花のない花屋

本当の思いやりとは何かを見せてくれた、姉のように慕う友人へ

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2025年10月16日

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旬のサンマを使った、ハーブ香る生春巻き

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フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉

魚住加世子さん(仮名) 60歳
行政書士
長野県在住

私が姉のように慕うHさんは、ひとつ上の集落に住む73歳の女性です。彼女とのおつきあいが始まったのは15年前。私が母の介護体験記を出版したことを聞いて、その本を読みたいと畑で作業をしていた私に声をかけてくれたのです。

その時、彼女も義父母の介護をしていることを知りました。また介護の傍ら、村に伝わる昔話を紹介する手作り紙芝居などのサークルに入って、地域のために活動していることも教えてくれました。

私はたったひとりの介護に悪戦苦闘しているのに、2人の介護をこなし、農作業もしながらサークル活動も続ける彼女のバイタリティーに圧倒されました。

その日から、たびたび手作りの紙芝居を持参し「介護の息抜きに一緒に活動しない?」と誘ってくれた彼女。でも私は絵を描くことが苦手なこともあって、彼女の誘いを断り続けていました。それでも「じゃあ、せめて見るだけでも」と、熱心に紙芝居を持って来るので、何か別の魂胆があるんじゃないかと、疑ってしまった時期もありました。あまりに熱心なので、そのうち商品の販売や宗教の勧誘など、別の目的を出してくるのではないかと考えてしまったのです。実際それまで知らない人が熱心に近づいてくるときは、そうした別の目的を持っていることがほとんどでした。

でも、Hさんは違いました。本心から私を思いやってくれていたのです。

その後、介護をしていた母が亡くなり、これからどうやって生きていこうかと途方に暮れていた私を励ましてくれたのも、彼女でした。

年金もなければ仕事もない。母が死んだ喪失感や更年期障害を抱え、将来の不安におびえながら独学で資格試験の勉強をしていました。その間、私の健康を気遣って、何度もおかずを差し入れてくれました。また資格試験に合格した時は、自分事のように喜んでくれて、素敵なペンケースをプレゼントしてくれました。

私はHさんに出会って初めて、人を思いやるとはどういうことかを教えてもらいました。

一方彼女は、義父母、夫を相次いで亡くし、一人暮らしに。年内には妹さんと暮らすため、生まれ故郷の隣の県に引っ越す予定です。

そんな彼女に今までの感謝を込めて、花束を贈りたいと応募しました。バイタリティーあふれる女性なので、見るとますます元気になれて、四季の移ろいが感じられるような花束を贈りたいと思います。

《花材》コスモス、キバナコスモス、ラペイロージャ、クレマチス、フロックス、リンドウ、カクトラノオ、ヒペリカム、ツバキ
《花材》コスモス、キバナコスモス、ラペイロージャ、クレマチス、フロックス、リンドウ、カクトラノオ、ヒペリカム、ツバキ

花束をつくった東さんのコメント

お母様を介護する日々を本につづられたのをきっかけに交流が始まったという、ご近所に住むお友達へのお花です。投稿者様をいろいろ気にかけてくださるお友達の、見返りを求めない真のあたたかさを感じてもらえればと、コスモスなど秋らしい雰囲気のお花を集めて作りました。

今年は夏が長かったせいか、ようやく吹き始めた秋の風を感じてほっとしている人も多いでしょう。そんな気持ちになれるようなアレンジメントを目指しました。

人の縁はこうやって、巡ってくるものなんですね。介護に資格にがんばられた投稿者様へのエールも込めています。

文:福光恵
写真:椎木俊介

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フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現します。

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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