カトラ火山
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カトラ火山 | |
---|---|
標高 | 1,512メートル (4,961 ft) m |
所在地 | アイスランド |
位置 | 北緯63度38分0秒 西経19度3分0秒 / 北緯63.63333度 西経19.05000度 / 63.63333; -19.05000 座標: 北緯63度38分0秒 西経19度3分0秒 / 北緯63.63333度 西経19.05000度 / 63.63333; -19.05000 |
種類 | 氷底火山 |
最新噴火 | 2011年 |
プロジェクト 山 | |
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カトラ火山(アイスランド語: Katla)とはアイスランドにある火山である。
解説
[編集 ]カトラ火山は小村ヴィークの北にある火山で、山自体の標高は1493メートル。その上をミールダルスヨークトル氷河が595平方キロメートルにわたって覆っている。その西方にはこの氷河よりは小規模なエイヤフィヤトラヨークトル氷河が知られている。
カトラ火山はアイスランドでもっとも危険といわれる火山の一つである。氷河の下にあるために噴火すると付近は大規模な洪水となる[1] 。火口の大きさは直径10キロメートル。
40-80年おきに噴火しており、最後の大規模噴火は1918年に起こった。幅10kmの噴火で、溶け出した氷河の水が毎分1800万t(ナイル+ミシシッピの平均水量の10倍)でふもとをおそった被害が特筆される[要出典 ]。その後、1955年に小規模な噴火の兆候があり、最近は2011年にも小規模な噴火があった。
文献上は930年の記録が最も古く、以来、16の噴火が記録されている。ノルウェーやスコットランドなど、北大西洋沿岸を中心に見られる紀元前1万600年頃のヴェッデ灰地層は、カトラ火山から噴出したテフラが降り積もったものと考えられている[2] 。すぐ横にあるエイヤフィヤトラヨークトル火山が噴火して数年後に噴火することが多いとされる。
ラキ火山やエルトギャゥと共に火山列を構成している。この火山列は世界で最も大規模なものの一つで、18世紀には1721年のカトラ火山噴火を手始めに大規模な活動を起こし、アイスランドに深刻な被害を与えている[3] 。
もっとも、最近は大きな噴火が起こっていないため、ミールダルスヨークトル氷河の上でスキーやスノーモービルなどの観光サービスが行われている[4] 。
カトラ火山と周辺の火山群、ヴァトナヨークトル氷河の一部やクヴォルスヴォールル村などの地域がユネスコ世界ジオパークに指定される[5] 。
文献に残る火山活動
[編集 ]カトラ噴火に関する文献記録は、移民初期から17世紀にかけての例は信頼性に欠ける[6] 。
894年の決壊でも6軒の農家と、ホルムス川 (アイスランド語版)とハーヴルスエイ (英語版)(仮カナ表記)の残丘[注 1] のあいだの草原を全滅させたとされる[6] 。
「ストゥルラの決壊」(Sturluhlaup)といってストゥルラ・アルングリームソン[注 2] と乳飲み子のみが生存したという噴火決壊も1311年の事件として伝わるが[6] [9] 、この年代層のテフラ出土はみつからないので、おそらく1500年頃に発生した噴火にまつわる逸話だと考察される[6] 。「ストゥルラの決壊」では、ミールダルスサンドゥル (アイスランド語版)の Lágeyjarhverfi 地区[注 3] が壊滅したと伝わる[6] 。
また詩のエッダの「巫女の予言」の一節が、特にカトラ火山の噴火の描写であるとする意見もある[10] ( § 神話説参照)[注 4] 。
民話・神話
[編集 ]民話においてはカトラという魔女が、火山を覆うミールダルスヨークトル氷河に氷河湖決壊洪水(ヨークルフロイプ[注 5] )を引き起こした、という昔話的な伝承が残されている[13] 。
この民話は「カトラとカトラの
「カトラとカトラの
