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明治44年に大学は出たけれど
熟成18年 夏目漱石は、小説のみならす、講演の名手でもあったそうだ。明治44年に明石で開かれた講演会の内容が「道楽と職業」というタイトルで出版されている。 その中で、大卒者の就職難に触れている。当時の大卒者の数たるや、現在とはまるで違うだろうし、社会における職業のあり方も全く異なったはずた。しかし大卒者にとって、就職というものが簡単ではなかった。この点だけは、現代と似た状況であったようだ。 漱石は「最高等の教育の府を出」た若者たちが、「何か糊口の口がないか何か生活の手蔓はないかと朝から晩まで捜して歩いている」。「三ヶ月も四ヶ月もボンヤリして下宿に入ってなすこともなく」しているものや、ひどい場合、「一年以上も下宿に立て籠って」いるものもいる、と嘆いている。 「職業の種類が何百とおりもあるのだから」どこかに決まりそうなものだが、「ちょうど嫁を貰うようなもので」、「いくら秀才でも職業に打付からなければしようがないのでしょう」。もっともな話である。
日本ではどこに行きますか
大徳寺 高桐院の参道 先日、引退を発表した琴欧洲。引退のインタビューで、これまで一番良かったことは、と聞かれて、「日本に来たこと」と答えてくれた。奥様も日本人で、日本が大好きになってくれたんですね。きっと彼は、本当の意味で日本の良さ、日本人の素晴らしさを知ってくれたんだな。 いまは卒業のシーズン。大学では、お子さんの卒業式に参加するために親御さんが来日されることがある。こうしたお客様との会話で、つい僕は「日本ではどこに行きますか? 京都ですか」とか「北海道もいいですよ」などと、決まりきった観光地の名前を並べてみたりする。我ながらワンパターンで能のない会話。もう少し、日本の本当の良さについて紹介する、気の利いた話はできないのかしら。