アイテム番号: SCP-107-JP
オブジェクトクラス: Euclid
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会談休憩中のSCP-107-JP-1 |
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特別収容プロトコル: 現在SCP-107-JPの収容は余剰次元への通用路隔離と侵入手続きの秘匿を確実にするため機動部隊オミクロン-ロー("ドリームチーム")と現地執行機関との外交手続きを主体に進行中です。また意図せぬ通用路の開通を防ぐためフランス国内で生産されたアブサンに対し原産地呼称委員会による監査の名目で生産を行う各蒸留所への定期検査が行われます。また、SCP-107-JP内で創作された作品は空想科学部門による審査/校正の上、該当作家の遺作ともしくは再発見された原稿として一般社会へ公開されます。
説明: SCP-107-JPは余剰次元に存在する面積150.15km2の市街地です。SCP-107-JPは現地執行機関によりアブサン・アベニューと呼称されており、現地住人の代表として市長を据えた執行機関によって統治されています。SCP-107-JPは基底現実世界と接続したポータル及び現地執行機関の定める意識体侵入手順通称『エミル・ペルノ』により進入が可能です。ポータルは現在タヴェルニー空軍基地第22番倉庫に固定されており、財団はフランス政府より施設の租借協定を行う事でこれを保持しています。
現地執行機関の定める意識体侵入手順は現在の所手続き上の理由により固定されていますが、これはSCP-107-JPの施政者が世代交代することで変更される可能性があります。SCP-107-JPが発見されてから現在に至るまでにこの手順は2回変更が行われています。現在の侵入手順は下記のとおりです
意識体侵入手順書 1965年10月01日
以下はSCP-107-JPへ侵入するための検閲済み説明リストです。この文書の当バージョンでは一部のステップが省略されています。この方法での侵入は実体を基底現実世界に残したままの侵入となり、侵入者はSCP-107-JP内において緑色の霧で構成された人型実体として出現します。進入中に基底現実世界での肉体が死亡した場合、侵入者の意識は中断されSCP-107-JP内のランダム地点にて新たに新たな肉体を持つ人型実体として再生成されます。この人型実体は基底現実世界での記憶を引き継ぎますが肉体的には健康な状態を保っており、元の肉体が死亡した際の肉体的な損傷を引き継ぎません。またこの実体は72時間に15ml以上のアルコール飲料を経口摂取しない場合急速な肉体崩壊を引き起こすことが確認されています。
- 1シリング硬貨を3枚を底に設置した銅製のコップにヴィユー・ポンタリエを注ぎ着火します。
- 規定されたフレーズを唱えながら加水します。この際アブサンと水の割合が1:3以上になると手続きは中断されます。
- 加水したヴィユー・ポンタリエを30分以内に飲み干してください。
- 24時間以内に睡眠を行う事によりSCP-107-JP内に存在するアパートの一室で目を覚まします。基底現実世界に帰還する際は同様のアパート内で睡眠を行う必要があります。
SCP-107-JPの存在する余剰次元は機動部隊オミクロン-ローによる検証により人の意識下に接続された夢と同一座標に重複している事が確認されていますが現地執行機関がどのようにして睡眠下の人間の意識をSCP-107-JPに招待しているか詳細な方法は不明です。
SCP-107-JP内は殆どの場合において基底現実世界とほぼ同一の物理法則が機能しますが同時に現地住人(以後SCP-107-JP-1と表記)および旅行者(SCP-107-JP-2)は基底現実世界と異なった物理法則を基準とする行動をとるケースが確認されており複数の物理法則が並列していると推測されます。
SCP-107-JP内は常に薄緑の霧によって視界不良の状態にあり、その町並みは18世紀半ばから19世紀の建築様式を模倣していますが、インフラは現代に近く上下水道、電気、ガスが整備されています。また基底現実世界と大きく異なる点として町の各所に設置された街灯に設置された蛇口や水道からアブサンの摂取が可能である点が挙げられます。アブサンは飲用として多く用いられるだけでなく燃料としても活用されており夜間街灯の燃料、アブサンストーブなどといった用途にも利用されます。このアルコール飲料が何処から供給されているかは今のところ不明であり、現地管理組織からも公式の回答が得られていません。
SCP-107-JPは余剰次元上に独立した存在を確立しているものの、物質上の自給自足を行う事が出来ず、現地執行機関の定めた指定業者が複数の次元から食料、生活用品、その他資材を輸入する形で生活を維持しています。SCP-107-JPにおける現地執行機関は基底現実世界との交易を財団管理下で行う事に同意しており、比較的良好な関係を維持していると考えられています。
