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まるごとやりなおしたい日

ビスビューの街並 人生がまるごとやり直せたら。それはいつか誰でも考えることだろう。私の場合、思い起こせば恥ずかしきことの数々。できればすべて無かったことにして、やり直してみたいことはたくさんある。 人生まるごととまでは言わず、もしも昨日一日だけでもやり直せたならば。 そうだな。まずあの人に会ったときのあの乱暴な言い方は直そう。お昼に食べたカレーはなしにして、もっとヘルシーな野菜サンドイッチにすべきであろう。夜九時を過ぎての中華はやめたほうがいい。 僕の大好きな、ハロルド・ライミス監督が2月24日に70歳で亡くなってしまった。これまでまだ見ていなかった「恋はデジャ・ヴ」を慌ててDVDで鑑賞しました。我が家におけるささやかなる、特別追悼鑑賞会でありました。 嬉しいことに、監督自らカメオ出演されてました。

一鉢に植えられたパンジー

大雪の翌朝。真っ白な雪の覆いの下で身を寄せ合っていたパンジー。背のびしてるやつ、俯いているやつ、元気なやつ、寝てるやつ。どこか人間のグループと似ている。一緒にいても、結局はひとりひとり、違ったことを考え、違ったことを感じているのだ。 一つの鉢に植えられたパンジーたちは、お互いにお互いのことをどのように感じているのだろうか? もしかすると、沢山の花がみんなで同時に何かを感じている?それぞれが感じていることが、お互いに共有されているのかも。お互いの喜び、お互いの悲しみ、相手の苦しみ、相手の嬉しさ。

アップルの屋上で起こったこと

アップルとフルーツ 1969年の1月30日は、今年と同じで木曜日だった。解散の危機に近づきながらも音楽の創作を続けていたビートルズは、その日ロンドンのサヴィルロウ街にあるアップルビルの屋上で、1月の寒風をついて無告知ライブを敢行した。ホワイト・アルバム以来の諍いもヒートアップし、どうしようもなく進まない[ Let It Be ]のプロジェクトに、終止符を打つべく、最後の手段として提案されたライブだった。 でも凄いものだ。ビートルズの歴史をひもといてみると、メンバーの関係がどうしようもない緊張感に崩れそうになり、レコーディングスタジオは蒸気の噴き出す圧力鍋のようになって、まともなセッションもできなかった状態で、こんなにも凄いアルバムが残された。(☆1)

ドーナツの分け前

ドーナツというものは、小麦に卵や砂糖などをまぜた「ドウ」を油で揚げて「ナッツ」を乗せたものが起源だとか。「ナッツ」が無いときに、仕方なく穴を開けたのが、ドーナツの穴のはじまり。こんな話がいろいろと残っているのだそうだが、真相はわからない。 ただ、こうしてタリーズコーヒーで、300円も払えば、日本でもおいしいドーナツをいただくことができる。嬉しいことである。これでもし、ドーナツの製法についての特許が申請されていて、どこかで「純正ドーナツ製法保存協会」のような団体が、権利料を徴収していたとしたらそうはいかなかったかも。 僕がドーナツをひとつ食べるたびに、50円ほどの「製法使用料」を支払い、その50円は、どこかの権利者のもとへ届けられる。かくしてドーナツは、少しだけ高級な食品となり、特別な日に食べるデザートの仲間入りをする。

エレクトロニクスな時代

このイラストの道は、「ブラック・ライオン・レイン」といって、ロンドンの西部「ハマースミス」といわれる地域にある。以前つとめていた会社の「海外調査」という目的で僕はこの通りに2ヶ月暮らしていた。ちょうど、湾岸戦争が勃発した年のはじめで、世界を覆い始める不穏な空気はあったが、相変わらず日本では空前のバブル好景気。基本的には楽観的な時代だった。 ロンドンの町並みはこの絵のように、どこを見ても石や鉄に囲まれていて、文字通り「固い」印象を受ける。木と紙の文化で育った日本人にしてみると、町にあふれる音の反響の仕方までが違うような気がしたものだ。 それである時、なるほどと気がついた。こういう「硬質」な環境だからこそ、ビートルズの音楽は、あんなにもドライでかっこいいサウンドになったのか。こんなハードな材質に囲まれた街で、ギターを鳴らしたならば、当然あのように質感のはっきりした、明瞭で重みのある音が出来上がるのかと。

1966年のペニー・レイン

1966年の年末。ロンドンで、ポール・マッカートニーは「ペニー・レイン」という名曲に取り組んでいた。「ペニー・レイン」のレコーディング作業は、年末に開始されたのだけど、途中のまま年越しとなった。1966年12月30日の深夜12時過ぎに中断されて、年越しの宿題となった。 新年1月2日の月曜日と4日の水曜日には、ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックが、正月返上で出勤をして、アメリカに送るためのミックスダウンを、作っていのだそうだけどね。 正月明けの6日以降、ペニー・レインの録音作業は3週間近くも続き、多層的で精緻なサウンドが重ねられていった。当時ビートルズは、常識はずれのスタイルで、誰もやったことがない革命的スタジオ・レコーディング技術に挑戦していたのだ。

潜伏するパンジー

このパンジーが植えられたのは、ケヤキが落葉する前だったはず。でも今は、こうして落ち葉のクッションに埋もれるようにして咲いている。水彩画に描くために、一生懸命アイフォンのレンズを向けるのだが、花がみんなうつむいていて、表情がわからない。 目の前にある大きなケヤキの樹のせいで、我が家の狭い庭は茶色い落ち葉で埋まってしまう。おそらくこの落ち葉のつもったところは、冬を越す虫たちの快適な寝床になっていたりするのだろう。パンジーにとっても、寝心地の良い枕のようにも見える。