(時は宗教改革以前の頃)シックヴィバイル(仮カナ表記。Þykkvibær )修道院には修道院長が赴任し、カトラというお付きの家政婦がいたが、たいそう魔術(fjölkynngi )が巧みで気難しく、院長を含め周りから恐れられた[17] 。カトラは魔法のズボン/股引(brók)を有していた。身に着ければどこまでも疲労せずに歩けるという品であるが、有事の際にしか使わないことにしていた。秋のある日、羊飼いのバルジは、院長とカトラが外出の饗宴から戻るまでに羊を集めなくてはならなかったが、はぐれた羊がいたのでカトラの股引を拝借して捕まえた。カトラに発覚し、不意打ちにされ、酸味ホエイ樽(sýru ker )[注 8] に沈めて溺死させられた。しかし冬がつづくと、だんだんホエイが減ってきて、カトラは「そのうちバルジが現れる」とつぶやくのを聞きとがめられるようになった[18] 。そのうち犯罪が露見し、刑罰はまぬかれないと観念した彼女は、魔法の股引を院を去り、東北の方角のいずこかに消えていった。おそらく氷河に身ごと突っ込んだのかと思われた。そして間もなくすると、氷河決壊([ヨークトル]フロイプ[注 5] )が発生し、修道院やアゥルフタヴェル (アイスランド語版)に向かったという[16] [19] 。
地質学的な形成がいろいろカトラにちなんで命名される。民話の題名にもあるように「カトラの裂け目」(コトルギャゥ、Kötlugja )[注 6] は魔女にちなむという伝承があり、氷河で平らにされた「カトラの砂原」(コトルサンドゥル、Kötlusandur)もまた然りである[19] 。この氷河で起こる決壊も「カトラの決壊」(コトルフロイプ、Kötluhlaup)と呼称されている[13] [21] 。
神話説
[編集 ]北欧神話を現代に伝える詩の1編『巫女の予言』は1000年頃に編纂されたが、その一節には、夏でありながら日の光が暗くなる(svört verða sólskin[22] )という表現がある。アイスランドの地質学者シーグルズル・ソゥラリンソン(1912年 - 1983年)はその著書において、この一節は詩が書かれた当時に起こったカトラ火山の噴火に基づく記述だとした[注 4] 。ソゥラリンソンはテフラを分析して火山の噴火の年代を測定しており、カトラ火山が噴火した時期を地質学的証拠から推定すると同時に古い文献に残る記録から裏付けようとしていた。そして同国の文学者シーグルズル・ノルダル(1886年 - 1974年)は、1918年のカトラ火山の噴火の際に火山灰によって太陽の光が弱められ周囲が暗くなったのを目の当たりにしたとき、『巫女の予言』のこの節の意味が理解できたと著書で述べている[23] 。
注釈
[編集 ]- ^ Google Mapでは「ハファージー」と表記
- ^ Sturla Arngrímsson.
- ^ 後述の民話で言及されるアゥルフタヴェル (アイスランド語版)の西に在した。
- ^ a b しかし同じ火山系のエルトギャゥの噴火をこの古エッダ詩が語っているという説も見られる[11]
- ^ a b jökulhlaup。「ヨークルフロイプ」の表記で発表されているが[12] 、氷河は「ヨークトル」とも表記される鎌田 (2014), p. 47。
- ^ a b "
裂け目 ()"の和文表記は多いが[14] 、"ギャオ(ギャゥ)"ともみえる[15] 。 - ^ Þykkvibær の属格 + -klaustur "monastery, convent"。
- ^ アイスランド語wikt:sýraは"sour whey"と英語で定義される。この複合語の後半は主格の"-wikt:ker"("tub, vat")であるべきでNordvig (2019), p. 76"-keri"の(与格)表記は訂正する。
脚注
[編集 ]- ^ アイスランド観光文化研究所 火の国アイスランド...火山
- ^ Mangerud , J., Lie, S.V., Furned, H., Kristiansen, I.L., Lømo, L. (1984) A Younger Dryas Ash Bed in Western Norway, and Its Possible Correlations with Tephra in Cores from the Norwegian Sea and the North Atlantic. Quaternary Research 21 85-104
- ^ 静岡大学小山真人研究室 アイスランド
- ^ アイスランド航空 南部アイスランド
- ^ "KATLA UNESCO GLOBAL GEOPARK (Iceland)" (英語). UNESCO (2021年7月27日). 2022年10月20日閲覧。
- ^ a b c d e Helgi Björnsson (2016), p. 224.
- ^ Nordvig (2019), p. 72.
