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タマシダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タマシダ
タマシダ・地上の葉
ハワイ・マウイ島
分類
: タマシダ N. cordifolia
学名
Nephrolepis cordifolia (L. ) C.Presl [1]
シノニム
  • Nephrolepis auriculata (L. ) Trimen , nom. utiq. rej.[2]
和名
タマシダ

タマシダ(玉羊歯、学名:Nephrolepis cordifolia)は、ツルシダ科 タマシダ属に属するシダ植物で、日本の南部に生育する。乾燥した地面や樹上に生え、時に観賞用に栽培される。

名称

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和名語源は「玉羊歯」(玉シダ)の意味で、匍匐茎についている球状の塊茎に由来する[3] 中国名は「腎蕨」、韓国名は「줄고사리」と表記される[1]

分布・生育地

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日本では、本州伊豆半島から九州小笠原諸島南西諸島に分布するほか、日本国外では、中国台湾東南アジアポリネシアアフリカなどに分布する[4]

主に海岸近くの日当たりのよい場所に生育する。海岸付近の乾いた斜面や、岩の上、場合によっては樹上に着生する。特に、海岸沿いに植えられた街路樹カナリーヤシの葉の集まった部分には、よく密生している。

特徴

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根茎はごく短く斜上から直立し[5] 、多数のをつける。根茎からは針金のようなとともに、細い匍匐茎を出して新しい芽をつけ[5] 、大きな群落になる。また、匍匐茎には球状の塊茎をところどころに付け、水と栄養を蓄えている[5]

葉は細長い1回羽状複葉[5] 、普通は長さ30 - 40 cm、長いものは50 cmを超えて80 cmにも達する。地上のものでは葉はやや立ち上がり、樹上についたものでは葉は垂れ下がる。主軸の左右に細長い楕円形の小葉を数十対、時には百対もつける。羽片は先端が尖らず、基部の上側は耳状に突出する[5] 胞子嚢群は小葉の裏側、主脈と葉縁の間に並ぶ。

利用

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観葉植物として栽培されることがあり、園芸品種として下記のものがある。

  • ダッフィー (Duffii)
    • 羽片がごく短くなった変異で、葉全体の幅は1 - 1.5 cmにしかならない。葉柄や中軸は所々で二股分枝し、羽片は小さく扁円形から半円まで不規則に変化し、胞子嚢群を滅多につけない[5] [6] 。これはニュージーランドあるいは南洋諸島が原産とされ、本種よりの変異と思われる[要出典 ]。和名としては「石化タマシダ」(「セッカタマシダ」表記も)がある[7]
  • ペチコート (Petticort)
    • 葉の先が1回から2回分岐する[5]

栽培では、イノモトソウとほぼ同じくやや明るい日陰を好む性質があり、直射日光には当てないように注意を要する[5] 。栽培適温は20度前後であるが、タマシダはタマシダ属の中でも寒さに強く、凍らさないようにすれば越冬も可能である[5] 。施肥、植え替え、繁殖ともに初夏から夏場の間で行われ、繁殖は株分けまたは匍匐茎に生じた子株によって行われる[5] 病害虫カイガラムシがつく場合がある[5]

近縁種

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近縁種のセイヨウタマシダ (N. exaltata (L.) Schott) は南米原産で、観葉植物として改良されたものがあり、学名のままにネフロレピス・エクサルタータボストンファーンと呼ばれる。小葉がさらに羽状に切れ込んだものなどが、よく見られる。

日本にはタマシダ属のシダ植物はタマシダ以外で2種あり、タマシダに似てやや小葉が大きい感じのヤンバルタマシダ (N. hirstula (Forst.) Presl) が南西諸島小笠原諸島に分布する。もう一種のホウビカンジュ (N. biserata (Sw.) Schott) は、南西諸島に分布して石灰岩の崖などに生え、小葉はより幅広く大きく垂れ下がり、長さが2 mにも達する。

脚注

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). "Nephrolepis cordifolia (L.) C.Presl". BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2021年4月3日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). "Nephrolepis auriculata (L.) Trimen, nom. utiq. rej.". BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2021年4月3日閲覧。
  3. ^ "タマシダのタマ". 南方熊楠記念館 (2023年7月24日). 2023年10月17日閲覧。
  4. ^ 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』 九州大学出版会、1997年、47頁、ISBN 4-87378-522-7
  5. ^ a b c d e f g h i j k 土橋豊 1992, p. 108.
  6. ^ 『園芸植物大事典 2』,(1994),p.1727
  7. ^ 浅山他(1977), p. 206

参考文献

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関連項目

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ウィキメディア・コモンズには、タマシダ に関連するメディアがあります。

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