SCP-1653-JP
評価: +8

クレジット

タイトル: SCP-1653-JP - 人生はいつだってリスタートできる
著者: Something_funya2 Something_funya2
作成年: 2025

評価: +8

アイテム番号: SCP-1653-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1653-JPが所在する神社境内は財団の管理下に置かれ、常にコンクリート舗装された状態を保ち、立ち入り禁止措置を講じます。舗装作業時は犯罪行為に従事していない職員のみを使用し、犯罪行為に従事する職員は常にSCP-1653-JPへの立ち入りを禁じてください。

例外として、レナトゥス・プロトコルの対象となった人物はSCP-1653-JPを利用しなければなりません。そのため、SCP-1653-JP直上のコンクリート舗装は取り外し可能な状態に保ってください。

説明: SCP-1653-JPは直径50 c×ばつ高さ1 cmの円柱空間です。当該アノマリーの異常性は転倒により円柱空間に侵入することでのみ発生し、異常性に曝露した人物は負傷が快癒します。当該地点は青森県八戸市是川に所在する神社の境内に存在しており、地域住民により"病気平癒の御利益がある神社"として知られていました。財団はSCP-1653-JPを確保するとともに、地域住民への聞き取り後に記憶処理および記録の改竄を行っています。

SCP-1653-JPの異常性により快癒する負傷には何らかの選択性があり、基準は明らかになっていません。具体例として、財団が確認した全ての事例において転倒の際に発生した負傷は快癒しないことが明らかになっています。

以下は、収容直後の調査時に行われた、SCP-1653-JP被影響者の調査記録から抜粋した表です。

表1: SCP-1653-JP被影響者に対する聴取記録抜粋

負傷者名:職業 快癒した負傷 負傷事由
越前谷 隆治(46歳): 建設業 第五中手骨の骨折 聴取不能のため不明
築舘 光(15歳): 中学生 第五中手骨の骨折 聴取不能のため不明
新井田 奈津子(28歳): 主婦 中指第一関節背部の切創 聴取不能のため不明

SCP-1653-JP被影響者を調査した際の聴取において、自白剤を併用しているにもかかわらず全ての事例において負傷事由は聴取できませんでした。このため、財団はSCP-1653-JPの被影響者は負傷の快癒と同時に負傷に関係する記憶を失うと考えています。また、快癒した負傷は概して手指のものであり、胴体、頭部、脚部などの負傷が快癒した事例は極めて少なかったことが明らかになっています。

SCP-1653-JP研究班は、負傷箇所が手指部に集中していることが持つ意味について、特に多い第五中手骨骨折に注目して検討を行いました。その結果、第五中手骨は硬い物体を拳で殴打した際に骨折する際に発生しやすいことから、暴行の際に発生した怪我である可能性が高いと推測しました。このため、SCP-1653-JPの異常性が快癒する負傷は暴行により発生したものに限られると仮定され、再調査が行われました。

以下は、SCP-1653-JP被影響者に対して行った身辺調査記録から抜粋した表です。

表2: SCP-1653-JP被影響者の身辺調査記録抜粋

負傷者名:職業 推測される負傷事由
越前谷 隆治(46歳): 建設業 会社内で若手を指導する立場にあり、頻繁に暴行を働いている事実が確認される。第五中手骨骨折は、この際に行われた殴打によるものと考えられる。
築舘 光(15歳): 中学生 学校内で度々暴行を働いており、第五中手骨骨折はこの際に行われた殴打によるものと考えられる。
新井田 奈津子(28歳): 主婦 財団の身辺調査により、新井田氏が不倫を行なっている事実が判明。不倫相手のアパートでの料理中に包丁で中指を切っている事実が不倫相手から確認される。

以上の調査から、SCP-1653-JPにより快癒する負傷は、一般的に悪事と考えられる行為の最中に発生した負傷に限られると仮定されました。しかし、この仮定はSCP-1653-JP被影響者が負傷事由に関する記憶を失っている事実を説明できるものではなく、追加の実験が必要と判断されました。この仮定に至るまでに被影響者は全て記憶処理されているため、追加試験にはDクラスを用いています。

以下は、Dクラス職員を用いたSCP-1653-JP被影響者の記憶喪失に関する実験の記録です。

実験記録 - SCP-1653-JP - 1

被験者: D-1653-1

来歴: D-1653-1は10歳から両親によりスリや万引きなど窃盗行為を強要されていた。間接正犯として両親が逮捕されて以降、クラスメイトからの恐喝や傷害により登校を拒否し、窃盗行為により生活していた。この時期から少年鑑別所や少年院を出入りしており、空き巣の技術はこの頃に学んだと自供している。

成人したD-1653-1は空き巣行為で得た金銭により生活しており、3年に渡って警察の捕捉を逃れ続けている。最後の犯行において、留守番をしていた児童を殺害した際に騒音が発生。これが原因となって近隣住民の通報から警察に逮捕され、現在に至っている。

D-1653-1は脚部の複数個所において有刺鉄線や忍び返しによる負傷を負っている。これ以外の負傷は犯罪を原因としない負傷であることがインタビューにより確認されている。

実験工程: D-1653-1をSCP-1653-JPへ進入させ、転倒させる。インタビューを遅滞なく行うために、D-1653-1の進行方向に低反発マットを設置し、負傷を抑制する。

