国際哲学コレージュ
国際哲学コレージュ(こくさいてつがくコレージュ、仏: Collège international de philosophie, Ciph)は、パリの5区にある高等教育機関。フランス国民教育省の信託のもと、1901年制定のアソシアシオン(結社)法に基づいて1983年に設立された。
共同設立者はジャック・デリダ、フランソワ・シャトレ、ジャン=ピエール・ファイユ、ドミニック・ルクール。
コレージュの目的は、フランスにおける哲学教育のあり方を再考し、制度的な権威(大学)から哲学を開放することである。予算の大部分は公的な補助金によって賄われている[1] 。講座担当者の「プログラム・ディレクター」の任期は6年(再任不可)で、3年に一度世界から候補者を募集し、応募者の中から選出している。候補者への応募資格に制限はなく、哲学的価値の相互評価(ピア・アセスメント)を通じてディレクターが選出される。
コレージュの認識では、哲学は「交差点」に、例えば哲学と科学の、あるいは哲学と法(学)が交わる場所に位置づけられることが望ましいとされる。したがって、候補者はジャック・デリダの理念であるこの「交差点」という急務に応じることが求められる。
コレージュには正規の学生はほとんどいない。修了者には「Diplôme du Collège international de philosophie」という証明書が発行されるが、これは正式な大学の学位ではない。しかし、フランスや諸外国で学位として認定された事例がある[2] 。正規学生でなくとも、セミナーへの出席は無料で誰にでも開かれている。
設立主旨
[編集 ]デリダがコレージュを設立したのは、フランスの高校(リセ)における哲学教育が政府の圧力を受けるという状況の中で、セルジーにある学習センターに触発されたことがきっかけだという。
デリダは次のように語っている。「政府が作ったわけではないこのコレージュは、国際的な視野を持つ組織であり、何かに反対することではなく、周縁部/余白を均し、問いかけ、切り開き、そして占拠することを使命としている。我々はここで、普通見られない、大学のお墨付きをまだ得ていないようなアプローチを、そして新しい対象、新しいテーマ、新しい分野をこそ称揚したいと思う。そうすることによって、我々は既存のアカデミアよりも多くの学術的交わりを目撃するであろう」[3] 。
現在の構成員
[編集 ]- Elena Anastasaki
- Manola Antonioli
- Guillaume Artous-Bouvet
- Quentin Badaire
- Sina Badiei
- Charles Bobant
- Livio Boni
- Vanessa Brito
- Jean-Jacques Cadet
- Rosaria Caldarone
- Raffaele Carbone
- Gaetano Chiurazzi
- Hugues Choplin
- Alexandre Chèvremont
- Laura Cremonesi
- Rémy David
- Alessandro De Lima Francisco
歴代議長
[編集 ]- ブリュノ・クレマン (フランス語版)
- エヴリーヌ・グロスマン (フランス語版)
- マチュー・ポット=ボンヌヴィル (フランス語版)
- ジョーゴ・サルディーニャ[4]
歴代プログラム・ディレクター
[編集 ]- ジョルジョ・アガンベン
- エリック・アリエズ
- アラン・バディウ
- シディ・モハメド・バルカ (英語版)
- アントワーヌ・ベルマン
- バルバラ・カッサン
- フランソワ・シャトレ
- ジョゼフ・コーエン (フランス語版)
- ジャン=ルイ・デオット (フランス語版)
- ジャック・デリダ
- レジス・ドゥブレ
- サリム・アブドゥルマジド
- イザベル・アルファンダリー
- ジル・バルー
- クリストフ・ビール
- アリ・ベンマクロフ (フランス語版)
- フィリップ・ビュトゲン
- ジュリアン・コパン
- ルイージ・デリア
- ギラン・デランド (英語版)
- ダヴィッド・ドュボワ
- マリー=クレール・カロズ=チョップ
- フィリッポ・デル・ルッケーゼ
- アンドリュー・フィーンバーグ (英語版)
- 姜丹丹[5]
- ルク・ンゴウェト
- ロベルト・ニグロ
- ソラヤ・ノル・スケル
- 西山雄二
- アンドレア・ピノッティ
- パオロ・クインティーリ
- ガブリエル・ロックヒル (英語版)
- マーギット・ルフィン
- フェルナンド・サントーロ (フランス語版)
- ジョーゴ・サルディーニャ
