1.ICTサービス
九州通信ネットワークの完全子会社化及び光ファイバ心線貸し事業等の移管
2014年5月16日、当社と九州通信ネットワーク(QTnet)は、QTnetの完全子会社化及び当社の光ファイバ心線貸し事業等のQTnetへの移管について、基本合意書を締結した。
当社は、経営の多角化を図る観点から、光ファイバ心線貸し事業を附帯事業として、2000年から実施していたが、電気事業を取り巻く厳しい経営環境や電力システム改革などを見据え、電気事業を中心としたエネルギー事業に注力していく必要があった。
一方、QTnetは、当社グループにおける情報通信事業の中核会社として、当社の光ファイバ心線を活用し、光ブロードバンドサービス(BBIQ)や法人向けのデータ通信サービスを提供していたが、通信業界における競争の激化などにより、競争力の強化が急務となっていた。
このようなことから、情報通信事業分野におけるグループ経営を迅速かつ機動的に実施できる体制を構築するため、QTnetを当社の完全子会社としたものである。
また、その上で、QTnetへ光ファイバ心線貸し事業及び関連する光ファイバ設備を移管することにより、経営資源の集中化によるグループ全体としての効率的な事業運営を行うとともに、QTnetの自律的な業務運営体制の強化を図っていくこととした。
その後、2014年8月28日に株式交換契約書を締結し、11月14日に完全子会社化が完了した。11月27日には、吸収分割契約書及び資産売買に関する契約書を締結し、光ファイバ心線貸し事業等を移管した。
加えて、競争環境の厳しい情報通信事業分野において、通信回線サービスとデータセンター事業のトータルソリューション提供等によるグループ一体となった競争力強化と、リソースの集中による収益基盤の強化を目的として、QTnetは、2019年7月1日に、当社子会社である株式会社キューデンインフォコムを合併した。
AIスピーカーを活用したIoTサービス
グループ全体のイノベーションを推進し、新たな事業やサービスを生み出すための取組み「KYUDEN i-PROJECT」のひとつとして、お客さまの新たな生活体験を実現するIoTサービスの検討を行い、2018年7月30日、「QUUN(キューン)」を開始した。
本サービスでは、独自に構築した音声AIエンジンを搭載したAIスピーカーを用いて、人気声優の声でニュースや天気を提供するボイスサービスのほか、話しかけるだけで家電を操作したり、自宅を守ってくれたりする機能など、生活を豊かに便利にするサービスを提供するもので、日本全国で使用することができた。
なお、2020年4月1日に本サービスをQTnetに移管したが、2020年5月末をもって、サービスを終了した。
ドローンを活用したサービス
2018年11月1日、当社は、「ドローン」を活用した新たな事業への参入検討を目的として、ドローンを活用した新サービスを法人のお客さま向けに試行的に開始した。本サービスは、ドローンを使って撮影した動画や静止画を元に、お客さまが建築物・設備・土地の状況を把握することができ、お客さまの要望に応じ、PR映像などとして活用できるオリジナル動画や三次元画像等の作成サービスを行うものである。
2019年7月1日には、「九電ドローンサービス」として、福岡県の一部、大分県、熊本県で本格的に開始した。10月1日には、ドローンに最先端のレーザースキャナを搭載し、農地や森林などの土地を空から計測することで、測量にかかる時間の大幅な短縮やコスト低減の実現を図ることができる「測量メニュー」を追加し、サービス提供エリアを九州全域に拡大した。
2020年4月1日には、「九電ドローンサービス」のオプションメニューとして、素材となる画像や動画の360度パノラマ撮影や、VRコンテンツの編集サービスをセットで提供する「360度パノラマVRサービス」を開始した。2020年5月20日からは、新型コロナウィルスの感染拡大により、対面での営業活動自粛を余儀なくされた企業を対象に、期間限定で「360度パノラマVRサービス」の無償提供をおこなった。
2020年9月1日には、「九電ビジネスソリューションズ株式会社」、「九州林産株式会社」と3社でドローンによる測量技術とAIによるデータ分析技術を活用した「自治体向け森林資源の見える化サービス」を開始した。
2021年5月、ドローンを利用したインフラ点検ソリューションを提供する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークと共同で、インフラ点検に関するドローンサービスの開発を行うことを発表した。
