3.国際交流・コンサルティング・その他
これまで海外事業で築いた独自のネットワークを利用して、情報収集に努めるとともに、IPP事業で培った海外投資や海外設立会社の運営・管理のノウハウおよび経験を生かし、投資評価の段階への関与のみならず、プロジェクト参画後の運営・管理などを主体的におこなってきた。
一方で、1969年に韓国電力との交流協定を締結したことを契機に、2020年度時点で、海外10か国・13の電力会社などとの間で国際交流を実施している。また、国際貢献などを通じて九州電力の企業価値を高めることを目的として、国内の電気事業を通じて蓄積した経験、ノウハウおよび高い技術力を有する専門家を活用して、アジア諸国の工場における省エネルギーや火力発電所の熱効率改善などのコンサルティング事業も展開しており、これまでに23か国、83件の事業を受託している。
初の海外離島向け電化事業
2020年1月、フィリピン国のパラワン島及びセブ島においてパワーソース社が実施しているマイクログリッド事業に参画した。
パワーソース社は、フィリピン国エネルギー規制委員会から認定を受け、基幹送電系統に接続していない地域の電化事業に取り組んでおり、現在、パラワン島とセブ島の計7地点でディーゼル発電にて電力を供給、今後、太陽光発電設備の導入や更なる地点での開発を計画している。
本事業では、当社グループが持つ離島での電力供給と再生可能エネルギー導入の知見を活用し、パワーソース社が保有する発電所の運転・保守の改善や再生可能エネルギー導入等の技術支援を通じて、環境に優しいエネルギーによる電化の推進と同社の事業拡大に戦略的パートナーとして貢献していく。
キューバ国 電力セクターマスタープラン策定プロジェクトの受託
2020年3月、グループ会社の西日本技術開発、日本気象協会と共同で国際協力機構(JICA)より、海外コンサルティング案件として「キューバ国 再生可能エネルギーの開発に向けた電力セクターマスタープラン策定プロジェクト」を受託した。
キューバ政府及びキューバ電力公社は、2030年に再生可能エネルギー比率を24%(現状約5%、kWhベース)とする目標を掲げ、再エネ導入推進を図っている。
本調査では、再エネ導入を促進するため、キューバ全土における再エネポテンシャルの確認を行うとともに、既存の再エネ開発計画を検証し、再エネ導入に向けた電力セクターマスタープランを策定することとしている。
当社グループでは、これまでもキューバ国において再エネ導入及び電力供給改善に関する調査実績を積んでおり、同国関係機関と良好な関係を構築してきた。
本調査においても、当社の送配電部門が有する再エネ導入時の系統安定化の知見や、当社グループが九州で培ってきた再エネ導入に関する技術とノウハウを活用して、キューバ電力公社と共同で同国の再エネ導入促進と電力安定供給の両立に取り組んでいく。
ケニア国 IoT技術を活用したオルカリア地熱発電所の運営維持管理能力強化プロジェクトの受託
2020年4月、グループ会社の西日本技術開発と共同で、国際協力機構(JICA)より、海外コンサルティング案件として「ケニア国 IoT技術を活用したオルカリア地熱発電所の運営維持管理能力強化プロジェクト」を受託した。
ケニア国では、近年の気候変動及び干ばつにより主力である水力発電の稼働率が低下し、その不足分を火力発電で代替しているが、環境対策面等の観点から火力発電に替わる電源として地熱発電の開発が優先的に進められている。
本案件では、設備容量約60万kWと世界最大規模のオルカリア地熱発電所を運営するケニア発電公社に対し、IoT技術を活用した高い利用率での運転管理や発電原価を意識した低コストでの計画的な保修管理等の技能を提供することにより、同発電所の長期的な安定運転や経営改善に寄与していく。
米国サーモケム社の買収
2020年6月、九電グループであるキューデン・インターナショナルと西日本技術開発は、地熱技術サービスを提供する米国サーモケム社を買収した。
サーモケム社は、高度な地熱技術サービス、専門機器の製造販売・研究開発、及びコンサルティングサービスを提供しており、その高い技術力や製品開発力、並びに豊富な知見により世界各国の地熱発電の開発・運営者から高い知名度を得ている。また、当社が参画する世界最大級のインドネシア・サルーラ地熱IPPプロジェクトにおいても、井戸掘削工事中の流量測定や試験サービスなどの実施において大きな貢献を果たしている。
