林宏文(Lin Hung-Wen)さんは、30年超にわたり半導体を取材してきた。台湾のセミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)を追った著書『晶片島上的光芒(半導体の島・台湾の輝き)』が台湾でベストセラーとなり、その日本語版『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス社)が3月に刊行されたのを機に来日した。
ちょうど2月に、日本では初となるTSMCの熊本第一工場が完成している。日本進出の意味や半導体からみた日台関係、地政学的な課題などについて話した。
司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)
通訳 大森喜久恵さん (サイマル・インターナショナル)
永井 洋一 (日経QUICKニュース社編集委員兼日本経済新聞社編集局長付)
生成AI(人工知能)の未来、東アジアの地経学リスク、対内直接投資の成否。こうした国家的課題を読み解く鍵がすべてTSMCにある。投資家はその業績に神経をとがらせ、わずかな修正でも株式市場にショックが走る。だからこそ林氏の会見に多くの記者が詰めかけた。話を聞いて思ったのは世界を変えうる企業文化の光と影、いわばもう一つのTSMCショックだ。
TSMCの競争力の源泉は3つあるという。「モノを作ってハイおしまい」ではなく顧客への心配りを忘れないサービス精神。残業をいとわず、社内運動会にも半年前から準備する熱血文化。そして24時間3交代制の研究開発部門や会議の徹底した効率化といった革新的な経営だ。
光は強いほど影は濃い。林氏はTSMCの課題として9割が台湾出身という人材の多様性の不足を挙げた。米国から多額の補助金を受けるアリゾナ工場はうまくいっていない。「米国人は残業をしたがらないが、TSMC側の判断も甘かった。台湾のやり方を持ち込もうとして労働組合とトラブルが起きた」
林氏は、日本と台湾は最良の組み合わせだという。震災時に支援しあうなど人々の心が結ばれている。そうした土台が「経済の相互補完性や互恵を生む」。その橋頭堡(ほ)がTSMC熊本工場だが不安もよぎる。日本企業にもかつてTSMC的な熱血文化はあった。だが、いまの日本人にそれが受け入れられるか。
ラピダスの課題についてもズバリ指摘した。「1位を目指すための戦略、他社とは違う目標設定、そして若い人材が集まるような投資や新しい発想、新しい行動が必要だ」
日米独で大工場を新設するTSMC。横目に半導体の国内生産を増強する中国。生成AIブームと経済安全保障の旗印の下の補助金ラッシュはシリコンサイクルの山をより高くし、谷もより深くなるかもしれない。
台湾
ジャーナリスト
研究テーマ:著者と語る『TSMC 世界を動かすヒミツ』
9月30日 16:30~17:30
袴田巖さん・ひで子さん、小川秀世弁護士(袴田事件弁護団事務局長) 会見10月2日 14:00~15:30
「自治体消滅にあらがう」(4) 辻琢也・一橋大学大学院教授日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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