2022年4月、九州電力とオプティムは、ドローンとAI解析技術を活用したインフラ点検DXにより、九州電力のダム遮水壁点検業務において高度化・効率化を図り、高精度な設備異常検知及び大幅なコスト削減を実現したと発表。これは、九州電力がドローン測量で使用している独自の自動操縦プログラム(特許第6902763号)を傾斜のあるダム遮水壁の壁面撮影に活用し、オプティムが開発したAIによる画像解析を組み合わせることによって、点検時間の短縮化、劣化判断基準の均一化が可能となり、点検業務に掛かるコストを約40%削減することができた。
2022年7月、「九電ドローンサービス」のオプションメニューとして「水中ドローンサービス」「LIVE配信サービス」、ならびに「防災サービス」の受付を開始し、九州全域でサービス提供を開始した。「水中ドローンサービス」は、海底ケーブルや管路のような水中設備等の撮影、調査、点検を行うもので、業務の高度化・効率化に加え、これまでダイバーの潜水にかかっていたコストの削減や事故リスクの解消が期待できる。「LIVE配信サービス」は、お祭り、花火大会等の地域イベントやスポーツ大会、学校行事等の模様を、地上の固定カメラや360度カメラによる撮影、上空からのドローン撮影により、様々な角度からリアルタイムで配信(生中継)するもので、機材や配信システムの設営等の事前準備から配信後の映像編集まで対応する。「防災サービス」は、主に国・自治体を対象として、災害発生時に被災地の状況等を空撮・測量するなど、お客さまの非常災害時のニーズに応じて提供するもの。
2022年10月、九州電力及びジャパン・インフラ・ウェイマークは、国内では初めてとなる複数機体のドローン(米国Skydio社製)による遠隔での自動・自律巡回飛行の実証を、九州電力の苓北発電所(熊本県天草郡苓北町)でおこなった。本実証は、パソコンで同時に3機のドローンを操作するとともに、自動・自律巡回飛行中に撮影した映像をリアルタイムに一元管理し、遠隔地で確認するものである。
地域通貨の情報プラットフォームの提供
2019年8月23日から福岡県宗像市で行われた「第6回宗像国際環境会議」において、筑邦銀行が展開している地域通貨向けに、地域通貨の管理や決済等を行うための地域情報プラットフォームを提供し、サービス事業化に向けた検討をおこなった。試行で得られた知見をもとに、2020年6月18日、自治体や商工会等が地域経済の活性化を目的に発行している「プレミアム付商品券」を電子化する地域情報プラットフォームの提供を開始した。第一弾として、福岡県うきは市商工会が発行する「プレミアム付商品券」を電子化し、その後、太宰府市商工会、平尾商工連合会、箱崎商店連合会、日田市プレミアム付商品券発行実行委員会及びみやま市商工会にて同サービスを展開した。また、2021年5月には北九州商工会議所、2021年10月には飯塚市にてそれぞれサービス展開を開始。2021年9月には九州域外で初となる日進市商工会(愛知県)での展開も開始した。また、2022年4月には佐賀市、同年6月には宮崎県にて展開を開始するなど、九州エリア内での展開も加速している。今後、地方創生などの観点から各地域が導入を検討している地域コミュニティサービスに対して、後述する「株式会社まちのわ」と連携し、地域情報プラットフォームをICTサービスとして提供することで、地域経済の活性化に貢献していくこととしている。
合弁会社「株式会社まちのわ」設立
2021年5月、SBIホールディングス、九州電力及び筑邦銀行の3社は、地域のデジタル化を推進する地域情報プラットフォームを活用し、プレミアム付電子商品券・地域通貨等を発行・運用するサービスをはじめとした地方創生及び地域経済の活性化を推進する事業を展開することを目的とし、株式会社まちのわを共同で設立した。
2023年3月現在、北は山形から南は宮崎まで、全国50地域でサービス提供している。
なお、2022年9月、北九州市が脱炭素社会の実現に向け実施する「エコ家電でくらし快適キャンペーン」の電子商品券発行業務を当社が受託したが、本業務は、まちのわがサービス提供する地域情報プラットフォームを活用して実施された。
九州観光促進プラットフォーム(reQreate)の実証実験
2019年12月11日、当社は、熊本県北エリアで外国人旅行者を対象に「九州観光促進プラットフォーム」による地域活性化の実証実験をおこなった。