今回の買収により、これまで当社グループが培ってきた地熱発電の開発・運営に関する技術に、サーモケム社の高度な技術サービスが加わることで海外地熱開発・運営体制の強化につながり、地熱発電ビジネスの拡大及び地熱業界におけるプレゼンスの飛躍的な向上が期待される。
米国エナネット社への出資(マイクログリッド事業)
2020年9月、九電グループである株式会社キューデン・インターナショナルは、米国のベンチャー企業Enernet Global Inc.(以下、エナネット社)に出資を決定するとともに、同社と戦略的パートナーシップ契約を締結した。
エナネット社は、再生可能エネルギーや蓄電池等の分散型電源を組み合わせた最適な設備構成や運用等を短期間で立案できる自社開発のソフトウェアを活用し、ディーゼル発電を主に利用されているお客さま向けのマイクログリッド事業を展開している。同社は、主にアジア・オセアニア・カリブ海において、商工業分野の顧客を対象にスピーディーな案件開発をおこなっている。
今回のエナネット社との協業により、持続可能な社会の実現に向け、マイクログリッド事業の共同開発など同事業の取組みをより一層推進するとともに、ディーゼル発電の削減により環境負荷の低減に貢献していく。
アラブ首長国連邦 海底直流送電事業への参画
2021年8月、韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)と共同で、アラブ首長国連邦において、アブダビ国営石油会社(ADNOC)が実施した海底直流送電事業の事業権入札を経て、同年12月、ADNOCと送電契約を締結した。本事業は、九電グループ、KEPCO、EDFが、ADNOC及びアブダビ国営エネルギー会社(TAQA)と共同で特別目的会社を設立し、ADNOCが開発する沖合2箇所の石油・ガス生産基地向けに、本土から超高圧直流送電設備(海底ケーブル、直交変換所)を構築し、TAQAの電力系統を通じて供給されるクリーンで高効率の電力を35年間にわたり送電するもので、2025年の運用開始を予定している。UAEで開発が進むクリーンエネルギーを本土から送電することで、石油・ガス生産時の大幅なCO2排出量削減に貢献する。また、本事業は、UAE政府が公表したカーボン・ネットゼロ目標(Net Zero by 2050 Strategic Initiative)の取組みにも合致するもの。本事業は、九電グループとして初めての海外送電事業への参画であり、中東での電力事業への参画としては3件目となった。
自然・インターナショナルとの資本提携
2022年5月、福岡市の再生可能エネルギー開発事業者である自然電力のグループ会社として海外事業を担う自然・インターナショナルと資本提携を行うこととし、東南アジアを中心とした再生可能エネルギーの開発を共同で実施していくことについて合意した。自然・インターナショナルは、自然電力が日本国内で培った再生可能エネルギー開発の経験を活かし、東南アジアを中心として、太陽光、風力などの開発を積極的に進めている。今回の資本提携により、キューデン・インターナショナルは、自然・インターナショナルが保有する現地に根差したネットワークを活用し、同社と共同で将来の開発機会を検討するなど、再生可能エネルギー事業の拡大に取り組んでいく。
米国ベンチャー企業 パーシステント・エナジー社への出資
2022年6月、米国のベンチャー企業Persistent Energy Capital社への出資をおこなった。PE社は、アフリカ地域におけるカーボンニュートラルと経済発展の両立を実現するため、スタートアップ企業へ資本面・人財面でのサポートを行うベンチャー企業。PE社が出資する企業は、アフリカ地域におけるオフグリッド事業(太陽光システム等による未電化地域への電力供給)やe-モビリティ事業等を実施している。本件は九電グループ初のアフリカ地域への事業参画となった。急速な経済成長が進むアフリカ地域での事業機会の発掘を目指すとともに、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成をはじめとした持続可能な社会の実現への貢献を目指す。