玄海原子力発電所における気体廃棄物の放出量の誤りについて
発生日
2020年4月9日
発電所
九州電力 玄海原子力発電所
内容
事象
玄海原子力発電所内に原子炉施設本体とは別施設として設置している雑固体焼却設備(以下、雑固体焼却炉)及び燃焼式雑固体廃棄物減容処理設備(以下、高温焼却炉)について、それぞれの排気筒から放出している気体廃棄物の放出量を誤って算定しており、運用開始からこれまでの間、国及び関係自治体へ定期的にご報告してきた、放出量の一部の数値に誤りがあることを確認しました。
また、周辺公衆への影響につきましては、発電所からの総放出量(原子炉設本体及び焼却炉等それぞれの放出量の合計値)により評価しており、今回の誤りによるその評価への影響はないことを確認しました。
【算定に係る誤りの内容】
排気筒からの放出量は次式で算定しており、雑固体焼却炉及び高温焼却炉の排気量について、排気筒に繋がる全てのファンの風量を考慮すべきところ、一部のファンの風量を考慮していなかったため、放出量を誤って算定していました。
気体廃棄物の放出量[Bq]=排気筒での測定濃度[Bq/cm3×ばつ排気量[cm3]
【報告値の訂正】
報告項目としては、全希ガス放出量、よう素放出量、全粒子状物質放出量、トリチウム(注1)放出量がありますが、トリチウム放出量以外は、もともと測定濃度が検出限界値(注2)未満であり、放出なしと評価されることから、トリチウムについてのみ訂正が必要となります。
なお、2018年度について、両焼却炉からのトリチウム放出量の訂正値を用いても、トリチウムの発電所からの総放出量に変更はありません。
(注1)トリチウムが放出する放射線は、低エネルギーのβ線で被服や皮膚を透過しないため被ばくの影響は小さい。また、体内に取り込まれたとしても、汗や尿により排泄されるため、他の放射性物質と比べて健康影響は小さい。
(注2)検出限界値は、測定において検出できる最小値のこと。
調査結果
雑固体焼却炉及び高温焼却炉排気筒(焼却炉排気系)からの放出量の算定にあたっては、放射線管理システムを使用しており、保存している当時の設計資料等の調査を行い、以下の事項を確認しました。
(1)排気量は、ファン容量の合計であるが、焼却炉排気の放射性物質を除去するフィルタを有する系統に設置されたファンのみ放射線管理システムに登録しており、その他のファンは登録していなかった。
(2)原子炉設置変更許可申請書の気体廃棄物処理系統説明図には、焼却炉排気の放射性物質を除去するフィルタを有する系統に設置されたファンを記載しており、放射線管理システムに登録しているファンと一致していた。
(3)放射線管理システムへの高温焼却炉のファンの登録にあたっては、当時、本店で運用管理をおこなっていた原子力管理部の放射線管理担当、及び設備設計をおこなっていた原子力建設部が関与しており、実際の運用を行う玄海原子力発電所をレビューの体制に含めていなかった。
原因
調査結果から、焼却炉排気筒からの気体廃棄物の放出量を放射線管理システムで算定するにあたり、排気量を求めるために焼却炉の出口ファン(放射性物質が流れ得る流路のファン)のみを登録したことを見過ごしていた原因は、同システムの設計を担当していた本店の原子力管理部や原子力建設部、運用を行う発電所の間で相互にチェックする機能が働かなかったことであると考えられます。
対策
原因を踏まえ、以下の再発防止対策を行います。
(1)対策(現在の仕組みで、既に対策が取られている事項)
- 「設計管理要領」において、レビューの目的を明確にしたうえで、関係する部門の様々な視点でレビューし、設計をおこなった者以外が検証を実施する。
- 「設計管理要領」において、設計に先立ち、設計から工事完了までの「設備導入の計画」を策定する。この中で設計、レビュー、検証に参加させる部門を予め定め、それに基づき設計を進めることで、具体的な設備情報を共有する。
- 「設計管理要領」において、設計開発のインプットを明確にする。また、社内規定の「調達管理要領」に従い、設計に必要な条件を調達先に提示する。
(2)更なる改善事項
本年4月から導入された新検査制度に伴い、様々な気付きを多様な視点で評価し改善につなげていく改善措置活動(以下、CAP)及び設備やシステムの実物と設計情報との整合を確認するコンフィギュレーション管理(以下、CM)の確実な運用により、保安活動の更なる改善を図っていきます。
- 社内関係者の様々な視点を活用して自社、他社で発生した事象を確認し、CAPの確実な運用を行うことにより、設計管理を含めた保安活動について自主的、継続的な改善を徹底する。
- CMを確実に運用することにより、設備やシステムについて、設計で要求したとおりの機能が設計要件を含めて維持されていることの確認を徹底する。
(3)教育等
社内関係者に本件について、以下の観点から教育を実施します。
- 放射線の評価値に直接関係しない値を取り扱う場合でも、その値の根拠及び間接的に関係する値を十分に理解・確認して業務を行うよう周知徹底を図る。
- 関係者間相互のコミュニケーションの重要性について周知徹底を図るとともに、国や関係自治体へ報告する放射線等の値が、地域の皆さまの安心に直結していることの重要性についても、再認識を図る。
- 原子力発電所の安全性及び信頼性向上において、本店、玄海及び川内原子力発電所間のコミュニケーションは重要な礎であり、更に強固なコミュニケーションの醸成について継続的に取り組んでいく。
以上