大和朝廷(やまとちょうてい)の時代、花人親王(はなひとしんのう)と山彦皇子(やまびこのおうじ)の皇位継承をめぐる争いと、その周囲に起こる様々な物語を描いた作品です。
佐渡が島に辿(たど)り着いた花人親王は、かつて臣下であった諸岩(もろいわ)に出会います。事情を知った諸岩は、親王への忠誠心から、山彦皇子の臣下の娘である妻に、離縁状を送ります。
松浦庄司(まつらのしょうじ)の娘・佐用姫(さよひめ)は、諸岩に恋をしていました。しかし、諸岩は姫に、山彦皇子に味方する姫の兄・兵藤太(ひょうどうた)を殺すよう依頼。これを知った母の指示で、姫が襖越しに刺したのは、兄ではなく母その人でした。母は、自ら兄の身替りになったのです。母の心に感じ、諸岩は姫との結婚を約束。兄の兵藤太も改心して出家します。出家した兵藤太は、海底に沈んだ鐘のことを夢のお告げで知ります。花人親王はこの鐘を、海底から鐘楼へと引き上げました。玉世姫の父・真野長者(まののちょうじゃ)は、親王とは知らずに、この人物を山路(さんろ)と名付けて召し使うことにします。
引き上げられた鐘の供養の日、離縁された諸岩の妻がやって来ます。激しい恨みを述べた妻は、鐘を落として、その中から蛇体となって現れます。しかし、僧たちの供養によって成仏し、夫婦の守り神となります。