1.電源多様化の取組み
エネルギーの長期安定確保、地球温暖化対策、及び経済的な電力供給の観点から、安全・安心の確保を前提とした原子力発電の推進、再生可能エネルギーの積極的な開発・導入、及び火力発電の高効率化等により、各種電源をバランス良く組み合わせた発電をおこなってきた。
原子力発電
原子力発電は、エネルギーセキュリティ面や地球温暖化対策面等で総合的に優れている。2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故を教訓とした国の新規制基準を踏まえ、重大事故を起こさないための対策や、万が一の重大事故に対処するための対策の強化を図り、安全・安定運転に万全を期してきた。一方で、玄海原子力発電所1号機(55.9万kW)と2号機(55.9万kW)については、出力規模や再稼働した場合の残存運転期間などを総合的に勘案し、廃止した。(1号機:2015年4月廃止 2号機:2019年4月廃止)
水力・地熱発電
水力・地熱発電は重要な低炭素の国産エネルギー源であることから、技術面、経済性、立地環境などを総合的に勘案し、地域との共生を図りながら開発に取り組んできた。
揚水発電は、負荷追従性に優れ、起動停止が迅速に行えることから、ピーク時および緊急時対応用の電源として開発し、小丸川発電所(30万kW×ばつ4台)は2010年度までに3台が運転開始し、残り1台も2011年7月に運転を開始した。現在は、昼間の太陽光で発電した余剰電力を利用して揚水を行うなど、再エネの導入拡大にも貢献している。
地熱発電では、従来の地熱発電方式で利用することができない低温地熱エネルギーが利用可能なバイナリー発電に取り組んでいる。また、国内初の事業用地熱発電所である大岳発電所の発電設備を更新した。
太陽光・風力発電・バイオマス発電
太陽光・風力・バイオマス発電については、グループ会社である九電みらいエナジーを主体として積極的な開発に取り組んでいる。
風力発電については、長期安定的かつ経済的な風力発電が可能な有望地点において周辺環境との調和も考慮した上で開発しており、近年は陸上風力だけでなく洋上風力の開発にも取り組んでいる。
太陽光発電については、発電所跡地等の遊休地を活用したメガソーラー発電事業に取り組んでおり、近年は九州内だけでなく九州域外においても開発に取り組んでいる。
バイオマス発電については、鶏糞、木材等を燃料とした発電事業に取り組んでいる。燃やしてもCO2の増減に影響を与えないことから、グループ会社による開発や他発電所からの電力購入を通じて普及促進に努めている。
火力発電
石炭火力発電は、安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源であることから、高効率化により環境負荷を低減する技術を導入しながら開発を進め、2019年には最新鋭技術である超々臨界圧発電(UCS)を採用した松浦発電所2号機(100万kW)が12月に運転を開始した。また、LNG火力のみならず石炭火力についても、太陽光供給力の多い昼間帯においては出力を抑制した上で、太陽光供給力の減少に合わせて出力を増加させるなど、調整機能を最大限活用することで、揚水発電と同様、再エネの導入拡大に貢献している。
LNG火力発電については、燃料調達の長期安定性、環境性、運転性能に優れていることから、ミドルおよびピーク対応電源として最新鋭の高効率ガスコンバインドサイクルである新大分発電所3号系列第4軸が2016年6月に運転を開始した。
一方で、主に設備の老朽化の進展が進んだ石油火力発電所については、経済性や環境性を考慮し、廃止を進めている。
また、2022年4月、当社は西部ガス株式会社と共同で北九州市響灘地区に「ひびき発電合同会社」を設立し、2023年1月よりLNG(液化天然ガス)を燃料とした発電所の建設工事を開始した。(2025年度末の営業運転開始予定)