SCP-107-JPは1949年、キューバのサンチアーゴ・デ・パウラにて休暇中であったエージェント・アーネストの黒色火薬を用いた無謀な飲酒体験によって発見されました。この際エージェント・アーネストはSCP-107-JPに8時間滞在し、SCP-107-JP-1となっていた財団職員のエージェント・ガートルードよりロンドン地下に設置された基底現実世界とのポータルの存在を確認、帰還しました。
エージェント・アーネストは所属サイトへの報告後、4回の無謀な飲酒を実施し、3回目の飲酒行為で当時の指定侵入手順を確立、エージェント・ガートルード及び現地執行機関との接触を行い、現地執行機関よりポータルの使用許可及び非武装の探索チーム派遣の許可を取り付けました。現地執行機関は作家、芸術家および評論家が取材の名目での探索を行う場合に限りこれを認めるとし、これに伴い該当するエージェントによる臨時探索チーム『酔いどれウサギ』が設立されました。
以下は酔いどれウサギと現地執行機関との取り決めをもとに行われた現地執行機関との接触記録です。この際、SCP-107-JP内部の記録にあたり当時主流であったモノクロフィルムと財団が試作中であった携帯型磁気録音機を利用した複合記録装置の試験運用が行われ、財団としては初めて余剰次元の撮影に成功、後の記録装置開発に大いに貢献しました。
注記: 空想科学部門による編集作業中
当ファイルは現在、空想科学部門により修復中です。
修復作業の詳細についてこの余剰次元の現任の収容監督官(scisyhpatap.pcs|dranemp#scisyhpatap.pcs|dranemp)まで連絡するか、あなたのIntSCPFNサーバー管理者までEメールを送ってください。
空想科学部門 修復課
SCP-107-JP/1949/接触記録
映像記録
日付: 1949/█/█
探索チーム: 臨時探索チーム『酔いどれウサギ』"
部隊長: da-1:エージェント・アーネスト
部隊構成: da-2:エージェント・イアン、Da3:エージェント・ロアルド[再生開始]
下水道の一室に設営されたキャンプより、薄ぼんやりと光るゲートへエージェントたちが余剰次元へと侵入していく。数秒間続くフラッシュの後、映像は霧が漂うレンガ造りの都市へと移り変わる。
da-1: da-1以下4名、侵入を完了した。前回は酒を飲んで起きたら霧の体でびっくりしたが今回はきちんと自分の体のようだ。アブサンの甘い香りがそこら中に漂っている事を除けば異常はない。
da-3: 逆にそれが問題だ、一杯やりたくなる。
da-2: 比較的安全とみられているが、それでも俺たちの世界とは違う世界だ、警戒したまえ。
da-1: そうだ、それに打ち合わせではあっと驚くような大物が出てくる事になっている。警戒するに越したことはないだろう。
チームは事前打ち合わせにあったランドマークと照らし合わせて現地執行機関との合流地点へ移動する。この際、da-2が街灯に備え付けられた蛇口より液体のサンプルを取得する。
30分ほど合流地点への移動に伴い市街地が描写される。オープンテラスで談話する現地住民や歓談する霧状の人々が映し出される。磁気媒体はこれらの会話の6割以上が創作や芸術に関連する話題であることを記録している。
da-2: ここはとんでもない街のようだ。どこかで見た事のある作家や芸術家があちこちで創作の話をしてる。
da-3: 信じられないかもしれないがさっき酔っぱらいながら喧嘩していたのはチャペック兄弟だ。基底世界ではどっちも大戦が終わるまでに死んでる。
da-1: それだけじゃない、愛しのロストジェネレーションが何人かこの余剰次元で生きている。フィッツジェラルドとカミングスがアブサンで酔いつぶれていたのを見た。
探索チームはなく会話後30分の移動の後合流地点に指定された市庁舎へ到着する。市庁舎周辺には緑色の液体が貯められた噴水や水場が多く存在しており、水場を中心に多くの実体が歓談する様子が映し出される。歓談する人々の中には基底世界で知られる著名人も含まれる。
dа-1: 予定された合流地点はここの筈だ。念のために規定文言にて記録に残す。現在は現地時間14時22分、支給された時計で14時28分、これより接触を開始する。現地執行機関担当者は以後記録上asと呼称する。
以後記録の為の事務的発言が続くため一部割愛、予定時刻から15分遅れて現地執行機関担当者(以後asと記載)が現れる。対象は左耳の喪失、体格や性格など記録上の特徴一致から基底現実世界における著名な芸術家であるフィンセント・ファン・ゴッホ氏の晩年の姿と同一の存在である事が確認されている。
as: やあ、君たちが『財団』の担当者だね。待たせてすまない、少々執務に押されていたのだ。ゴーギャンが逝ってから私の執務を手伝ってくれる友人がとんといなくてね。私が当代の代表を務めているファン・ゴッホだ。慣例上市長と呼ばれている。今回は君たちにこの街が侵略的意図を持っていない事、我々は君たちの次元との安定した交易を希望している事を理解してもらう為に直接対応させてもらう事になる。
da-2: 結構、時間に遅れたことを別にすれば上々です、Mr.ゴッホ。ただ、あなたは我々の知識からすれば市長なんて大層な政治家になるような経験も願望もない人物だと考えていました。何故あなたのような芸術家が街を?
