PM2.5削減とCO2濃度増加により地球温暖化は急拡大することを解明
— 大気汚染物質・温室効果ガス両者の排出量同時削減が必須 — 2020年12月10日地球温暖化対策の国際的枠組であるパリ協定が2020年から実質的に始動しており、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの大幅な排出量削減が求められています。また、新興国や途上国では大気汚染が深刻な状況であり、世界全体で年間約700万人が大気汚染を原因として死亡していると推計されています。一方で、人間活動により排出されるPM2.5の主要物質である硫酸塩エアロゾルには大気を冷却する効果があるため、PM2.5は温室効果ガスによる地球温暖化をいくらか抑えてきたことがわかっています。
九州大学応用力学研究所の竹村俊彦主幹教授は、自ら開発したエアロゾル(微粒子)による気候変化を計算できるソフトウェアMIROC-SPRINTARSを利用して、近い将来に想定される硫酸塩エアロゾル濃度の低下に伴う気温上昇について予測しました。その結果、同量の硫酸塩エアロゾル濃度の低下であっても、それに伴う気温上昇は、CO2濃度が高い状態の方が大きくなることを明らかにしました。このことは、大気汚染対策の観点からPM2.5濃度を下げる場合、同時に温室効果ガスの濃度上昇を抑制しなければ、地球温暖化が加速度的に進行することを示しています。なお、本研究で利用したSPRINTARSは、多くの報道機関が日々利用しているPM2.5予測情報を提供するソフトウェアとして知られています。
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究S(JP19H05669)及び環境再生保全機構環境研究総合推進費(JPMEERF20202F01)の助成を受けました。
本研究成果は、国際学術誌「Scientific Reports」に2020年12月10日付で掲載されました。
図:MIROC-SPRINTARSにより予測された人間活動起源硫酸塩エアロゾルを現在の濃度からゼロにした場合の年平均地上気温変化
(左) CO2濃度を2000年レベルに設定
(右) CO2排出量が現在の比率で増加を続けた場合の2080年のCO2濃度レベルに設定
CO2濃度が高い状態で人間活動起源の硫酸塩エアロゾルを減少させると、特に北半球中高緯度の気温上昇が非常に大きくなってしまうことを示している。
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