- ^ Íslenzkir sögustaðir: Austfirðingafjórðungur. Translated into Icelandic by Haraldur Matthíasson. Reykjavík: Örn og Örlygur. (1986). p. 102. https://books.google.com/books?id=r3slAQAAMAAJ&q=%22L%C3%A1geyjarhverfi%22
- ^ ヨウン・ステイングリームソン (アイスランド語版)(1791年没。「火の著作物」Eldritで知られる人物[7] )によって1311年比定[8] 。
- ^ Oddur Sigurðsson (1998), "Glacier variations in Iceland 1930–1995 - From the database of the Iceland Glaciological Society". Jökull 45:3–25, p. 16 (Helgi Björnsson (2016), p. 224引き)。
- ^ Oppenheimer, Clive; Orchard, Andy; Stoffel, Markus; Newfield, Timothy P.; Guillet, Sébastien; Corona, Christophe; Sigl, Michael; Di Cosmo, Nicola et al. (1 April 2018). "The Eldgjá eruption: timing, long-range impacts and influence on the Christianisation of Iceland" (英語). Climatic Change 147 (3): 377. Bibcode: 2018ClCh..147..369O. doi:10.1007/s10584-018-2171-9. ISSN 1573-1480. PMC 6560931. PMID 31258223 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6560931/ .
- ^ 小疇尚「アイスランドの氷河底噴火と大洪水(後編)」『地理』第42巻第7号、古今書院、1997年7月、90–97頁。
- ^ a b Nordvig (2019), p. 67.
- ^ 鎌田 (2014), p. 16等
- ^ 小疇 (1997), p. 93.
- ^ a b ウィキソース出典 "Katla eða Kötlugjá" (アイスランド語), Íslenzkar Þjóðsögur og Æfintýri , 1, (1862), pp. 184–185, ウィキソースより閲覧。
- ^ a b Nordvig (2019), p. 74–75.
- ^ Helgi Björnsson (2016), p. 225 "Barði will soon appear"を重訳。Cf. Zoëga (1922) Icelandic-English dictionary s.v. "brydda " : impers. bryddir á e-u something begins to appear
- ^ a b Helgi Björnsson (2016), pp. 224–225.
- ^ Thor Thordarson; Ármann Höskuldsson (2014). Iceland: Classic Geology in Europe. Dunedin Academic Press Ltd. ISBN 9781780465111 . https://books.google.com/books?id=KV1wDwAAQBAJ&pg=PP136
- ^ 英語: "Katla's eruption"[20]
- ^ 『巫女の予言 エッダ詩校訂本』(シーグルズル・ノルダル著、菅原邦城訳、東海大学出版会、1993年、ISBN 978-4-486-01225-2)213頁。
- ^ ヴァルター・ハンゼン 著、小林俊明; 金井英一 訳『アスガルドの秘密 北欧神話冒険紀行 [Asgard: eine Reise in die Götterwelt der Germanen]』東海大学出版会、2004年、247–248頁。ISBN 978-4-486-01640-3。
関連項目
[編集 ]- 氷河湖決壊洪水
- アイスランドの火山一覧
- アイスランドプルーム
- アイスランドの氷河
- アイスランドの湖
- アイスランド沖の島嶼一覧
- プレートテクトニクス
- アイスランドの河川
- アイスランドの滝
- Geography of Iceland アイスランドの地形 (英語)
- Iceland hotspot アイスランドのホットスポット (英語)
- Volcanism in Iceland アイスランドの噴火 (英語)
参考文献
[編集 ]鎌田浩毅『地震と火山』学研パブリッシング、2014年、247–248頁。ISBN 9784054061651 。https://books.google.com/books?id=m9BJw6lH8SwC&pg=PA16 。
- Helgi Björnsson (2016). The Glaciers of Iceland: A Historical, Cultural and Scientific Overview. Translated by Julian Meldon D'Arcy. Springer. ISBN 9789462392076 . https://books.google.com/books?id=tuUyDQAAQBAJ&pg=PA225
- Nordvig, Mathias (2019). "Katla the Volcanic Witch: A Medieval Icelandic Recipe for Survival". In Overing, Gillian R.; Wiethaus, Ulrike. American/Medieval Goes North: Earth and Water in Transit. Göttingen: V&R Unipress. pp. 67–84. ISBN 9783847009528 . https://books.google.com/books?id=aLvkEAAAQBAJ&pg=PA67
外部リンク
[編集 ]- Volcanism 1 (英語)
- カトラ火山のウェブカメラ (アイスランド語)
- McMahon, Neil. "Folk tale: The story of Katla the hag and her magic breeches". Skafthreppur. 2024年3月1日閲覧。 (英語)(朗読の.mp3形式音声ファイルを埋め込み)
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