SCP-1840-JP-1
アイテム番号: SCP-1840-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 財団フロント企業が入居している3ヶ所の高層ビルより、それぞれ最低3名の職員によってSCP-1840-JPの発生の有無を目視により確認してください。もしSCP-1840-JP-1が確認された場合、直ちにその半径10km以内の航空機に連絡し、航空規制と称してSCP-1840-JP-1から半径1km以内の飛行を制限してください。
また、職員がSCP-1840-JP-2を視認した場合、クラスC記憶処理を施し、SCP-1840-JP以外のオブジェクトの管理を担当させます。SCP-1840-JP-1の詳細な観測には原則としてDクラス職員を利用します。
説明: SCP-1840-JPは東京都█████地区を半径1km以上離れた位置から観測した際に、実在しない高層ビルが観察される異常現象です。この非実在ビルはSCP-1840-JP-1と定義されます。現在、1ヶ月に約2回の頻度でSCP-1840-JPの発生が確認されています。
発生するSCP-1840-JP-1の出現位置、デザイン、階数はランダムであり、遠方より観測した人物はSCP-1840-JP-1を通常の高層オフィスビルとして認識します。しかし、周囲の高層ビルと█████地区の地図から位置を推定すると、観測されたSCP-1840-JP-1はすべて地理的に存在が不可能な位置から発生しています。
またSCP-1840-JP発生時、特殊光学望遠鏡を用いてSCP-1840-JP-1の内部を観察すると、推定███人のスーツを着用した二十代から五十代までとみられる男女を確認できます。これらの人型実体はSCP-1840-JP-2と定義されます。SCP-1840-JP-2群はSCP-1840-JP-1内部において事務作業を行っていますが、こちらが3分以上観察を行うとSCP-1840-JP-2群は事務作業を中止し、観察者を凝視します。
実体の把握のため、これまでにSCP-1840-JP-1の基部の特定を行う調査を行いましたが、全て失敗しています。
調査記録1840-JP-1 - 201█/03/16
対象: SCP-1840-JP-1調査員: 遠藤研究員、近藤研究員
調査方法: █████地区から1.5km離れた位置より遠藤研究員がSCP-1840-JP-1を確認した後に、近藤研究員に対して携帯電話で連絡を行い、SCP-1840-JP-1が存在すると考えられる周辺を捜索させる。
結果: 遠藤研究員からはSCP-1840-JP-1が確認できているにもかかわらず、近藤研究員はSCP-1840-JP-1の存在を確認できなかった。また近藤研究員の報告の後に、遠藤研究員がSCP-1840-JP-1より一度視線を外したところ、SCP-1840-JP-1が消失した。
調査記録1840-JP-2 - 201█/05/14
対象: SCP-1840-JP-1調査員: 遠藤研究員
調査方法: █████地区から1.2km離れた位置から遠藤研究員がSCP-1840-JP-1を確認した後に、遠藤研究員自身がSCP-1840-JP-1を目視しながらSCP-1840-JP-1の基部まで陸路で接近する。この際に瞬きによるSCP-1840-JP-1の消失を防ぐために、視線と同軸となるカメラをヘルメットに取り付け、遠藤研究員に被せる。
結果: 陸路ではどのような経路を辿ってもSCP-1840-JP-1が他の高層ビルなどの遮蔽物に重なってしまうことが判明した。SCP-1840-JP-1の存在する区域から半径1km以内において、遮蔽物によってSCP-1840-JP-1が完全に隠れたところで、SCP-1840-JP-1が消失することが確認された。また、カメラの映像を確認したところSCP-1840-JP-1から半径1kmに入った時点でノイズが入りSCP-1840-JP-1が消失していることが分かった。そのため、撮影機器を用いたSCP-1840-JP-1の基部調査は不可能であることが判明した。
調査記録1840-JP-3 - 201█/09/03
対象: SCP-1840-JP-1調査員: 遠藤研究員、ヘリコプターパイロットとその補佐
調査方法: █████地区から2.5km離れた位置より遠藤研究員がSCP-1840-JP-1を確認した後に、ヘリコプターに搭乗し、SCP-1840-JP-1が他の高層ビルに隠れない経路を辿りながら接近する。そのときにSCP-1840-JP-1の消失を防ぐため遠藤調査員は交互に瞬きを行う訓練を受けた。
結果: SCP-1840-JP-1から半径1kmの地点に侵入するまで異常は見られなかった。しかし、半径500m付近において、遠藤研究員からSCP-1840-JP-1内のSCP-1840-JP-2のほとんどがこちらを見ているとの報告があった。また、SCP-1840-JP-1の基部は手前のビルに隠れており、さらに接近しなければ確認できないことが判明した。さらに接近を試みたところ、SCP-1840-JP-1より半径250mの地点で遠藤研究員との連絡が途絶えた。ヘリコプターはSCP-1840-JP-1の背後に隠れた時点で消失した。
本実験後にインシデント-1840-JPが発生。詳細は事案記録-1840-JPを参照
調査記録1840-JP-4 - 201█/11/26
対象: SCP-1840-JP-1調査員: D-392876 (ヘリコプター操縦経験 有)
調査方法: █████地区から2.5km離れた位置よりD-392876がSCP-1840-JP-1を確認した後に、一人乗りヘリコプター(特定の信号により外部から破壊可能)に搭乗し、SCP-1840-JP-1の500mまで接近し帰還する。
結果: 帰還後、D-392876はSCP-1840-JP-1の基部は手前のビルに隠れており確認できなかったこと、またSCP-1840-JP-1を観察しているとき、終始SCP-1840-JP-2がこちらを見ていたことを報告した。調査終了後、D-392876にはクラスC記憶処理が施された。D-392876は2週間後に消失した。
事案記録-1840-JP: 基部調査1840-JP-3終了後、小規模な財団職員の消失する事案が発生しました。この事案によって、3日間のうちに調査に参加した観測部隊の隊員14名中、斎藤隊員を除く13名が消失しました。また、斎藤隊員につきましても異常な行動が確認されており、伏見博士による斎藤隊員に対するインタビューが行われています。内容は下記のログを参照ください。
日時: 201█/09/06 10:25
場所: 西新宿 █████████タワー 24階 会議室
対象者: 斎藤隊員
インタビュアー: 伏見博士
<再生開始>
[机やパソコンなどのあらゆる機材が壁際に追いやられ、山の様に積まれている。一方で一脚の椅子が窓際に設置され、そこに座り景色を眺める斎藤隊員の背中が見える。そこへ伏見博士が歩み寄り声をかける。]
伏見博士: 調子はどうですか?