as: アブサンに満たされて常にアルコールが漂うこの街でそういう厄介ごとを引き受ける人間がいなかったからさ。この街では他薦による選挙という形で執行機関の役人や市長が決まる。皆は貧乏くじを引いた候補者から面白そうなやつを選んで仕事を押し付ける訳だ。イデオロギーも主義も自由、出身もばらばらとなれば聞いたことがあるそれっぽい人物に票が入る。
da-3: それで今はあんたが執行機関の市長と、だがそれにしても任期が長すぎるんじゃないか?あんたが死んでからもう50年は経ってる。
as: この余剰次元では不老を実現しているのさ。街の中でアブサンを摂取し続ける限り存在を保つことが出来る。ただし、体を維持する為に最低でも72時間に一度はアブサンの摂取が必要だし生存に必要な食事や睡眠は必要だ。怪我もすれば酒を由来するものを除けば病気にもなる、あくまでこの街に留まる限りは老化と酒を由来した原因で死ぬことはないというだけという事だ。
da-1: 酔っぱらいの聖域という事は理解した。あくまで一個人的には羨ましいが、それでもなお入り口を開けて他との接触を維持するという事は理由があるのだろう?本題に入ろう。
【フィルム劣化につき復元中】
『酔いどれウサギ』と現地執行機関の交渉により1950年初頭、カタコンブ・ド・パリの進入禁止区画に設置されたポータルを通じて財団とSCP-107-JP間での次元間収容条約が締結され、財団はSCP-107-JP内部のインフラ維持の為の交易が開始されました。これに伴いSCP-107-JP内部で作成された創作物の基底現実世界への輸出が開始され空想科学部門は検閲、ミーム的処理、情報統制を担う事が決定されました。『酔いどれウサギ』は活動を終了し、以後の収容活動及び交易は機動部隊オミクロン-ローの収容担当者に引き継がれました。
補遺1961_12/05: 1961年9月、現地執行機関の代表を務めるファン・ゴッホ氏がSCP-107-JP内で事故死しました。これに伴いSCP-107-JP内部で市長選挙が行われ、新たな市長として基底現実世界で作家を務めていたアーネスト・ヘミングウェイ氏が新たな市長に任命されました。
ヘミングウェイ氏は就任に伴い財団との次元間収容条約の改定を宣言、慎重な交渉の上、現在の収容に続くSCP-107-JP収容の基礎が構築、これに合わせて意識体侵入手順『エミル・ペルノ』の制定が行われました。以後現在に至るまでヘミングウェイ氏は在任を続けており、現在までの良好な収容状況の維持に欠かせない存在となっています。
インシデント記録:2015-1 現地執行機関より管理外のポータルの発見及び、これを利用した密輸業者の存在が報告されました。彼らはSCP-107-JP内部で調達したアブサンの基底現実世界での流通を行っており、現在その全容の把握および流通したアブサンの回収が行われています。密輸されたアブサンは夢に強く作用する効能が確認されており、一般流通品に紛れた密輸品を摂取した結果として長期の睡眠及びこれに伴う夢世界への意識的滞在が引き起こされる危険性が示唆されています。また密輸業者の作成した管理外ポータルを通じてSCP-107-JPより並行次元からのSCP-107-JP-2が基底現実世界に迷い込む事件が██件報告されています。現在の所は機動部隊ガンマ-5 ("燻製ニシンの虚偽")の協力により被害は最小限に留まっていますが、今後密輸業者の事業拡大が行われた場合同様の事件が増加する可能性があり、密輸業者の摘発及びポータルの閉鎖の為の捜索が続いています。
補遺2016_02/02: SCP-107-JPから基底現実世界に流出するSCP-107-JP-2の対応について現地執行機関との協議の結果、SCP-107-JPと接続している並行次元からの流入の可能性が示唆されました。これは基底現実世界にて確保された旅行者によりスティーブン・キング氏の存在しない作品に対する言及や旅行者の認知する創作作品に関する知識が空想科学部門の把握している基底現実世界に属する創作作品群と異なっていたことなどからも疑惑が上がっていたものです。今回の協議において我々ともSCP-107-JPとも異なった次元から物語災害およびメタ的介入の危険性を考慮し、空想科学部門は機動部隊オミクロン-ローとの協議のうえで新たな収容手順の作成を決定しました。現在新たな特別収容プロトコル制定のための協議が進行中です。