1976年生まれ。2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。近著に作品集『ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS 植物図鑑V』(青幻舎)など。2025年3月下旬に京都で展覧会『X-Ray FLOWERS』を開催。
2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。 2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。
フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら 。
〈依頼人プロフィール〉
若松みずえさん(仮名) 45歳
会社員
千葉県在住
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義父は長年高校の英語教諭を務め、定年後は自由気ままにのんびりしていましたが、ある時から卓球、ビリヤード、地域の老人会の会長と元気に活動していました。私たちの結婚が17年前に急に決まったときも、夫の両親も挙式をした同じ神社でのお式や、親戚へのお披露目の披露宴準備の一切を、離れて暮らす私と夫に代わって準備してくれたのも義父と義母でした。
普段から家族思いの義父は、私の子供たち、夫、私の誕生日には、義母の手作りケーキとともに、お手製のメッセージカードを必ず送ってくれました。それぞれが好きなことや興味があることを義母を通じてヒアリングし、それをもとに作った力作のメッセージカードです。このプレゼントが届くのを、毎回みんなで楽しみにしていました。
そんな義父との時間があとわずかであることがわかったのは、数ケ月前のことです。お正月にはいつも通りみんなで帰省をし、お節料理に舌鼓を打つはずが、大好きなお酒を断り、なんだかおなかの調子が悪いと......。私たちが帰省をしている間は、心配をかけまいと痛みを我慢していたようですが、私たちが戻ったその日に病院で診てもらい、検査を重ねた結果、がんの末期であることがわかりました。
2月にお見舞いに行ったところ、お正月にはいつも通り過ごしていた義父が、すっかりやせ細ってしまい、その姿に言葉を失いました。義母よりも先に旅立つことを覚悟し、通院、入院の合間に病を押して義母に自分亡きあとの手続きなどを相談しているようです。
長年高校の教諭を務めてきた義父。教え子の方々との交流を絶やさず、元気づけ、勇気づけてきた一方、いつも私たちのことを心配し、温かく見守ってくれました。義父がいれてくれるコーヒーや緑茶は絶品で、どうやったらあんなにおいしくいれられるのか、まだ教えてもらえていません。また子供たちが大きくなったらお酒で乾杯しようと約束していましたが、それもかなわないかもしれません。
義父は童話の「花咲かじいさん」ならぬ、「花咲かグランパ」です。亡くなった祖母の家から持ってきた真っ赤なハイビスカスを10年以上咲かせ続けたり、コチョウランは今年のお正月は見事な大輪をつけ、まるで売り物になりそうに花を咲かせたり。
そんな義父と、義父の身を案じ、その時その時にできる最善のことを医師に相談をしながら進めてくれている義母の気持ちを思うと、いつも応援してもらっていたのに、遠くから心配することしかできないことが歯がゆいです。義父と義母を少しでも元気づけるような東さんのお花に応援の気持ちを込めて贈っていただきたく、今回応募しました。
闘病中の義理のお父様と、お父様を見守るお母様を元気付けたいと投稿なさったとのこと。義理のお父様の優しさと温かさは、投稿を読んだだけでも伝わってきます。
ご家族や教え子たちに囲まれて楽しそうにしているお父様をイメージして、カラフルで賑やかなアレンジに仕上げています。投稿にもあった真っ赤なハイビスカスを探しましたが、季節柄見つけることができず。その代わりのグラジオラスやコチョウランを入れるなどしています。投稿者さまの思いが届きますように。
文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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