「九州観光促進プラットフォーム」は、地域の事業者や団体等と密に連携し、九州本来の魅力に焦点をあて、旅程や体験、特産品等を開発し、サービスを提供することで地域活性化を図るプロジェクトである。
2020年1月からは、プロジェクト名称を、「楽しむ(レクリエーション)」、「再創造(リ・クリエイト)」の2つの意味を込め、九州を表す「Q」の文字を使用し、「reQreate」とした。
2020年6月29日、「reQreate」において、美肌の湯として知られる熊本県の平山温泉水を使用した化粧品を地域と共同開発し、平山温泉観光協会、平山温泉の一部旅館及びウェブサイトにて、販売を開始した。
2020年7月20日、福岡県朝倉市、うきは市、太宰府市、八女市、熊本県県北広域本部および九州の企業5社と「九州観光促進コンソーシアム」を設立し、展開エリアを拡大した。
2021年1月15日より、コロナ禍における新たな取組みとして、海外向けのオンラインツアーを開催した。
2021年3月、新しい販促手段であるライブコマースの実証を開始、同年7月よりreQreate商品の本格販売を開始した。
2021年4月、一般社団法人みなみあそ観光局等と共同企画した熊本県阿蘇エリアの3商品「阿蘇の生薔薇茶」、「南阿蘇オーガニックベビーフーズ」、「阿蘇 極あか牛スパイスカレー」の販売を開始した。
2021年5月、デジタル化による地域共創事業reQreateとして、「reQreate/九州極み(国内外本物志向層への特別体験提供)」の2プロジェクトを推進。
2021年12月、福岡県南筑後地区の地域事業者等と共同企画した筑後産のフルーツで創ったドリンク専用のアイスボール「CHIKUGO FRUITS POPPiN'チクゴ フルーツ ポッピン」の販売を開始した。2022年12月、地域事業者等と共同開発した福岡県産の果物と日本酒を使用した「フルーテル」、福岡・大分県産の食材を使用したスイーツ「マルンカロン」の販売を開始した。
ツーリズム関連では、2022年12月、九州の文化を軸とした九州極み特別体験販売に向けて台湾地場企業等と交渉を開始。reQreate商品や地域特産品の物販、九州の特別体験などのツーリズム販売を通じてコロナ収束後の交流人口拡大及び地域経済の活性化に貢献していくこととしている。
衛星の観測データを活用した新事業の検討
2020年5月27日、QPS研究所と当社は、衛星の観測データを活用した新たな事業を検討するため、覚書を締結した。
QPS研究所は九州大学発のベンチャー企業で、先進的な小型衛星の開発に取り組んでおり、2019年12月に自社開発の衛星を打ち上げ、今後、36機の打上げを予定している。
また、観測データを活用した新たな事業・サービスの展開を目指して、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共創型研究開発プログラム(J-SPARC)に参画している。
今回、J-SPARCにおいて、JAXA等の衛星の観測データをQPS研究所が解析し、解析結果を当社が保有する電力設備の実測データと比較することで、その精度や費用対効果などを検証することとしている。
今後、QPS研究所と当社は、QPS研究所の自社衛星の観測データを、インフラ管理や災害時の被害状況の把握など幅広い用途へ適用することについて検討を行うこととしている。2021年6月、小型SAR衛星コンステレーションによる準リアルタイムデータ提供サービスの実現並びに同データを活用したインフラ管理業務の高度化・効率化や新たなサービス創出に向け、覚書を締結した。
総務省「令和4年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択
九州電力、日本電気(NEC)、ニシム電子工業、西日本プラント工業及び正興電機製作所は、総務省の「令和4年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の公募に対し、「地方公共団体と連携したローカル5Gの活用による火力発電所のスマート保安の実現」を目的とした提案を行い、2022年8月5日に採択された。本実証事業は、九州電力の苓北発電所(熊本県天草郡苓北町)において、「自動走行ロボットやドローン等による複数ソリューションでの火力発電所のスマート保安並びに災害発生時における熊本県天草地区孤立化の課題解決の有効性を検証する課題実証」、「ローカル5G等の電波伝搬モデルの精緻化・エリア構築の柔軟性の技術実証」の2点を主題とし、2022年12月から2023年2月までの予定で実施された。