2024年1月26日金曜日
【別冊シーサイドももち】〈069〉シーサイドももちはMVステージ(その1)
埋め立て地にできたニュータウン「シーサイドももち」の、前史から現代までをマニアックに深掘りした『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』(発行:福岡市/販売:梓書院)。
この本は、博多・天神とは違う歴史をたどってきた「シーサイドももち」を見ることで福岡が見えてくるという、これまでにない一冊です。
本についてはコチラ。
この連載では【別冊 シーサイドももち】と題して、本には載らなかった蔵出し記事やこぼれ話などを紹介しています。ぜひ本とあわせてお楽しみいただければ、うれしいです。
過去の記事はコチラからご覧ください。
第2回 (「ダンスフロアでボンダンス」)
第3回 (「よかトピアの「パオパオ・ロック」とは。」)
第4回(「開局! よかトピアFM(その1)KBC岸川均さんが育てた音のパビリオン」)
第5回(「思い出のマッスル夏の陣 in 百道」)
第6回(「最も危険な〝遊具〟」)
第7回(「開局! よかトピアFM(その2)1週間の全番組とパーソナリティー」)
第8回 (「ビルの谷間のアート空間へようこそ」)
第9回(「グルメワールド よかトピア」)
第10回(「元寇防塁と幻の護国神社」)
第11回(「よかトピアのストリートパフォーマーたち」)
第12回(「百道地蔵に込められた祈り」)
第13回(「よかトピアのパンドールはアジアへの入り口」)
第14回(「あゝ、あこがれの旧制高校」)
第15回(「よかトピアが終わると、キングギドラに襲われた」)
第16回(「百道にできた「村」(大阪むだせぬ編)」)
第17回(「百道にできた「村」(村の生活編)」)
第18回(「天神に引っ越したよかトピア 天神中央公園の「飛翔」」)
第19回(「西新と愛宕の競馬場の話。」)
第20回(「よかトピア爆破事件 「警視庁捜査第8班(ゴリラ)」現る」)
第21回(「博多湾もよかトピア オーシャンライナーでようこそ」)
第22回(「福岡市のリゾート開発はじまりの地?」)
第23回 (「ヤップカヌーの大冒険 よかトピアへ向けて太平洋5000キロの旅」)
第24回 (「戦後の水事情と海水浴場の浅からぬ関係」)
第25回 (「よかトピアへセーリング! オークランド~福岡・ヤマハカップヨットレース1989」)
第26回 (「本づくりの裏側 ~『シーサイドももち』大解剖~」)
第27回 (「開局!よかトピアFM(その3)今日のゲスト 3~4月」)
第28回 (「まだまだあった! 幻の百道開発史」)
第29回 (「開局!よかトピアFM(その4)今日のゲスト 5~6月」)
〈069〉シーサイドももちはMVステージ(その1)
『シーサイドももち―海水浴と博覧会が開いた福岡市の未来―』をつくっているときのこと。
「ももちって、天神や博多とならんで、いや何ならそれよりも目立って、よく映画やドラマに映るよねー」という話になりました(このときはただの雑談…)。
確かにバラエティなんかで「福岡に来ましたー」という最初の映像は、ひと昔前だと、中洲の那珂川沿いにならんでいる大きな企業看板が定番。
でも近年だと、福岡空港や博多駅、そして福岡タワーやドームが多いように感じます。
「そうすると、福岡以外の方々にも一瞬でそこが福岡だと分かる、説明抜きで福岡をあらわす場所の1つに、シーサイドももちが加わったことになるよね?」と話が進んで、試しに市史編さん室のスタッフみんなで思いつく映像作品を集めてみたことがありました。
ところがやってはみたものの、映像作品といっても、映画に、テレビドラマに、MV(ミュージックビデオ)に、アニメやテレビCMなどなど、幅が広すぎて網羅にはほど遠く…。
ただその一部をつかって『シーサイドももち』の本のなかに「映し出される」というコーナーができました。
