2018年11月
抗生物質の実験
2018年11月23日 | 固定リンク
抗生物質とは「ある微生物が生産する物質で、他の微生物の増殖を抑える物質」と定義されている物質です。みなさんも風邪などの病気になった時にお世話になっているかもしれません。
抗生物質はイギリスのフレミングによって発見され、1945年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。その後、日本の大村智さんも抗生物質に関する一連の研究成果を評価されて2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
今、応用生物学部の2年生は、抗生物質が大腸菌の増殖を抑えることを確認する学生実験を行っています。抗生物質を丸い紙にしみ込ませ、大腸菌を塗った培地の上に置きます。その状態で37°Cに保ち、一晩培養すると紙の周囲だけ大腸菌が生えない様子が観察されます。写真の白い丸は抗生物質を含んだ紙です。大腸菌が一面に増殖していますが、紙の周辺は何も生えず透明です。この菌が生えていない部分は阻止円(ハロー)とよばれ、抗生物質の濃度が高くなるとハローの直径も大きくなります。
現在担当している学生実験では、この他にも顕微鏡で大腸菌や納豆菌を見たり、大腸菌と納豆菌の耐熱性や紫外線耐性を比較したりする実験を行っています。
このような実験をすることで、将来、医薬品開発や食品製造を行う仕事に就くきっかけになってくたらと考えています。
微生物に愛を、中西です。
2018年11月15日 | 固定リンク
二回目のブログの執筆を承りました、生命機能応用 (軽部-中西) 研究室の中西です。
なかなか大学内外の皆さんに私や研究室について知ってもらう機会が無い中で、Blogの執筆を賜れたのは非常にありがたく嬉しいことだと思います。この場を借りて感謝申し上げます。
さて、前置きはこれくらいにしまして...。現在、我々は微生物を用いた物質生産を目指して研究を進めています。微生物は色々な機能を有しているので、将来的には医薬品や化粧品、食品に関わる物質の生産研究を進めていきたいと考えています。
前回も本blogで聞きましたが、微生物地位向上委員会の私としては気になるトピックがあります。皆さん微生物についてどんな印象を持っていますか?
くさい?きたない?よくわからない?何にしてもネガティブな印象を持たれている方が多いのではないでしょうか?なんだかどうも微生物に関して社会での印象が芳しくない気がしています。中には腸管出血性大腸菌をはじめ、人間にとって悪い奴が多くいるからそれはそれで仕方ないのかもしれませんが...。
微生物にはたくさんの種類がいます。それはもう数えられないくらいの種類と数がいます。だから中には悪い奴もいますが、いい奴も、あまり人間に関係なさそうな奴もいて、千差万別なのです。特に我々が主に使っている微生物は臭くも汚くないし、むしろ環境浄化に関わる微生物です。しかも我々人間に役立つ物質も作ってくれるので、ちゃんと向き合えば応えてくれる微生物です。(よくわからないこともたくさんありますが、今後お付き合いすることで深く知り合えたらと思っています)
案外、私が思っているよりも、また皆さんが思われるよりも微生物には人間にとって良いやつが多いので、微生物を今より少し優しい目で見つめてあげて下さい。いい奴に対しては愛で応える。非常に大事ですね。そうすればきっと、彼らも我々に優しく接してくれることでしょう。愛って素敵。
...おっと、今ブザーが鳴った。ああ、オートクレーブ(121°C, 2気圧の環境で微生物を完全に殺す操作)中だった。さ、お片付けしよう。
着任のご挨拶(新任助教 伊澤千尋)
2018年11月07日 | 固定リンク
皆さん、はじめまして
10月から、応用生物学部の先端化粧品コース、化粧品材料化学研究室の助教になりました、伊澤千尋です。
これまでは、光触媒などの無機材料を中心に研究してきました。
光触媒とは、光を使って酸化還元反応を起こすもので、一番有名な物質は酸化チタン(TiO2)かと思います。最近では、防汚や抗菌などの目的で様々な製品に光触媒コーティングとして酸化チタンが利用されているのを目にします。また、中学・高校の教科書にも光触媒が掲載されるようになったので、聞いたことがある方も多いと思います。
「無機材料」や「光触媒」と聞くと、化粧品とはだいぶかけ離れた存在のような印象をもたれるかもしれません。しかし、光触媒として有名な酸化チタンは、化粧品では白色顔料として多く使われています。身の回りの化粧品の成分表示を見てもらえればわかると思いますが、私が持っているファンデーションやアイシャドウ、チーク、コントロールカラー、日焼け止め などなど...様々なメイク用化粧品に「酸化チタン」が配合されていました。
酸化チタンを光触媒として用いる場合は、効率よく反応させることを目指して研究を進めていきます。一方、酸化チタンを化粧品に用いる場合は、肌への付き方や、光の反射の仕方を改善することを目指していきます。これらの機能は、形状によって変化するので、形状をコントロールすることが、機能の向上につながります。
これまで私は、合成法を工夫することで、光触媒の形状をコントロールする研究をしてきました。これからはその知識を活かして、化粧品に用いられる材料について、形や大きさなどの形状をコントロールし、機能の向上を目指したいと思っています。いつかブログで「こんな新しい化粧品材料を作りました!!」と報告ができるよう頑張って研究していきます。
機能性RNA工学研究室に着任しました丸山です
2018年11月02日 | 固定リンク
はじめまして。この度、応用生物学部の機能性RNA工学研究室に助教として着任いたしました丸山と申します。このBlogでの執筆は今回が初めてですので、簡単に自己紹介させていただきます。
私の専門分野は分子生物学や生化学で主に脂質代謝領域で研究をしてきました。脂質代謝といっても物性評価ではなく、肥満やII型糖尿病といった生活習慣病の予防を目的とした研究です。例えば、脂肪酸やコレステロール生合成に関与する遺伝子の働きを抑える有効成分の探索や、遺伝子工学を用いて体内の脂肪の蓄積に関わる遺伝子の機能の抑制を目指します。皆さんも最近スーパーやコンビニエンスストアで機能性表示食品を目にする機会が多いとは思いますが、研究成果が将来的にこのような商品に応用されるかもしれません。
私はこれまでに「小胞体ストレス」という現象について特に研究をしてきました。小胞体はタンパク質の合成を司る細胞内小器官です。小胞体におけるタンパク質の合成が正常に行われないと不良タンパク質と呼ばれる品質に問題のあるタンパク質が蓄積し、小胞体ストレスが発症します。小胞体ストレスは代謝性疾患やがんなど様々な病気に関係しているといわれています。今後は当研究室で行われているRNA干渉技術を利用して小胞体ストレス応答に関係するshRNA探索を検討したいと考えています。
私は昨年アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンに滞在していたのですが、ちょうど今ぐらいの時期に地元の野球チームが球団創設後初めてワールドシリーズを制覇しました。優勝パレードには100万人が訪れ、町全体が非常に盛り上がっていました。今年は連覇できずに残念でしたが、また来年頑張ってほしいです。
もし何かご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、お気軽に研究室までお尋ねください。今後ともよろしくお願いします。