米谷静二氏は鹿児島大学の地理学の教授として、各地の風土に学問と俳句の画面から光をあてたのである。<つくつくぼうし>は法師蝉のことだがダム周辺では、<ナナツルビ‖ナナツルビ>と鳴く感じである。固有名詞にいのちを通わせた一句といえよう。
脇本星浪氏は俳句雑誌<朱殲(ざぼん)>を主宰し、再三にわたり鶴田の地を訪れている。鶴田から宮之城へかけての奥ゆきが、霧のダムの神秘的な情緒に結びついている。霧深い鶴田ダムの天空から、天然の笛の音が降りそそぐ感じである。昼にも夜にも通じる一句といえよう。
大野宏峰氏は鶴田町神子で精米業を営む。民俗研究者、ボランティア活動家、伝記作家、俳人など多様な活動をしている。ダム壁を登る忍者の影は、心眼によってとらえたふるさとの風景である。<宿意>は秋のこころ、秋のおもむきの意。