以前このブログで紹介した『ゴジラvsキングギドラ』や『ゴリラ 警視庁捜査第8班』もその1つです。
集めてみながら気付いたのは、シーサイドももちで撮られたMVがかなり多いということでした。
なかでもアイドルのMVによく登場します。
これは、AKB48から派生した各地の48グループ(福岡だとHKT48)に代表されるような、地方に拠点を置くアイドルが2010年代に急速に増えたことがその数に反映しているものと思います。
集めた撮影リストは本に載せた以外はお蔵入りしてましたので、せっかくですから、ここでちょっとご紹介させてください。
といっても、ほんの一部なのですが…。
アイドルのMVでシーサイドももちで撮られたものとなると、一番有名なのはこの曲でしょうか、AKB48『恋するフォーチュンクッキー』。
「AKB48 32ndシングル 選抜総選挙」で1位になった指原莉乃さんがセンターをつとめた曲で、2013年に発売されました。
曲はディスコ調でゆったりとしたスピード、ストリングスのアレンジが往年のフィリーソウルを感じさせます。
世代を超える親しみやすさがあって、時間が経っても古くなりにくそうなサウンドは、発売当初から注目されて高い評価を受けました。
MVのなかで圧巻なのは、AKBのメンバーと約4000人のエキストラのみなさんが道路で踊るシーン。
この道路はシーサイドももちに当時あった「ホークスタウン」の東側に面していて、MVでは奥にドームも見えています(ちなみに右奥に映っている個性的な建物は「福岡市こども総合相談センター えがお館」)。
当時、指原さんは福岡を拠点とするHKT48に所属していて、ホークスタウンの2階にあったHKT48劇場がこの道路に面していました。
シーサイドももち以外にも福岡市内でロケがおこなわれて、福岡女学院大学・東福岡高校・柳橋連合市場が映っています。
ホークスタウンは現在では「MARK IS 福岡ももち」や「ザ・パークハウス福岡タワーズ」に変わっていて、この景色はもうありませんので、シーサイドももちの移り変わりを記録したシーンになりました。
パパイヤ鈴木さんの振り付けが覚えやすくて、踊ってみた動画に挑戦した人も多かった曲でしたね。
MVのYouTubeでの視聴回数が現在は2億回を超えているそうで、シーサイドももちのあの道路が一気に有名になった曲でした。
地元福岡の芸能プロダクション「アクティブハカタ」からは、橋本環奈さんが所属していたRev.from DVLがデビューしています。
のちにラストアイドル(Good Tears)として活動した池松愛理さんもメンバーのお一人でした。
Rev.from DVLで踊っていた橋本さんの一瞬をとらえた写真、「奇跡の一枚」が拡散されたのは2013年。
それにあわせて、Rev.from DVLの名前も全国に広まっていきました(現在は活動を終えています)。
メジャーデビューシングル『LOVE―arigatou―』が発売されたのは2014年で、オリコンで6位になっています。
そのカップリング曲『逢いにきんしゃい』のMVでは、メンバーが西鉄バスに乗ったり、警固公園や三越のライオン広場に行ったりと、福岡市内が紹介されています。
ベイサイドプレイスと並んで福岡タワーの遠景も一瞬映るのですが、これは風景写真とメンバーとを合成したものでしたので、シーサイドももちの記録としてはちょっと残念…。
がっつりとシーサイドももちで撮影したものとなると、LinQの11枚目のシングル『ハレハレ☆パレード』があります(2015年発売)。
ナオト・インティライミさんがプロデュースした、元気全開のパーティーソングです。
現在福岡の会社「ジョブ・ネット」に所属するLinQは、2011年にデビュー。
今年で13周年を迎える福岡のアイドルグループです。
現役メンバーは高木悠未さんをはじめとする7名で、過去のメンバーには今も地元のメディアや舞台に出演されている深瀬智聖さん・原直子さん・服部さやかさん、TikTokerとして全国的に有名な金子みゆさんなどがいらっしゃいます。
