> 突然の椅子 <
クレジット
タイトル: SCP-396 - > 突然の椅子 <
翻訳責任者: Tetsu1 Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: Felixou Felixou (改稿前原著: Dr Kondraki Dr Kondraki →不明な人物により改稿)
原題: And Suddenly, Chair
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 20
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-396
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フランス、パレゾー工科大学にて試験前に出現したSCP-396(赤)。
特別収容プロトコル: SCP-396にはその移動を追跡するため、位置情報装置が取り付けられています。SCP-396が人を移動させた場合、対象は特定され、記憶処理を施されて元の地点に返還されます。可能な場合は、SCP-396はエリア-93に収容されます。
説明: SCP-396は鋼鉄と赤いプラスチックでできた椅子です。統計的にランダムな間隔(通常4〜12日)で、SCP-396は他の無作為な座席と自身の位置を入れ替えます。SCP-396または交換された座席に座っていた生物も位置を入れ替えます。この瞬間移動のおおよその限界は不明です。
SCP-396は2002年3月15日、エリア-93のC棟試験区域に出現した際に発見されました。説明のつかない出現とその異常現象の単純さから、椅子はAnomalousアイテム記録に追加され、保管庫に収容されました。3日後、SCP-396はチェスターフィールドソファ、及び韓国、釜山の民間人と自身を入れ替えました。被影響者は記憶処理を施されて帰国させられ、SCP-396には適切な指定が割り当てられました。
O5司令部通達
手順HOTSEAT
SCP-396はつい一年前に発見されて以来、計58件も収容違反を起こしている。これは恐ろしい数字だ。更に、我々の取れる収容プロトコルがそれを部屋に置いておいて次の瞬間移動が対処に重大な手間を来さないよう祈ることだけだとすれば、なおのこと憂慮すべきことである。
したがって当該アノマリーを単一の施設に収容することは現実的でないと判断された。予測不可能な性質と不可解な出現のため、手順HOTSEATが制定された。SCP-396の異常が発現するたびに、その位置を直ちに特定し、最寄りの財団施設が可能な限り速やかに収容するよう指示されることとなる。
担当施設は、全ての異常領域部門・部署の援助の下、SCP-396の異常活動の起源として可能性のあるものを理論化し、試験し、ヴェールへの脅威を可能な限り抑制できる新しい適切な収容プロトコルを提案するよう命令される。
次回の移動までに仮説を報告しない場合、上記施設の予算は削減される。この件は是非解決を望む。安易に収容して任務を回避しようとしてはならない。全力を投じてほしい。
SCP-396の直近の移動はポーランド領内で発生したため、次の異常活動まで、サイト-120がアノマリーの収容場所として自動的に選ばれた。交渉の余地はない。
HOTSEAT報告 - サイト-120
提言: この異常は、椅子の素材内部のオブジェクトまたはそこに彫られた魔法陣に直接術を施すことで、奇跡術操作により引き起こされている可能性がある。
申請: 承認。
サイト-120職員による集中的と見做される調査にも拘らず、奇跡術的残留物や魔法陣の痕跡は発見されなかった。更なる試験が行われる前に、収容から11日後に転移した。
結果: 非決定的。
場所: フランス、ブルターニュ、ベル・アベイユクリニック
イベントの説明: SCP-396はアベイユクリニック内の、ジェームズ・マチルの座っていた歯科椅子と自身を入れ替えた。患者は鎮静剤を投与されていたため、担当医にのみ記憶処理が施され、患者の口腔手術はサイト-120内で完了した。マチル氏は後に帰宅させられ、SCP-396の収容はサイト-Kybianに移された。
HOTSEAT報告 - サイト-Kybian
提言: なし。
申請: サイト-Kybianはアノマリーが4日後に再転移するまでに仮説を報告できなかった。職員は、手順HOTSEATによる予算削減のペナルティを知らなかったと述べた。
結果: なし。
場所: カナダ、オンタリオ州、グレイヴンハースト
イベントの説明: SCP-396の異常活動が発生し、グレイヴンハーストの観光名所として使用されていた、高さ6.5 m、幅4.8 mのムスコカ・チェアと交換された。椅子の高さのため、瞬間移動により近傍の部屋と上階の部屋の一部含む収容室全体が破壊された。ムスコカ・チェアは分割されてサイト-Kybianから持ち出され、レプリカが作成されて元の位置に再配置された。SCP-396の収容はサイト-37に移された。
HOTSEAT報告 - サイト-37
提言: この椅子には知覚があると考えています。この施設では大量の命を得た家電を扱っており、これも例外でないと考えます。ここに掲載されたログが物語っています; アノマリーは我々を愚弄しています。昨年記録された転移のうち、その大部分は人や人気の場所を標的としています。喋ったり笑ったりすることはないかもしれませんが、これは我々やその収容を嘲っているのです。