斎藤隊員: おい! 俺の前に立つんじゃねぇ!
[斎藤隊員が目の前に立つ伏見博士を右方へ突き飛ばす。その後、俯きながらもう一度座る。]
斎藤隊員: クソっ......おまえのせいで......
[突き飛ばされた伏見博士が立ち上がりながら話しかける]
伏見博士: 本日のインタビューは延期にした方がいいみたいですね。もう少し気持ちが整理出来てからにしましょう。
斎藤隊員: いや......今日やってくれ...。今日やらないと、本当に無駄になってしまいそうだからな。
伏見博士: [3秒程沈黙] それでは、インタビューに入らせてもらいます。まず、ここ数日における観測部隊員の消失事件について何か心当たりはありませんか?
斎藤隊員: やはりいなくなったのか......
伏見博士: 連絡は取られていないのですか?
斎藤隊員: ああ、取ってない。記録を見ればわかると思うが、俺はあの調査の後ずっとここにいる。そして、だからこそ俺は今も消えていないのだと思っている。
伏見博士: なぜあなたは調査の後ずっとここに籠っているのですか?そしてここで何をしているのですか?
斎藤隊員: ずっと見ていたんだ。あのビルを。
伏見博士: SCP-1840-JP-1のことですね?
斎藤隊員: そうだ。俺はこのSCiPの調査を行ったとき、初めは遠くからは見ることができるのに、近づくと姿が消えるだけの異常性を持つ比較的無害なオブジェクトだと思っていた。だが、あのビルの中の奴と目が合ってから、それが間違いだと気付かされたよ。
伏見博士: 何が間違っていたのですか?
斎藤隊員: だんだん近づいてくるんだ。目を離す度に。最初は何度視線を外してもあのビルが消えないことに違和感を覚える位だったが、7回目あたりであのビルがだんだんデカくなってることに気付いたんだ。それから怖くなって、俺はとにかく見晴らしのいい場所を探してここに来た。だが、ここへ来るまでの間に何回も目を離してしまったから、あのビルはあそこにある丸いビルよりも手前になる程近づいてきていた。それから俺はここに座って一睡もせず、ずっとあのビルを見ていた。......おまえが来るまでな。
伏見博士: もしかして、私があなたの前に立ったことで、SCP-1840-JP-1が隠れてしまったということですか?
斎藤隊員: あぁ...。だが、どうせおまえがいなくてもそのうち限界が来ていたと思う。第一、もう俺は多分手遅れだ。疲れてしまった。
伏見博士: 手遅れとはどういうことですか?
斎藤隊員: 多分あのビルは見た人間に対して作用する。俺達の言葉でいえば認識災害ってやつだ。俺はあのビルの中にいたやつと目が合ってしまったから、おまえらには見えなくなった後もあのビルの幻覚に苦しめられているんだ......。そうに違いない。そうじゃなきゃ向かいのビルの奴らがずっとこっちを見てるのにおまえが気付かないわけないからな。
後ろを振り返り向かいのビルを確認しても異常は確認できず、もう一度前を向くと斎藤隊員の座っていた椅子のみが残されていたと伏見博士はインタビュー後に証言しています。また映像記録につきましては、博士が向かいのビルへ振り向いた直後に、画面右側からスーツの人影が出現しカメラに接触した時点で終了しています。
インタビューの結果より、SCP-1840-JP-1の詳細な観察にはDクラス職員を利用し、SCP-1840-JP-2群と目が合った職員にはクラスC記憶処理を施すことが管理委員会によって201█/09/18に決定しました。記憶処理により、初期の症状であれば回復することが現在までに確認されています。また、中期以降であっても症状進行の遅延が期待されます。