Siriにお願い


先日の集中豪雨のせいで、家族のアイフォンが水浸しになってしまった。カバンの底に入れたたまだったところに雨水が浸水したのだ。その日は、そのまま乾燥させるだけにして、翌日の朝から、救出作戦をはじめた。

液晶画面にまだらなシミが見えるのだが、幸いなことに電源は入った! この機を逃さぬよう、慎重に作業を進める。まずはiCloudの容量を増やして、WiFiからのバックアップをしつつ、一方でここ2ヶ月ほどの写真データを救出。一時間ほどの作業の結果、ほとんどのデータが無事だった。何と今はLINEのやり取りも復帰可能なのだ。

こういうことがあると、僕たちがいま、本当にものすごい世界に生きているということがわかる。一人一人が、住所録、メール、メモ、日記、写真、音楽、動画など、あらゆるデータを身にまとって暮らしている。しかもそのデータを端末から端末へ自由に移動。この技術はまさに人類の偉業である。ジョブスさんに改めて感謝の意を表したい。

ここからが笑える話。データ救出作業の途中でホームボタンの接触がちょっとおかしくなった。どうやら「押しっぱなし」状態、つまり「Siriさん」がONのままになってしまったようなのだ。そのために、家族で何か話したり物音がするたび「Siriさん」が「なになにを調べます」と言ったり、どこかに勝手に電話をかけたりする。

そのたびに大笑い。いや「Siriさん」には笑わされました。2001年宇宙の旅の「HALさん」を思い出すような、ちょっとSFぽい展開だった。

しかし待てよ。考えてみればだ。「Siriさん」に「Siri、バックアップをしておいてね」と頼めばよかったのか。いやまさかそれは無理? いやいや、それもそのうちに、当たり前にできるようになるのだろう。


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