『ハレハレ☆パレード』のMVは全編マリゾンで撮られています。
1989年開催の「よかトピア」のときの建物は改修を経て、すでにウェディング施設ができています。
それを背景に中庭でメンバーが歌っている様子はリゾート感満載の非日常空間。
アイドルのMV舞台としてぴったりです。
よかトピアのときのマリゾンの様子は過去のこのブログをご覧ください。
今のマリゾンはこちらで。
LinQは13枚目のシングル『Supreme』(2016年)では、福岡タワーからマリゾンがある砂浜に降りていくメインゲート「中央プラザ」の広場で、15枚目シングル『負けないぞ』(2017年)では福岡市博物館でも撮影しています。
『Supreme』では「中央プラザ」が高い位置にあるため、マリゾンのカラフルな屋根の向こうに海と空が見えて、『ハレハレ☆パレード』とはまた違ったステージ感を出しています。
市内各所の撮影場所には福岡市役所西側ふれあい広場もあって、今はもうないイムズやビブレが映っているのも今後は懐かしく感じるシーンになりそうですね。
LinQ / 「Supreme」 13th Single LinQ / 負けないぞ MUSIC VIDEO(ショートver.)中央プラザの場所はこちらでご覧になれます。
福岡タワーの真下の横断歩道を渡ると、マリゾンに向かうメインゲート。
この階段をのぼると「中央プラザ」です。
福岡タワー側を振りかえると、こんな感じ。
このマリゾンへアプローチする「中央プラザ」は、パピマシェの『わがまま♡GOD♡』のMVでも使われています。
パピマシェも福岡を拠点に活動するアイドル。
2013年のデビューで、福岡の会社「twelve」が運営しています。
『わがまま♡GOD♡』は2017年リリースの4枚目のシングルです。
メンバーの後ろにある円形の低い壁は連続する四角い窓が特徴的で、MVのなかでもそれが効果的に使われています。
この場所は「中央プラザ」の西側にあって、遠くに見えるビルは「ネクサス百道レジデンシャルタワー」と「アトモスももち」です。
先ほどのLinQの撮影場所のすぐ横なのですが、知らないと同じ場所には見えないかもしれませんね。
なお、パピマシェは2020年発売の6枚目シングル『HIMAWARI』では、シーサイドももちの地行中央公園でも撮影をおこなっています。
こちらも円形ステージふうです。
次は、ばってん少女隊。
東京のスターダストプロモーションからデビューしたグループで、福岡を拠点に活動しています。
2016年のメジャー1枚目『おっしょい!』は福岡弁の軽快なスカ。
MVでは天神・大名や大濠公園・櫛田神社など福岡市内各所をめぐっていて、ドーム周辺やサザエさん通りでも撮影されています。
サザエさん通りは背景に福岡タワーがそびえて抜け感が良いので、観光客にも定番の撮影スポットですものね。
曲は全編バンドサウンドで録音されていて、MVではイギリスのスカバンド「マッドネス」へのオマージュ映像も差し込まれています(80年代の車「ホンダシティ」のCMでよく知られているシーン)。
この曲のドラムは、昨年急逝されたHi-STANDARDの恒岡章さんが叩かれていて、MVでは少しだけレコーディング時の恒岡さんの姿も見られます。
続く2枚目のシングル『よかよかダンス』もバンドサウンドにのせた福岡全開のMVでした。
こちらにもサザエさん通りなどが登場しています。
けっこう紹介したつもりでしたが、まだまだ残っています…。
この続きはまた次回に。
#シーサイドももち #マリゾン #PayPayドーム #サザエさん通り #AKB48 #Rev.from DVL #LinQ #パピマシェ #ばってん少女隊
[Written by はらださとし/illustration by ピー・アンド・エル]
0 件のコメント:
コメントを投稿
[フレーム]