2.信頼向上に向けた取組み
企業活動の透明化や組織風土の改善等に向けた取組みについて
2011年6月に経済産業省主催で開催された「放送フォーラムin佐賀県『しっかり聞きたい、玄海原発』〜玄海原子力発電所 緊急安全対策 県民説明番組〜」において、当社社員が社内及び協力会社等に対して、原子力発電所の発電再開に賛成するインターネット上での意見投稿を要請していたことが判明し、社会から厳しい批判を受けた。
その後、同番組における事実関係に加え、過去の原子力発電に関するシンポジウム等における同様の働きかけの有無についても調査したところ、国や県が開催した公開討論会等計3件においても自主的発言の呼びかけ等がなされていたことが判明した。これを受け、同年7月に社外有識者で構成する「第三者委員会」を設置し、より中立的な立場から詳細な事実関係を調査するとともに再発防止に向けての根本原因の分析等をおこなった。
「第三者委員会」から受領した最終報告書においては、福島第一原子力発電所事故以降、より高い倫理観、透明性の高い事業運営を行うことが求められる中、その環境変化に適応できなかったところに本質的な問題がある旨を指摘された。これを真摯に受け止め、社長を本部長とする「信頼回復推進本部(同年7月設置)」を推進役として、「企業活動の透明化」「マネジメント機能や組織風土の改善」「コンプライアンスの推進や危機管理体制の再構築」に向けた施策に取り組んだ。
「企業活動の透明化」に向けては、経営トップ層が当社の方針や事業活動について消費者団体やオピニオンリーダー等と意見交換を行う「お客さまとの対話の会(2012年3月開始)」をはじめ、あらゆる機会を活用してフェイス・トゥ・フェイスでお客さまの声をお聴きする「お客さま対話活動」を全社展開するとともに、同年7月には、原子力発電本部と火力発電本部の統合による多様な視点の確保と業務運営の一層の透明性向上を目的とした「発電本部の設置」、地域における情報ニーズを踏まえたより的確な情報公開を目的とした「原子力コミュニケーション本部の設置」、9月には、原子力の業務運営における一層の透明性確保を目的とした「原子力の業務運営に係る点検・助言委員会(社外有識者を中心に構成)の設置」等を実施した。このほか、「九州電力グループ行動憲章」や「コンプライアンス行動指針」において、「企業活動の透明性を確保し、自治体との健全な関係を構築する」という方針を明確にし、自治体の首長等との関係において疑念を生じさせる行為を行わないよう従業員への周知徹底も図った。
「マネジメント機能や組織風土の改善」に向けては、2011年7月に、従業員の努力・成長や意欲を引き出すことを目的とした「人事処遇制度の見直し」を行うとともに、経営幹部層のマネジメント能力強化を目的とした「他部門での業務経験やグループ会社等の要職経験を積ませる異動・配置」、経営幹部層の意識改革や行動変革を促すことを目的とした「経営幹部研修」も開始した。また、組織風土・体質の改善を目的とした「部門・機関を越えた意見交換・対話」も全社で展開し、会社を変えていくためのアイディアを活発に議論する機会を創出する等、全社一体となって組織風土改革と業務改革に取り組んだ。
「コンプライアンスの推進や危機管理体制の再構築」に向けては、2012年7月に、コンプライアンス推進体制の強化を目的とした「コンプライアンス委員会の機能強化(社会的影響の大きい不祥事発生時における社外委員からの助言等)」や「コンプライアンス所管部門の一元化及び全支社へのコンプライアンス担当職位の設置」を行うとともに、様々な危機への迅速・的確な対応や危機の予見・未然防止を図ることを目的とした「危機管理体制の見直し(危機管理官の設置、リスク・危機管理対策会議の設置、社外専門家による総合的な支援体制の整備等)」等にも取り組んだ。
企業活動の透明化や組織風土の改善等に向けた取組みを推進した「信頼回復推進本部」は、様々な環境変化を踏まえてお客さまや地域の思い・ニーズに照らし合わせた新たな信頼関係を「再構築」するという考えのもと、2012年度に「信頼再構築推進本部」に名称を変更し、2013年度からは、同本部会議がCSR推進会議の役割も担うこととした。また、2014年度には、電力小売全面自由化を見据え、信頼関係の更なる向上に向けた取組みを推進する「信頼向上推進本部」に名称を変更した。そして、2017年度には、信頼失墜の防止に留まらず、社会の期待に応え、地域・社会の課題解決に貢献するCSRへの取組み姿勢を打ち出すため、「信頼向上推進本部」会議を従来のCSR推進会議に戻し、「CSR経営の徹底」を推進していくこととした。2021年7月から、「サステナビリティ推進委員会」等によるサステナビリティ経営に係るマネジメント体制のもと、信頼向上の取組みを推進していくこととしている。