1.環境経営の推進
環境方針と環境マネジメント
九州電力は、事業活動に伴いCO2などの環境負荷を発生している事業者として、地球温暖化防止をはじめとする環境保全に真摯に取り組んでいく責務があると深く認識しており、環境保全を経営の重点課題として位置づけ、事業活動全般にわたって、事業活動と環境を両立する「環境経営」を九州電力グループ一体となって推進している。
九州電力グループ環境憲章
環境活動の心構えや方向性を明確に示すものとして、2001年2月、「九州電力環境憲章」を制定、グループ会社においても、2002年5月、「九電グループ環境理念」および「九電グループ環境方針」を制定した。
また、2004年4月には、九州電力がグループ全体の事業活動を通して環境活動を推進していく姿勢を表すものとして、社内公募により、「環境活動シンボルマーク」を制定した。このシンボルマークは、九州電力グループが取り組む4つの事業領域(環境にやさしいエネルギー事業、情報通信事業、環境・リサイクル事業および生活サービス事業)を四つ葉のクローバーでデザインしたもので、クローバーの茎は、energy、ecologyなどの「e」を意味したものである。
なお、京都議定書第一約束期間が2008年から始まるなど、エネルギー・環境問題をめぐる情勢が大きく変化し、企業の環境保全への取組みがより一層重要性を増してきた状況をふまえ、九州電力グループ一体となって環境経営に取り組んでいく姿勢を明確に示す観点から、2008年4月、「九州電力環境憲章」と「九電グループ環境理念」、「九電グループ環境方針」を統合し、新たに「九州電力グループ環境憲章」を制定した。(「九州電力グループ環境憲章」は、2018年に「九電グループ環境憲章」に改称。)
環境行動計画と環境報告書
環境行動計画
九州電力では、環境経営を推進するために全社員が取り組む環境活動計画として、社会情勢やステークホルダーニーズの変化および前年度の活動に対する社内外評価などを総合的にふまえ、毎年度「九州電力環境アクションプラン」を策定し、その確実かつ的確な展開に向けて継続的に取り組んできた。
また、グループ会社においても、2003年から、「九電グループ環境活動計画」を毎年度策定し、九州電力グループ一体となった環境経営の着実な推進に取り組んできた。
2010年、「九州電力グループ環境憲章」の制定をふまえ、「九州電力環境アクションプラン」を「九州電力グループ環境アクションプラン」へ改称し、「九電グループ環境活動計画」を「グループ会社における取組み」としてこの中に統合した。
2016年、COP21(「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)第21回締約国会議」)で採択されたパリ協定が発効し、低炭素社会の実現を志向する世界的な潮流の中、お客さまや株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまから、財務面のみならず、ESG(環境、社会、企業統治)等の視点を重視する企業に大きな期待が寄せられることとなった。
電力・ガス小売全面自由化により市場競争が激化する中、こうしたステークホルダーの皆さまの環境配慮志向に的確にお応えするために、2017年度に環境行動計画の大幅な見直しをおこなった。具体的には、2018年度以降に九州電力が重点的に対応すべき「重点取組項目」を特定し、会社全体での目標設定と具体的な行動計画の策定を実施するなど、環境経営の更なる効率化及び実効性の向上を図った。(この見直しに合わせ、2018年度から「九州電力グループ環境アクションプラン」を「九電グループ環境行動計画」へ改称。)
環境報告書
事業活動にともなって発生する環境影響とその低減への取組状況を多くの方々に知っていただくことが、企業としての社会的責任であり、環境活動を推進するうえで重要であると考え、環境活動への取組状況を「環境アクションレポート」として取りまとめ、公表してきた。
2005年に発行したレポートは、電力会社として初めて「環境報告書賞 最優秀賞」(東洋経済新報社、グリーンリポーティングフォーラム共催)を受賞。さらに、2008年に発行したレポートは「環境報告書賞 優良賞」(同)と「環境コミュニケーション大賞 環境報告優秀賞」(環境省、地球・人間環境フォーラム共催)をダブル受賞し、こちらも電力会社としては初めてのことであった。
その後も、2009年に発行したレポートが「環境報告書賞 優良賞」、2018年に発行したレポートが「環境コミュニケーション大賞 優良賞」をそれぞれ受賞するなど、九州電力の環境活動及びわかりやすく丁寧な環境情報の開示に対し高い評価をいただいた。(2019年度からは、持続可能な社会の実現に向けた道筋をより明確にお示しするために「環境報告書」と「CSR報告書」を統合し、「サステナビリティ報告書」を発行。)
第27回地球環境大賞の「経済産業大臣賞」(注)を受賞