申請: 承認。
SCP-396は自己認識テスト、行動観察、感情的応答の一切に反応しなかった。SCP-396は収容から6日後に転移した。
結果: 非決定的。
場所: イタリア、ヴェニス
イベントの説明: 転移直前、SCP-396の意思疎通能力を試験するためのインタビューが開始されたが結果は出ず、担当研究員はその後、アイテムを収容室に戻すことを忘れていた。別のインタビュー中、フェントン博士は気付かずにアイテムに座っており、突然イタリアの映画セットの、空席の共同監督座席と入れ替わった。フェントンは財団エージェントが到着するまでスタジオスタッフの一人を装っていた。担当研究員は懲戒処分を受け、SCP-396はサイト-ミネルヴァに送られた。
HOTSEAT報告 - サイト-ミネルヴァ
提言: SCP-396の瞬間移動能力とその交換先を選択する方法は、"座る"という概念に付随している。膝を曲げ、座るために設計された表面に腰を下ろし、快適と安定のために姿勢を調整するという動作は、地球上のほとんどの生命体には解剖学的及び精神的に不可能な行為である。この考えは叡智圏ノウアスフィア内で作られた古い概念であり、非常に難解なものである。
このアノマリーは、ある概念がこの現実へと超越してきた直接的な結果であり、それがこの"椅子"と我々の呼ぶ概念物理実体を作ったものと考えられる。我々がこれについて何ができるか確認したい。
申請: 承認。
SCP-396をノウアスフィアレギュレータに接続して叡智圏内に存在するか調査し、ミームスキャンを開始し、神格実体を召喚して別の"座る神"について知っているか訊ねた。SCP-396と"座る"という概念の間に相関は見られなかった。SCP-396は15日後に収容房から出た。
結果: 失敗。
場所: バチカン市国
イベントの説明: 教皇パウロ6世は玉座と共に転移し、混乱した様子でサイト-ミネルヴァに現れた。軽い記憶処理により、教皇はインシデントが宗教的体験であると確信し、インシデントの広範な報道を防ぐため、財団はバチカン市国政府当局と協定を結んだ。SCP-396は後に時間サイト-02に送られた。
HOTSEAT報告 - 時間サイト-02
結果: 失敗
提言: SCP-396は、タイムトラベル、恐らく財団が開始したものの直接的な結果であると考えています。これが出現した日、2002年3月15日は、遠い未来、エリア-93にてタイムトラベル装置によって設定された日付でした。恐らく実際の装置の実験として、例の椅子が我々の時間に送られたものと思われます。
結果、椅子のタイムラインは不安定化しました。椅子の原子構造はこのタイムラインに存在すべきでないので、オリジナルの過去のバージョンを見つけて置き換えることで安定性を得ようとして、その過程で自身に似ている物体と入れ替わっているのです。
申請: 承認。
SCP-396の座席には携帯型時間シンクが取り付けられ、別のタイムラインへの通信を完全に遮断した。SCP-396が転移しなかった記録上最長期間である20日後、時間サイト-02はアゾパルディ博士のSCP-396収容成功を祝福しました。カフェテリアの祝賀スピーチで、彼女が未来の自分を「一度だけ間違えた」と侮辱している最中にSCP-396は再度転移した。オブジェクトの消失は後になって気付かれた。
場所: ブラジル、[編集済]
イベントの説明: SCP-396は不明な石像と自身を置換した。GPSの取り付けられたSCP-396は地下15 m地点で発見された。発掘と収容の後、一帯は考古学遺跡へと変化し、その他の[編集済]文化の遺物や遺構が発見された。全ての発見物とSCP-396はサイト-PT20に送られた。
HOTSEAT報告 - サイト-PT20
提言: えっと、この新たな考古学的発見についてはアノマリーに感謝していますが、うちは収容施設ではありません。私たちの主力とする考古学調査ではこの異常の解決には役立ちそうにないです。ですから、この説は直感でしかありません。このページは恐らくこういうことを書く場でないのはわかってますが、予算削減を避けながらも私に思いつける最善の案です。
SCP-396は全ての財団施設と、その収容の任を負ったスタッフへの挑戦です。このアノマリーは我々の努力を糧にしています。説の信憑性が高いほど、テレポートには時間がかかります。アゾパルディ博士の説を見てください。みんなが遂に上手くいったと思いました。説の信憑性が高い、まさにそれこそが転移にこれほど時間がかかった理由です。この椅子は自分に対する我々の収容と研究を判断し、どれほど上手く仕事をしたかに応じて一定期間後に別のサイトへ旅立ちます。
ノウアスフィアの顕現とか、現実改変操作とか、どこかのGoIの我々への攻撃とか— 超科学的な用語で説明するようなものはさっぱりわかりませんが、これが私の考えです。さて、唯一の問題は、私の説を実際に検証する方法がないことです。思いつく唯一の方法は、それを収容室に一つ放っておくことです— 他に何もせず。冗談ではありません。
もしこれが正しければ、大きな仮定ではありますが、SCP-396は更に長い時間転移を待つはずです。この説は信憑性が高く、真実に近いのですから。もし間違っていれば、まあ、私が頑張ったことはわかるでしょう。
申請: 承認。
SCP-396は収容室に放置され、一切の関与を禁止された。初期収容から3週間が経過してもアノマリーは転移していない。
結果: 保留。