2016年12月28日
「世界の屋根」から地球温暖化を探る
〜青海・チベット草原の炭素収支〜
環境儀 No.63
現在も進んでいる地球温暖化は、主に人為活動に由来する大気二酸化炭素(CO2)濃度の上昇によるものと考えられています。植物は光合成によってCO2を吸収し、有機炭素として体内に蓄積することで、大気CO2濃度の上昇を緩和します。一方、植物の呼吸や土壌微生物の分解によって、有機炭素は再びCO2として大気中に放出され、大気CO2濃度の上昇を加速することもあります。したがって、大気CO2濃度の変化を予測し、地球温暖化とその対策を考えるためには、植物や土壌中の炭素蓄積量を把握するとともに、植物と大気のCO2のやりとりの過程を理解する必要があります。
陸域は、生育している植物の種類によって、森林、草原、農地などに分類でき、森林は温暖化の主要因である大気CO2の吸収源として機能することが期待されています。しかし、森林とほぼ同じ面積を占める草原では、CO2吸収能力についてあまり把握されていません。
ユーラシア大陸には、西のハンガリーから東のモンゴル、そして中国の東北部まで連なる地球上最も広大な草原が広がっています。この東西に横断する草原地帯の中央には、最も標高の高い青海・チベット草原生態系があります。私たちは2000年ごろから地上の「秘境」ともいわれている青海・チベット草原に注目し、さまざまな角度から温暖化関連研究を展開してきました。本号では、主に青海・チベット草原生態系の炭素収支に関連する研究成果、そして現在展開している温暖化長期モニタリング研究を紹介します。
目次
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2011年12月28日地球温暖化研究プログラム(終了報告)
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2008年12月26日地球温暖化研究プログラム(中間報告)
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2003年9月30日大気汚染・温暖化関連物質監視のためのフーリエ変換赤外分光計測技術の開発に関する研究(革新的環境監視計測技術先導研究)
平成12〜14年度国立環境研究所特別研究報告 SR-52-2003