2018年、フジサンケイグループが主催する第27回地球環境大賞の「経済産業大臣賞」を受賞した。九州電力の "地熱や水力を中心とした再生可能エネルギーの積極的な開発"、"天候や時間により大きく変動する太陽光や風力により発電された電気を火力や揚水などの自社電源と最適に組み合わせた最大限の受入れ"、 "「くじゅう坊ガツル湿原一帯における野焼き活動」などの地域との協働による環境保全活動"が高く評価されたものである。
(注)「地球環境大賞」は世界自然保護基金(WWF)ジャパンの協力を得て創設された、日本の環境に関する表彰制度としては最も規模が大きくかつ権威と格式があるもの。
第30回地球環境大賞の「経済産業大臣賞」を受賞
2022年、フジサンケイグループが主催する第30回地球環境大賞の「経済産業大臣賞」を受賞した。本賞の受賞は、第27回(2018年)に続き2度目。九州電力の "水力、地熱、風力などの「再生可能エネルギーの積極的な開発」"、"既存送変電設備容量の最大限の活用などによる「再生可能エネルギーの受け入れ」"、"社有車100%EV化への取組みやEVシェアリングサービスの展開などの「EVの活用・普及促進」"、"米国地熱技術サービス提供会社の買収による海外での案件開発・運営体制の強化などを通じた「海外における持続可能な社会づくりへの貢献」"、"地域との協働による環境保全活動などの「生物多様性の保全」"が高く評価されたものである。
第19回LCA日本フォーラム表彰「奨励賞」を受賞
2022年、LCA日本フォーラムが主催する第19回LCA日本フォーラム表彰の「奨励賞」を受賞した。本賞の受賞は、今回が初めて。"電力事業者として温室効果ガスの基礎排出係数約50%低減(2013年度比)による、九州地域のCO2排出削減に大きな効果を及ぼしていること"、"2030年の環境目標を大幅に引き上げて意欲的な活動を加速する九電グループの積極的な姿勢"が高く評価されたものである。
環境経営推進体制
環境委員会、グループ環境経営推進部会、環境顧問会
九州電力は、地球環境問題に関する事項を審議・調整するため、1990年5月に「地球環境問題検討委員会」を設置し、環境問題に対して的確かつ自主的な対応を図ってきたが、環境経営の一環として、経営資源の活用を含む全社の環境活動戦略を審議・調整するための委員会とするため、2001年4月、「環境委員会」へ組織の見直しをおこなった。取締役が委員長を務める環境委員会において、環境活動の推進に向けた取組み等の改善・充実を図っている。
また、すべての事業所に、環境活動の指導・管理を行う「環境管理責任者」を2004年3月までに設置するとともに、グループ会社においても、2001年8月に「グループ会社環境経営推進協議会」(2002年5月グループ環境経営推進部会に改称)を設置するなど、九州電力グループ一体となった環境経営を着実に推進していく体制を構築した。
九州電力グループの環境経営に対する外部評価機関として、2001年4月、「九州電力環境顧問会」を設置した(〜2018年まで)。九州各県・各界の社外有識者に環境顧問会委員を委嘱し、九州電力の環境への取組みについて様々なご意見をいただいた。
環境マネジメントシステム(EMS)
九州電力は、2002年7月までに、事業形態ごとに選定した6つのモデル事業所でISO14001規格の認証を取得し、2004年3月、これに準拠した環境マネジメントシステム(EMS)をすべての事業所で構築、EMSを活用した環境管理を継続してきた。しかし、認証取得から10年以上が経過し、環境への取組みと管理は、全社において定着し、環境経営に関する意識が着実に社員に浸透したため、2012年度にEMSの見直しを実施した。
2013年度からは、環境アクションプラン(現 九電グループ環境行動計画)に基づく活動を事業所の業務計画に織込んで、PDCAサイクルを廻す取組みを推進している。
「九電グループ カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」に関する取組み
ゼロカーボンチャレンジ宣言
同アクションプランに掲げた取組みの一環で、カーボンニュートラルに向けた機運醸成への貢献を目的とした「ゼロカーボンチャレンジ宣言」を2022年度から開始した。本取組みでは、九電グループの社員が家庭等での省エネルギー・電化の取組みについて宣言し、この宣言に基づく実際の取組みの様子をホームページやSNSなどを通じて地域・社会の皆さまへ広く発信。2022年6月に決定したキャッチフレーズ「ゼロの先へ。今日の私が変える未来」の下、労使一体となって取り組んでいる。
福岡県久山町での「森林資源を活用したJ-クレジット創出・活用事業」
「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」の具体化に向けた取組みの一つとして、九州の豊かな森林を脱炭素に役立てようと、「森林資源を活用したJ-クレジット創出・活用事業」を展開している。具体的には、自治体等で適切に管理された森林のCO2吸収量の価値を「J-クレジット」として顕在化し、企業等のカーボンオフセットに活用する取組みを推進している。2021年6月から福岡県久山町と協働し、町有林からのJ-クレジット創出の実証事業を開始。その他、森林が豊富な地域を中心に事業提案活動を行っている。