公害問題で困った場合の解決手段として、「公害苦情相談制度 」と「公害紛争処理制度 」の2つの制度があります。このページでは、これら2つの制度による公害に関するトラブルの解決方法や制度の特長について解説します。
「公害苦情相談」は、身近な相談窓口で簡単な手続によって解決を図る制度です。
各市区町村や都道府県の「公害苦情相談窓口」でお気軽にご相談いただけます。窓口では、事実関係の調査を行うとともに、関係機関とも連絡を取り合い、当事者に対して改善措置の助言等を行うなどして、解決を図ります。
なお、相談しても解決しない場合の手段として、「公害紛争処理制度」が設けられています。
公害紛争処理制度の一環として、市区町村及び都道府県に公害苦情の相談窓口が設けられています。相談窓口の職員が、住民からの苦情を聞き、現地確認を行ったり、必要に応じて調査を行ったりして、当事者に改善に向けて指導や助言を行うなど、苦情の解決に努めています。
※(注記)公害苦情相談の内容によっては、地方公共団体が発生源者に対して改善指導等ができない事案もあります。
公害紛争の迅速・適正な解決を図るため、司法的解決とは別に公害紛争処理法に基づき、公害紛争処理制度が設けられています。公害紛争を処理する機関として、国に公害等調整委員会が、都道府県には都道府県公害審査会等が置かれています。
公害紛争の迅速 ・適正な解決を図るため、公害紛争処理法に基づき公害紛争処理制度が設けられています。公害紛争を処理する機関としては、各都道府県に公害審査会が、国に公害等調整委員会が置かれています。公害審査会と公害等調整委員会とは 、それぞれの管轄に応じ、独立して紛争の解決に当たっていますが、制度の円滑な運営を図るため、情報交換などを通じ相互の連携を図っています。このような機関とは別に、公害苦情を解決するために、市区町村及び都道府県に公害苦情の相談窓口が設けられています。
都道府県公害審査会等 | 公害等調整委員会 |
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※(注記)都道府県公害審査会等は裁定を行いません。 |
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なお、公害紛争処理制度は、民事上の紛争を対象としていますが、公害紛争を通常の民事訴訟で争った場合、その解決までに多くの時間と費用がかかるなど、被害者救済の面では必ずしも十分ではなかったことから生まれた制度です。そのため、この制度には民事訴訟に比べ、手続が柔軟で、費用も少なくて済むなど、様々な特長があります。
あっせん委員が紛争の当事者間に入り、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間における紛争の自主的解決を援助、促進する手続です。
調停委員会が紛争の当事者を仲介し、双方の互譲による合意に基づき紛争の解決を図る手続です。あっせんと似ていますが、調停委員会が積極的に当事者間に介入し、手続をリードする点が異なります。
委員3人から構成される調停委員会が、紛争当事者に出頭を求めて意見を聴くほか、必要に応じて現地の調査を行い、また参考人の陳述、鑑定人による鑑定を求めるなどにより、適切妥当な調停案を作成・提示するなど、合意が成立するように努めます。なお、調停手続は原則非公開とされています。
調停の結果当事者間に合意が成立した場合には、民法上の和解契約(民法第645条以下)と同一の効力を持ちます。
調停とは、委員3人から構成される調停委員会が、当事者の間に入って両者の話合いを積極的にリードし、双方の互譲に基づく合意によって紛争の解決を図る手続です。当事者の申請により、手続が開始されます。紛争の実情を明らかにし、当事者の互譲を図るため、調停手続は非公開とされ、これにより当事者が率直に意見を述べ合うことが可能になります。調停委員会は、事実関係や当事者の主張を基に意見調整を行い、適切妥当な調停案を作成・提示するなど、合意が成立するように努めます。調停委員会が作成した調停案の受諾を勧告することもあります。調停手続の結果、当事者間に合意が成立すれば、事件は終結します。当事者間に成立した合意には、民法上の和解契約と同一の効力があります。
<関連ページ>紛争の当事者双方が裁判所において裁判を受ける権利を放棄し、紛争の解決を仲裁機関である仲裁委員会に委ね、その判断に従うことを約束(仲裁契約)することによって紛争解決を図る手続です。
当事者間の紛争について裁定委員会が法律判断を行うことにより、紛争解決を図る手続です。裁定には、以下に示す、「(1)原因裁定」と「(2)責任裁定」の2種類があります。なお、裁定手続は都道府県にはなく、当委員会のみが持つ制度です。
手続においては、委員3人又は5人から構成される裁定委員会が、申請人からの申請に基づき、公開の期日を開いて当事者に陳述させ、証拠調べや事実の調査などによって事実認定を行い、その認定した事実に基づいて裁定を行います。
裁定は、それだけで当事者の権利義務を確定するものではありませんが、明らかにされた因果関係の判断を基礎として、自主的な交渉や調停等の手段によって解決を図ることができます。
申請人が主張する加害行為と被害発生との間の因果関係について裁定委員会が法律判断を行う手続。
損害賠償問題に関する紛争について、裁定委員会が損害賠償責任の有無及び賠償額の法律判断を行うことにより、紛争解決を図る手続。
裁定は、公害等調整委員会の委員3人又は5人から構成される裁定委員会が、公害紛争について法律判断を行うことにより、紛争の解決を図る手続です。裁定には、次の2種類があります。まず一つが、責任裁定で、損害賠償責任の有無及び賠償額について法律判断を行う手続です。もう一つが、原因裁定で、加害行為と被害との間の因果関係があるかどうかについて法律判断を行う手続です。裁定の手続は、申請に基づいて、裁定委員会が公開の期日を開いて当事者に陳述させ、証拠調べ、事実の調査などを行って事実を認定し、その認定した事実に基づいて裁定を行います。民事訴訟に準じた手続ですが、職権で証拠調べや事実の調査を行うことができるなどの特長があります。裁定の効力ですが、責任裁定は、裁定書の正本が当事者に送達された日から30日以内に裁定の対象となった損害賠償に関する訴えの提起がなかったときは、その損害賠償に関し、当事者間に当該責任裁定と同一の内容の合意が成立したものとみなされます。原因裁定は、因果関係について裁定委員会の判断を示すものであり、当事者の権利義務を確定するものではありません。