります。今回の例で言うと「連続失踪事件」に当たりますね。このような事象があれば異常が関係している可能性が高くなっていきます。あなたたちの報告書を一通り見せてもらいましたがやはり伝承のみからの情報で調査している人が多いので、因習が関連した事象は何かないかなどを探してみてください。


次の事例に行きましょう。

因習村事例

紙櫛村

担当エージェント: 豹堂ひょうどう 夏目なつめ

調査実行経緯: 紙櫛村には化け物が出るという噂がSNS上で出回っており、肝試しなどの目的で村に行っている人が多く見られていましたが、来村して以降連絡が取れず行方不明になっている人がいるという情報があり、化け物の存在を確認するため調査を実行しました。

異常:

報告: 化け物は存在せず、行方不明事件の犯人は紙櫛村に住んでいる村人全員でした。紙櫛村には外部からは秘匿された食人文化があり、村人達は自ら噂を流し外部の人間を呼び込むことが目的だったことが判明しました。村人たちは人の皮などを使って人形を作り、それを化け物と見立て外部の人間に見せることにより、「貴方は呪われた。」「1日は部屋に閉じこもっておかないといけない。」などと言い監禁していました。以降の村人たちの行動は閲覧者の心理的負担を考慮して検閲されています。完全版は異常発見部門データベース No.29183から閲覧できます。



さて、2つ目はあえて異常性がないものを選びました。先ほどのものでは「伝承」「事象」が要因となっていましたが、こちらには当てはまるものはあるでしょうか?わかる人は手を挙げてみてください。

ではどうぞ。……はい。正解です。「化け物がいるという噂」「行方不明事件」ですね。ありがとうございます。しかし少し違うと思いませんか?伝承です。これは少し似ているような気もしますが性質が違います。

伝承は文字の変化や人の価値観の変化などといった時間で、人を介すことで少しずつ変化していきます。今回の事例で言うと化け物がいるという噂は実は村人たちが初めて流したものではないのです。SNS班によると初めの噂は「紙櫛村の村人は化け物だ」というものでした。それらが少しずつ変化して行き「紙櫛村には化け物がいる」というものになりました。

今後調査する際は基本的に伝承を主に主軸において調査してください。もしを主軸とするならばSNS班に情報の調査を依頼するといいでしょう。ネットリテラシーのような話になってしまいますが、その情報は本当に正しいのかというところを確認しましょう。


さて、3つ目の事例を見てみましょうか。

因習村事例

未練二亜無村

担当エージェント: 朝霧あさぎり 公貴きみたか

調査実行経緯: 未練二亜無村には因習などは存在せず、村人の数も多く外部コミュニティとの関係もあり栄えているなどの点から異常が存在する傾向に無かったため具体的な調査はされていませんでした。しかし2013年1月24日に定期調査に行ったところ村全体が消失し整備のされていない森林になっていることが発覚しました。期間が開いていたとはいえ村全体が消えていることと跡地に整備された痕跡がないことから異常性が関連している可能性があると判断し調査を実行しました。

異常:

報告: 調査の際、記録用に監視カメラを設置していましたが、報告されていた異常性に囚われ監視カメラの記録を怠っていました。異常存在は見受けられなかったため調査を終わらせ本部への帰還準備中に監視カメラの映像を確認したところ、未練二亜無村内で村人たちが西暦2000年パーティを行っている映像が記録されていました。今後収容部門による処置が取られ適切な収容プロトコルが確立する予定です。



さて、この事例に見覚えがある人は手を挙げてみて下さい。……さすがに多いですね。この事例は現在収容されているSCP-619-JPの発見記録でもあります。10年程前に発見されたオブジェクトですが、時々Euclidオブジェクト対応のオリエンテーションでも例に出されることがありますから聞いたことはあると思います。

本題に戻りますが、この事例ではエージェント・朝霧はどうやって異常があると判断したのか、後ろの方のあなた答えてみて下さい。「村が消えていること」、正解です。この事例はシンプルですね。明らかな違和感があるということは異常が関わっている可能性は一気に高くなります。

この事例はこんなものでしょう。このように一つの要因だけでも異常がある可能性が高いと判断すれば調査する価値はあると思います。そして調査の際は朝霧のように思い込みをし過ぎないように。異常と関わる身であればわかっていると思いますが、彼らは私たちの思い込みによって見つけられないことがよくあります。気をつけてください。

では最後に……と、そこの人、手を挙げてどうしました?「そもそも村の名前に違和感がある」?そういうものですよ。八葉上村というヤハウェと掛けているのかと疑うくらい変な名前の村だってあるんですからね。ははは。


さて、先程名前に違和感があるという指摘がありましたね?再度言いますがもちろん名前だけで決めていいなんてことはありません。ここまでの話にもあったように大事なのは「因習的な伝承」「因習と関わりのある事象」「明らかに違和感のある事象」、このあたりです。言ってしまえば、全て綿密な事前調査の有無によるものなんです。しかし、これまでに一件だけ名前から異常存在が察せられる事例がありました。あくまで特例ですので鵜吞みにしないようにしてください。これです。

因習村事例

五五五五五ツ墓村

担当エージェント: 弥海ひさうみ 弓絃葉ゆづるは

調査実行経緯: 名前以外の情報が様々な媒体・文献に存在しなかったため違和感を持ち、情報自体が異常を持っている可能性があると名前から推測し反ミーム部門に調査を依頼したところ情報は反ミーム的な性質を持っていることが判明したため、調査を実行しました。

異常:

報告: 反ミーム部門から記憶保持剤を服用している職員を同伴させ調査に行ったところ、村の中には「55555人殺しが過去にあったという文献」「村人が集会の時に歌う『すろん とりる(省略)』という歌詞 」「反ミーム性を持った祠に祀られている一つ目のヒトデ」などが確認できた。



……再度言いますが、鵜吞みにしてはいけませんよ?


さて、今回の講座で少しでもあなたたちが異常を発見し、財団に貢献していくことができるよう願っています。今回の記録は編集して共有データベースにアップロードするのでいつでも確認してみてくださいね。それでは次回は異常を見つけられないあなたのために教える効率よく異常を見つけるコツ講座 - アーティファクト編を開く予定ですのでそちらも参加してください。ではお疲れさまでした。また会いましょう。

ページリビジョン: 4, 最終更新: 13 Jan 2024 12:12
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