女性活躍を妨害する悪質なケースには断固とした対応を「少し前なら昇進できたはずなのに...」女性に機会を奪われたと嘆く"普通の男性"に必要な居場所と肩書
リストラ予備軍の人ほど女性活躍に猛反対する
しかしながら体力ある大企業でも、働かない中高年を養う余裕は徐々になくなってきています。50代以上に早期退職を奨励している企業も珍しくありません。ひと昔前までは「大卒で正社員の男性」というだけで、日本流の年功序列と終身雇用制度の中で守られ、それこそ違法行為でも犯さない限り、ある程度までは昇進と給料が保証されていました。男性というだけで昇進できる時代は、とっくに終わっていますが、やはり入社時やひと昔前のデフォルト設定から抜け出せない方がいます。
自分は絶対にマイノリティにならないと思っていたのに、女性に昇進で抜かれるかもしれないし、それどころか突然、職を失うかもしれない。特に自信がない方や、昨今の社会の変化についていけないような方は、女性を筆頭としたマイノリティが上がっていくと、自分のポジションのパイが減るのではないかという危機感からダイバーシティに否定的な態度をとりがちです。
それだけならまだしも悪質な場合、ハラスメントなどに走って女性や若手をつぶそうとする方もいますので、そういった場合は会社として断固たる措置が必要になります。
今は男女問わず、能力が高い人ほど転職が容易な時代です。放置しておけば、女性だけでなく、優秀な若手もどんどん離職していくことでしょう。
クオーター制で昇進できなくなった「普通の男性」たち
最近は、昇進する際に、同程度の実力であれば女性を上げる。また昇進させる際に、一定の女性枠や女性限定のポジションを設ける企業も出てきました。その際に「仕事が全然できないリストラ候補というほどではなく、以前ならある程度までは昇進できた男性があぶれてしまう。これでいいのでしょうか」という懸念を持つ経営者や人事の方も出てきています。要するに、男性への差別にならないでしょうか、ということですが、これこそダイバーシティを妨げる「公平性を欠く」ケースの典型だと思います。
ちょっと考えてみてください。では、15年前、20年前の社内の女性たちはどうだったでしょうか? 「仕事が全然できない」どころか、そこそこ優秀でも多くの女性が昇進できず、子供を産んだだけで、涙をのんで退職に追い込まれた方だってたくさんいました。これを社内で女性差別だと言う方はどれぐらいいたでしょうか? それこそ昇進できたのはプライベートを犠牲にしても男性の2倍、3倍働き、抜きん出た能力のある女性か、女性でないと務まらないような部署のみ。正社員の男性は、それこそ多少できない人でも、ある程度までは自然に昇進していったはずです。
『『図解!ダイバーシティの教科書』』(プレジデント社)
国を挙げて日本が進めてきた女性活躍。その結果、働く女性は増え、ライフイベントとの両立制度の手厚さはすでに世界トップレベルなのに、管理職比率は一向に上向かず、むしろ世界の流れから取り残されるばかり。日本企業の女性活躍施策や、ダイバーシティ施策の何が一番悪いのか?そして本当のダイバーシティ経営とは何なのか? 当時としては珍しい完全共稼ぎ家庭に育ち、自らも管理職になってから出産、そしてその後も育児をしながら昇進を重ねた、日本で唯一の働く女性向けビジネス教養誌『プレジデント ウーマン』編集長が、長年の取材や調査、そして自らの経験から見た、日本のダイバーシティの現況と問題点について、図解しながらリアルに語ります。
- 著者
- 木下 明子
著者プロフィール