結果予想: D-1653-1の脚部に存在する負傷が快癒し、D-1653-1からは脚部の負傷に関する記憶が失われる。

結果: 複数回徒歩でSCP-1653-JPに侵入した場合は異常性が発現しない。転倒によりSCP-1653-JPへ進入したD-1653-1は瞬時に10歳程度まで若返った。直後のインタビューにより、Dクラス職員雇用に繋がった強盗殺人など全ての記憶も消滅していることが確認されている。

考察: 本実験の結果は、これまでに想定されていたSCP-1653-JPの異常性である、悪事に伴う負傷の快癒と悪事に関する記憶の喪失では説明できない事象であり、異常性の再考が必要である。快癒および記憶喪失と若返りが同一の異常性により引き起こされていることを前提に置くと、SCP-1653-JPの異常性は転倒により罪を取り落とすことであるとすれば、以下のように全ての現象を説明できるだろう。

  • 負傷の快癒: 罪を犯したという前提が失われたため、因果律的改変により負傷が快癒する。
  • 記憶喪失: 前項と同様の理由により、罪の記憶が失われる。
  • 若返り: 前項と同様の理由により、罪を犯した経歴が失われる。
  • 負傷快癒の選択性: 犯罪の関与していない負傷は快癒しない。

以上の考察が真であるとした場合、記憶処理や記録改竄など日常業務が人権蹂躙である財団職員は、SCP-1653-JPでの転倒によりD-1653-1と同様に若返り現象を経験すると考えられる。これは財団職員の経験と知識が失われることを意味する。SCP-1653-JPの利用により未知の異常現象が発生する可能性も加味して、一般財団職員がSCP-1653-JPに接近するべきではないと提言する。

以上の結果と考察の後、若年時から犯罪行為に従事していたDクラス職員を用いてSCP-1653-JPの追証実験が行われました。この実験の結果は実験記録 - SCP-1653-JP - 1と同様であり、被験者のD-1653-2は14歳の児童に若返りました。このためSCP-1653-JPの持つ異常性の本質は罪の脱落にあると認定されました。

補遺1: 実験により発生したDクラス児童の処遇について、倫理委員会により審議が行われました。以下に、その結果を付記します。

倫理委員会通達 - SCP-1653-JP

SCP-1653-JPの実験に用いられたDクラス職員について、財団が経営する養護施設への入所を許可する。以下に事由を述べる。

前提として、Dクラス職員の前身は全名が死刑囚であり、社会から不要とされた人物を採用している点を強調する。

正常な社会において、どのような立場の人間も基本的に再利用が可能である。それは、法を順守し、倫理を身に付け、社会に許容される最低限の素養が身についているためだ。Dクラス職員として採用される死刑囚は、全てが最低限の素養を身に付けていない人物と社会に判定された者たちである。

このために、財団は全ての死刑囚を社会からの廃棄物であると見なしている。Dクラス職員は廃棄物であるため、多少のコストを支払ってでも再利用することは、社会および財団にとってコストパフォーマンスの点から合理的である。このため、一見するとDクラス児童は現行のままDクラス職員として雇用することが合理的であるように思われる。

しかしながら、中間廃棄物処理の観点からすると、有価物として利用可能な存在は有効利用することが望ましいとも考えられる。SCP-1653-JPにより生産された2名のDクラス児童は知能や発達において瑕疵は認められず、犯罪行為などに関する記憶も完全に消滅していることから有効な人材として利用可能である。このため、財団の監視下で育成し、雇用する選択肢の方がDクラス職員として使用するよりも有効性が高いと判断する。

倫理委員会の判断により、D-1653-1およびD-1653-2は財団が経営する養護施設への入所が決定されました。

補遺2: SCP-1653-JPに関する更なる研究により、SCP-1653-JPの異常性で被影響者から脱落した罪は実体化などの異常現象を起こさず、一般・超常問わず社会へ悪影響を与えないことが確証されました。また、元D-1653-1および元D-1653-2は問題なく成長し、財団職員として雇用されています。

このことから、財団は老化や負傷などで活動不能状態に陥った財団職員を、SCP-1653-JPで再利用可能な状態に戻すプランを検討中であり、倫理委員会により当該プランが審議されました。

以下に、倫理委員会の審議結果を付記します。

倫理委員会通達 - SCP-1653-JP - 2

SCP-1653-JPによる財団職員のリサイクルプランを許可する。以下に事由を述べる。

財団の使命は人類の保護であり、財団職員は人類の庇護者である。人類保護を責務とする財団職員は全体への奉仕者であり、その目的のためならば人権は保障されない。使い捨てでないだけで、本質はDクラス職員と同等である。

よって、SCP-1653-JPによる財団職員リサイクルは妥当な選択肢である。以前の評決によりDクラスのロンダリングにSCP-1653-JPを用いたが、その結果は予想を遥かに超えて望ましいものだった。経歴を失った白紙の職員は教育次第で様々な適性を得ることができ、犯罪行為にさえ従事していれば再度のロンダリングも可能である。

これらの事実から、SCP-1653-JPにより人材を再利用することは、極めて有用性が高いと判断できる。

倫理委員会の許可により、SCP-1653-JPを用いた財団職員リサイクルプラン、レナトゥス・プロトコルが採用されました。レナトゥス・プロトコルによるリサイクルの対象拡大を目的として、職務における違法・脱法行為は推奨されます。

Footnotes
. フェンスや塀の頂上部に施工される棘状の防犯設備。
ページリビジョン: 1, 最終更新: 05 Mar 2025 12:38
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