2.「九電グループ経営ビジョン2030」の策定
策定の背景
九電グループを取り巻く経営環境は、2016年4月の電力小売全面自由化、2017年4月のガス小売全面自由化が開始されたことに加え、2020年4月には送配電部門の分社化(法的分離)が予定されるなど、大きな転換期を迎えていた。
世界に目を向けると、経済・社会・環境問題などの地球規模の社会的課題の解決を通じて全ての人々にとって、より良い世界・未来を創り、次世代へ繋げていこうというESG投資や国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)など、サステナビリティへの関心が高まっており、これらを実現するため、企業への期待も大きくなっていた。また、国内においては、人口減少や少子高齢化の進行に加え、都市部への一極集中により、社会的・経済的な地域格差が拡大するなど、様々な課題が深刻化しつつあった。一方、IoTやAIなどの技術の進展は、業務効率化だけでなく、これまでにないビジネスモデルや価値の創造に繋がるものであり、お客さま・社会へ新たな価値をお届けできると考えられた。
こうした中、九州が保有するポテンシャルを活かした地域・社会の持続的発展に向けて、九電グループがどういった貢献ができるかを示し、地域とともに発展・成長していく姿勢を発信することとした。
「九電グループ経営ビジョン2030」の策定
2015年4月に策定した「九州電力グループ中期経営方針」のもと事業活動を進める中、2019年度はこれまでの中期経営方針の対象期間(2015〜2019年度)の最終年度となること、原子力発電所4基体制や松浦火力発電所2号機の運開等により「守り」から「攻め」の経営に移るチャンスであったこと、また、2020年4月には送配電会社が設立されるなどグループ経営としても極めて重要な年であったこと等から、2019年6月に、これまでの「中期経営方針」を見直し、長期的に目指す姿により重点をおいた「九電グループ経営ビジョン2030」を策定した。
なお、経営ビジョンの対象期間については、2030年は国が定めている第5次エネルギー基本計画に掲げるエネルギーミックスやSDGsなど社会的に重要な指標が設定されていること、技術革新などにより社会のあり方が大きく変化する中において、2030年より先を想定することは現実的でないこと等を踏まえ、2030年までの10年とした。
「2030年のありたい姿」と「ありたい姿実現に向けた戦略」
経営ビジョンでは、「2030年のありたい姿」として「『九州から未来を創る九電グループ』 -豊かさと快適さで、お客さまの一番に-」を掲げた。このありたい姿には、「豊かで快適な生活につながるエネルギーサービスや新たな価値の提供を通じて、お客さまの一番になる」「九州を基盤に、さまざまな社会的課題の解決に貢献し、地域・社会とともに明るい未来を創っていく。そして九州から世界に広げていく」という思いを込めている。
また、経営ビジョンの策定にあたっては、10年程度先の未来を見据え、当社グループが保有する技術やノウハウなどの強み、今後深刻化していくと予想される社会的課題、電力システム改革の動向、テクノロジーの進化がもたらす社会の変化や新たな事業機会、将来の社会が抱える課題やお客さまのニーズなど、当社グループを取り巻く経営環境の分析をおこなった。
こうした環境認識のもと、「2030年のありたい姿」を実現するためには、「当社グループの中核を担うエネルギーサービス事業を進化させ、より豊かでより快適な生活をお客さまにお届けし続けること」、「地域社会が抱える様々な課題の解決に繋がるものであれば、あらゆる事業領域に挑戦し、持続可能な社会の実現に貢献していくこと」、「こうした新たな挑戦を支えるために、経営基盤を更に強化すること」が必要と考え、「ありたい姿実現に向けた戦略」として「I エネルギーサービス事業の進化」「II 持続可能なコミュニティの共創」「III 経営基盤の強化」の3つを掲げた。
経営目標
経営ビジョンでは、「2030年のありたい姿」の実現に向けて、経営目標として「連結経常利益1,500億円(国内電気事業5割、その他5割)」、「総販売電力量1,200億kWh」、「九州のCO2削減量の70%(2,600万トン)の削減に貢献」、「トップレベルの電気料金の永続的な追求」の4つの目標を掲げた。