(2024年11月7日 05:00)
米大統領選は6日(日本時間)に開票が行われ、トランプ前大統領が勝利した。物価高と移民の急増、さらに中東情勢をめぐる現政権への有権者の不満が同氏の再選につながった。選挙戦は米国社会の分断の深まりを鮮明にした。米国の内向きの争いを歓迎するのは権威主義国だけで、トランプ氏の自国第一は米国ばかりか世界の分断も深めかねない。同氏が大統領に就く2025年は世界の不確実性が高まり、行方が憂慮される。
"ガラスの天井"は破られなかった。民主党のハリス氏は女性初の米大統領を目指したものの、現政権を支える副大統領という立場がむしろ弱点になったように映る。「4年前より生活は良くなったか」とのトランプ氏の訴えに、白人中間層らの支持が集まった。ただ前回の大統領選で結果を認めず、支持者の暴徒化をあおったトランプ氏の再選は、米国の民主主義の衰退を裏付けるものと懸念される。
トランプ氏が米大統領に返り咲くことで、世界の分断をさらに深めかねない。同氏は米国のウクライナ支援に懐疑的で、領土の一部をロシアに割譲した形で停戦となりかねない。武力による現状変更を認めれば、中国の台湾統一が勢い付き、国際秩序が脅かされる可能性がある。
トランプ氏は現政権よりイスラエル寄りとされ、中東情勢の一段の悪化も心配だ。パリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)から再離脱する可能性も拭えず、世界の分断がさらに深まる可能性に警戒したい。
トランプ氏が公約に掲げる保護主義や不法移民対策は、米国のインフレを助長し、世界経済を減速させかねない。一律10―20%の関税を課す保護貿易は輸入物価を上昇させ、移民制限は米国の人件費を高騰させる。トランプ氏がドル安誘導のため米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを阻めば、物価はますます高騰する。物価高と景気後退が同時進行するスタグフレーションも絵空事ではない。
米国と世界の分断、さらに世界経済の不確実性にいかに向き合うか、困難な課題を抱えつつ迎える25年、懸念は尽きない。
(2024年11月7日 05:00)
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