3.地域振興・支援
地域経済活性化の取組みの方向性
当社は、「地域経済の発展と地域との信頼関係が事業活動の基盤である」という考えのもと、地域・社会共生活動の一環として地域経済の活性化に向けて取り組んできた。近年、九州においては、全県ともに人口減少や産業停滞といった課題を抱えており、また、これらの課題はエネルギー需要の減少に直結する。そのため、当社は地域の課題解決を目的として、産学官で連携して行う地域プロジェクト等に対し、当社のノウハウや知見等を活用し積極的な協力をおこなってきた。具体的には、自治体等との協働により、まちづくりや商店街の活性化支援、陶磁器等の伝統工芸産業支援、ダム等の電力インフラを活用したインフラツーリズムなどを実施した。
2022年からは、経営上の重要課題として特定したマテリアリティ「スマートで活力ある社会の共創」における主要課題の一つ「地域の活性化」に繋がる取組みとして、地域の皆さまや産学官と連携し、地域社会の課題を解決していくことで、持続可能なコミュニティの創造に挑戦していくこととしている。
自治体や地域の皆さま等との連携強化
自治体等との包括提携協定の締結
2018年以降、当社は、自治体や金融機関等と「安全安心なまちづくり」や「活力と魅力のあふれるまちづくり」等に関する包括連携協定を締結し、各地域が抱える課題の解決や持続可能なまちづくりを推進している。具体的には、当社グループの経営資源や商品・サービスを活用し、災害時の早期復旧のための体制整備や避難所に必要な設備・備蓄品等の機能強化、地域の観光資源を活用した産業振興、住民の学びやコミュニケーション機会の創出等に取り組んでいる。
2023年3月現在、56の自治体や金融機関等と地域課題の解決やまちづくりに関する包括連携協定を締結しており、協定を通じ、九州地域の社会的課題の解決、持続可能な発展に貢献していくこととしている。
Qでん にぎわい創業プロジェクト
九州地域においては、人口減少や少子高齢化、都市部への一極集中により、社会的・経済的な地域格差が拡大し、地域経済の衰退など様々な課題が深刻化しつつある。そこで、地域の皆さまと協働し、継続性のあるビジネスモデルを構築することで、地域の課題解決に貢献する「Qでん にぎわい創業プロジェクト」を、2019年7月24日に開始した。
本プロジェクトは、持続的に地域の活性化を図っていくことを目的に、「地場産業振興」「商店街活性化」「交流人口拡大」をテーマに、地域の皆さまと一緒に知恵を絞り、持続可能な地域課題解決ビジネスを企画し共同で実行していくものである。2019年度は、事業パートナーとなる地域の団体を公募した結果、37団体からの応募があり、社外有識者による選考委員会を経て、長崎県東彼杵町・熊本県人吉市の2団体を選定し、2022年度は10団体から福岡県新宮町相島の1団体を選定した。2020年10月にはプロジェクトにおける事業主体となる「一般社団法人 九電にぎわい創業カンパニー」を設立し、取組みをおこなっている。
長崎県東彼杵郡東彼杵町
2019年12月13日、「一般社団法人 東彼杵ひとこともの公社」と協業し、長崎県東彼杵町で事業化検討を開始し、2020年11月11日に交流人口拡大を目的とした物産品販売事業と、関係・定住人口の創出に向けた地域の方と観光客が集う交流拠点の整備・運営事業の事業化を決定した。2021年2月から開始した物産品販売事業では、東彼杵町の特産品である「そのぎ茶」に合うお茶菓子として「くじら最中」や、移動販売車「CHANOKO号」で提供するくじらの形をした回転焼「くじら焼」を開発・販売し、各地で東彼杵町のPRをおこなっている。交流拠点整備事業では、町内外の人が集い、観光や移住のきっかけをつくる拠点「uminoわ」を2022年2月にオープンし、「そのぎ茶」を急須で淹れて愉しめるカフェの運営や東彼杵町の「ひと」「もの」「こと」の情報発信をおこなっている。
熊本県人吉市
2019年12月23日、協業先となる「一般社団法人 ドットリバー」と覚書を締結し、熊本県人吉市で事業化検討を開始した。当プロジェクトでは、人が集い、地域内外の人々が交流する中心市街地創りに向けて、地域の特産品である味噌や甘酒等の発酵食品を活用したにぎわい拠点創りを検討した。しかし、2020年7月の豪雨により事業の拠点としていた中心市街地が甚大な被害を受けたことにより事業化検討は終了し、人吉市の復興に関わっていくこととしている。
福岡県糟屋郡新宮町相島
2021年4月8日、福岡県糟屋郡新宮町相島の「相島活性化協議会」と共同でビジネスプランの検討を開始し、2021年11月22日、事業化を決定。本プロジェクトの事業化決定は、長崎県東彼杵郡東彼杵町での事業開始に続く2例目。相島の住民との対話を通じて把握した課題やニーズを踏まえ、「10年後のありたい姿」を策定。取組みの「担い手不足」という課題の解決に向けて、3つの対策(産業創出、暮らし、移住者)に、三位一体(相島、新宮町、当社)で取り組み、関係人口・定住人口の創出を目指す。その中でも、特に「産業創出」に寄与する取組みとして、魚の加工食品事業を進めることとしており、2023年1月から、玄界灘の旬な魚を使用した「棒ずし」の製造・販売を開始している。
地域や自然災害の被災地等への支援活動
「熊本復興応援カタログ」による熊本県産品販売支援
2017年2月17日、当社は、2016年4月に発生した熊本地震復興支援の取組みの一環として、熊本県産品を集めたカタログを作成し、当社グループ会社及び全国の電力会社へ広く購入斡旋をおこなった。熊本県では「創造的復興」へ向け、官民一体となった取組みを進めており、被災した生産者や事業者の自立的再建に向け、引き続き支援が必要な状況を踏まえ、熊本県及び日本震災復興支援機構と協働し、熊本県産品の販売支援を実施したものである。掲載商品は、地震により甚大な被害を受けた地域(益城町、阿蘇地域等)の商品、販路の喪失など間接的な影響が続く中小規模事業者の商品を中心とした熊本県産品29品で、約2,000万円の売上げであった。2017年7月10日、売上金の一部を熊本県へ寄附した。
このほか、2017年7月の九州北部豪雨や2020年7月の豪雨等の自然災害により被災した地域の復興に向けて、観光物産イベントの開催や地域産品の販売斡旋など様々な取組みを実施した。
新型コロナウイルス感染症に伴う支援活動「あしたプロジェクト」
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響による地域の様々なお困りごとの支援に取り組む「あしたプロジェクト〜あしたを、しんじて、たすけあおう〜」の一環として、九州の事業者や生産者の支援活動をおこなった。
具体的には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出自粛や飲食店の休業等により消費が落ち込んだ九州各県の特産品を当社グループの公式Facebookで紹介したほか、社員向けの販売斡旋もおこなった。また、行事やイベント等の中止・縮小により需要が落ち込み大量の廃棄が発生した生花を社員向けに販売するなど、これまで経験したことのない地域課題に対しても、積極的な取組みを実施した。