水酸化ベリリウム
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水酸化ベリリウム | |
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水酸化ベリリウム | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 13327-32-7 |
PubChem | 25879 |
RTECS番号 | DS3150000 |
特性 | |
化学式 | Be(OH)2 |
モル質量 | 43.0269 g mol−1 |
外観 | 無色結晶または白色粉末 |
密度 | 1.92 g cm−3, 固体 |
融点 |
分解 |
水への溶解度 | 0.000055 g/100 g水(18°C)[1] |
構造 | |
結晶構造 | 斜方晶系(β) |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
−905.8 kJ mol−1(β) −902.5 kJ mol−1(α)[2] |
標準モルエントロピー S |
50 J mol−1K−1(β) 51.9 J mol−1K−1(α) |
危険性 | |
引火点 | 不燃性 |
半数致死量 LD50 | 4 mg/kg (ラット(静脈注射)) |
関連する物質 | |
関連物質 | 水酸化マグネシウム 水酸化カルシウム 水酸化ストロンチウム 水酸化バリウム |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
水酸化ベリリウム(すいさんかベリリウム、beryllium hydroxide)は、化学式 Be(OH)2 で表されるベリリウムの水酸化物である。
製法
[編集 ]ベリリウム塩水溶液にアンモニア水を加えてできる沈殿を、アンモニア水の存在下で長時間加熱するとα型の結晶が生成する[3] 。
- {\displaystyle {\ce {Be^{2+}\ + 2 OH^- -> Be(OH)2}}}
ベリリウム塩水溶液にアルカリを加えてつくった沈殿を煮沸した濃水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、冷却するとβ型の結晶が析出する。
- {\displaystyle {\ce {[Be(OH)4]^{2-}\ \rightleftarrows \ Be(OH)2\ +2OH^{-}}}}
性質
[編集 ]固体には2種類の多形が知られ、斜方晶系のβ型がより安定で、これは水酸化亜鉛と同型であり、ベリリウム原子は4配位である[4] 。α型は準安定状態である。
水酸化ベリリウムは他のアルカリ土類金属水酸化物と比較して、塩基としての性質はかなり弱い。従ってマグネシウム塩以下はほとんど加水分解しないのとは対照的に、ベリリウム塩水溶液は加水分解により酸性を示す。
- {\displaystyle {\ce {Be^{2+}\ +H2O\ \rightleftarrows \ BeOH^{+}\ +H^{+}\ ,}}} pKa1 = 5.7
この加水分解化学種はさらに重合して複雑な平衡が存在する[4] 。
- {\displaystyle {\ce {3BeOH^{+}\ \rightleftarrows \ \ [Be3(OH)3]^{3+}}}}
水に対する溶解度もアルカリ土類金属水酸化物のなかで最小であり、その溶解度積は以下の通りである[5] 。
- {\displaystyle {\ce {Be(OH)2\ \rightleftarrows \ Be^{2+}(aq)\ +2OH^{-}(aq)\ ,}}} {\displaystyle K_{sp}=3{\sim }8{\times }10^{-22}}
400°C程度の加熱により水を失って酸化ベリリウムになる[6] 。
- {\displaystyle {\ce {Be(OH)2 -> BeO\ + H2O}}}
希硫酸など強酸の水溶液に溶解して硫酸ベリリウムなどベリリウム塩を生成する。
- {\displaystyle {\ce {Be(OH)2\ + H2SO4 -> BeSO4\ + 2 H2O}}}
強塩基の水溶液にも溶解してベリリウム酸塩水溶液となるが、この性質は水酸化アルミニウムほど顕著ではない[7] 。
- {\displaystyle {\ce {Be(OH)2\ + 2 NaOH -> Na2[Be(OH)4]}}}
脚注・参考文献
[編集 ]- ^ 新村陽一 『無機化学』 朝倉書店、1984年
- ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
- ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
- ^ a b F.A. コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
- ^ 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 改訂4版』 丸善、1993年
- ^ Egon Wiberg, Arnold Frederick Holleman (2001) Inorganic Chemistry, Elsevier ISBN 0123526515
- ^ 長島弘三、佐野博敏、富田 功 『無機化学』 実教出版