1.サステナビリティの取組み
CSRの取組み
CSR元年とされる2003年以降、企業の社会的責任に対する社会からの関心が急速に高まった。それに伴い、ステークホルダーに対しては、「法令遵守(コンプライアンス)」のみならず「企業活動全般」において責任ある行動が求められるようになり、企業経営の基本理念はもとより、実際の業務、さらには社員の一つひとつの行動まで、CSR意識の徹底が求められるようになった。
まず、2004年度に、九電グループ一体となってCSRへ取り組む姿勢を明確に示した「九州電力グループ行動憲章」を制定した。また、体制面では、2005年度にCSR担当役員を任命するとともに、社長を委員長とする「CSR推進会議」を設置した。
2005年度第1回CSR推進会議では、次年度よりCSR行動計画を策定するとともに、同計画に基づく取組みを「CSR報告書」としてまとめ、ステークホルダーとのコミュニケーションツールとして活用すること、そこから得られたステークホルダーの声を次年度のCSR行動計画に反映させていく「CSRマネジメントサイクル」を確立することを決定した。
なお、CSR推進会議については、2011年の「経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼びかけ等問題」を受けて設置された「信頼回復推進本部(2012年度から「信頼再構築推進本部」、2014年度から「信頼向上推進本部」に名称変更)」が、2013年度から2016年度までその役割を担った。
2016年度には、ステークホルダーの期待・要請に応え、地域・社会の課題解決に貢献するというCSR経営の姿勢をより明確に示すため、「九州電力グループ行動憲章」を「九州電力グループCSR憲章」として、そして2018年度には、SDGsへの取組み姿勢などについても明確に示した「九電グループCSR憲章」として見直しをおこなった。
また、2019年4月には、SDGsなどから幅広く抽出した社会的課題のうち、ステークホルダーからの期待が特に高い14項目を当社グループが優先して取組む「CSR重要課題」として特定し、その解決に向けて、グループの強みを活かした取組みを進めることとした。
サステナビリティ経営の推進
2021年7月には、気候変動をはじめとする地球規模での社会課題が深刻化する中、こうした課題解決に積極的に貢献していくことが極めて重要であるとの考えのもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)課題全般への取組みを強化するため、「サステナビリティ推進委員会」を設置するなど、サステナビリティ経営に係るマネジメント体制を整備した。
同年12月には、事業を通じて「社会価値」と「経済価値」の双方を創出し、サステナブルな社会への貢献と九電グループの企業価値向上を目指すという姿勢を、より一層明確化するという観点から、「九電グループサステナビリティ基本方針」を制定した。
2022年4月には、マテリアリティ(経営上の重要課題)を特定し、その解決に向けた取組みを着実に推進することで、持続可能な社会への実現と九電グループの中期的な成長を実現していくこととした。
CSR報告書から統合報告書へ
CSR報告書は、経済・環境・社会のトリプルボトムラインに関する課題とその背景や、公表しないとお客さまや社会にとって不利益となる情報などを含めた企業活動全般を社会に対し誠実に報告するものと位置づけた。
2006年6月に初めて発行したこの報告書は、「第10回環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞」(東洋経済新報社、グリーンリポーティング・フォーラム共催)において「サステナビリティ報告書賞優良賞」を受賞した。
以降、CSR報告書は毎年発行し、各種懇談会や対話訪問活動をはじめとするステークホルダーとのコミュニケーションツールとしても活用するとともに、寄せられた意見などを次年度のCSR行動計画や報告媒体の改善などに反映させるほか、社員のCSRに対する理解促進や意識醸成にも活用してきた。
2010年代半ばより、2015年の国連における「持続可能な開発目標(SDGs)の採択やESG投資の広がりなど、地球規模で社会的課題に対する関心が急速に高まり、企業に対しても、課題解決の主体としての役割が強く期待されるようになった。これを受け、2018年6月に発行した「CSR報告書2018」では、当社グループの取組みとSDGsとの対応関係を明示するとともに、2019年度には、「持続可能(サステナブル)な社会の実現」に貢献する姿勢を社内外に訴求していくため、SDGsなどから幅広く抽出した社会的課題から特定した「CSR重要課題」の解決に向けた取組みを中心に掲載し、名称も「サステナビリティ報告書」に変更した。2021年度からは、従来発行していた「アニュアルレポート」と「サステナビリティ報告書」の財務・非財務情報を統合し、中期的なビジョン・戦略や主要施策等を一貫性あるストーリーとしてご報告するため、「統合報告書」としての発行を開始した。