- アシュリー・トンプソン
- ダニー=ロベール・デュフール
- コリンヌ・エノドー (フランス語版)
- ルセット・フィナス (英語版)
- ホセ・ヒル (英語版)
- フランソワ・ジュリアン
- ギー・ラルドロー (フランス語版)
- フランソワ・ラリュエル
- ジャン・ロクセロワ (フランス語版)
- ルネ・マジョール (フランス語版)
- パオラ・マラッティ (フランス語版)
- サファー・ファティ (英語版)
- アヌーシュ・ガンジプール
- マリー・ジル (英語版)
- エリック・ギシャール
- ジュリ・アンリ
- フランク・ジュドゥレイェフスキ
- ナディア・ヤラ・キスキディ
- クリスチャン・ラヴァル (フランス語版)
- ジェローム・レーブル (フランス語版)
- アン・ルフェーヴル
- カルロス・ロボ
- セルア・ルスト・ブルビナ
- ジャン=クレ・マルタン
- ナターシャ・ミシェル (英語版)
- パスカル・ミション (フランス語版)
- ジャン=クロード・ミルネール (英語版)
- ピエール・ペジュ (英語版)
- フランソワーズ・プルースト
- ジャック・ランシエール
- フィリペ=ジョゼフ・サラザール (英語版)
- ベルナール・スティヴェンス
- フランソワ・ズーラビシヴィリ
- ジョエル・マレリー
- ローラ・オデロ
- クレール・パジェス
- ルカ・パルトリニエリ
- グザヴィエ・パパイス (フランス語版)
- マルク・パヴロプロス
- ステファヌ・プジョール
- エマヌエル・サランスキ
- ギヨーム・シベルタン=ブラン (フランス語版)
- フェルハト・タイラン
- ブリュノ・ヴェレッキア
- バルバラ・サファローヴァ
関連項目
[編集 ]脚注
[編集 ]- ^ "The CIPh is living mainly on grants by the Ministry of Research and the Ministry of Education" CIPh. "CIPh financial partners (on the CIPh site)" (フランス語). May 19, 2012閲覧。
- ^ Les activités - haut et bas Archived 2001年2月12日, at the Wayback Machine.
- ^ (フランス語) Derrida: "d’origine non gouvernementale, à portée internationale, une institution qui n’est pas destinée à s’opposer, mais à équilibrer, à questionner, à ouvrir, à occuper les marges ; où l’on privilégie des approches peu fréquentes ou point encore légitimées dans l’université, de nouveaux objets, de nouveaux thèmes, de nouveaux champs ; où l’on traite des intersections plus que des disciplines académiques" Interview with Derrida Archived 2006年6月17日, at the Wayback Machine.
- ^ http://cfcul.fc.ul.pt/equipa/dsardinha.php
- ^ http://iasec.sjtu.edu.cn/CN/show.aspx?info_lb=18&info_id=305&flag=3
参考文献
[編集 ]- (フランス語) Le rapport bleu - Les sources historiques et théoriques du Collège international de philosophie (Jacques Derrida, Jean-Pierre Faye, François Châtelet), PUF, Paris, 1998, ISBN 2-13-049337-8
- Derrida, Jacques. Du droit à la philosophie (Who's Afraid of Philosophy?)
- 西山雄二、馬場智一、立花史訳『哲学への権利(1)』みすず書房、2014年
- 西山雄二、立花史、馬場智一、宮﨑裕助、藤田尚志、津崎良典訳『哲学への権利(2)』 みすず書房、2015年