「一票の格差」の版間の差分
2015年11月28日 (土) 17:12時点における版
一票の格差(いっぴょうのかくさ)とは、選挙などで有権者が投じる票の有する価値の差、一票の重みの不平等を指す用語。主に国政選挙で用いられる。
何の差を基準として格差を判定するか
- 人口
- 比較調査した60か国のうち53%が指標としている[1] 。選出議員および非有権者(子供など)を含む全ての住民(国民)の代表とする考え方に基づく。日本でも、衆議院議員選挙区画定審議会設置法が人口を基準にしてその均衡を図ることを規定している。人口の格差の許容限度については、具体的な数値的基準を設けている国は25%であり、アメリカのように各選挙区で人口を等しくすることを求める国や、シンガポールのように各選挙区の1議席当たり有権者数を全国平均の上下30%以内まで認める国もある。韓国では各選挙区の人口が全国平均の上下50%を超えると違憲とする判例がある。オーストラリアでは、将来予測有権者数もふまえた区割りをしなければならない。
- 投票者数
- 選出議員は実際に投票した有権者の代表とする考え方に基づく。ドイツでは、この説に基づき、州選挙区の投票数に応じて開票後に定数配分が行われる。
- その他
- 行政区画や自然境界など地理的な要素を区割りに反映する国も多い。人口密度や過疎の度合いに考慮する国も12か国ある。地理的な要素としては、隣接性(contiguity)と緊密性(compactness)が考慮の対象となる国が多い。[1]
問題になる格差・問題にならない格差
政治家が、自分たちで法により選挙区を区分することに際して、そこに多数決の弊害による恣意が発生していないかが問題とされる。選挙方式では、むしろ州や自治体などの行政区境界を無視することで地域の一体性を損ねるものとし、たとえ一定の格差が生じても行政区画を単位とした選挙区割りを行うべきとの考えもある。行政区から独立した選挙区の設定を認めると、区割りの自由度が格段に増大することで格差を劇的に縮小できる反面、恣意的にゲリマンダーを行ったり、その疑いを持たれることも多くなる。
人口や有権者数は常に流動するものであるから、選挙区を区分する選挙では一票の格差が完全になくなることは通常はない。多くの国では一定の年数ごとに区割りを見直すことが法制化され、その年限以内に発生した格差程度は容認するものとしているものの、その事務の煩雑さも含めて問題とされている。
各選挙区の有権者数を揃えても、選挙区ごとに投票率が異なり総投票数に差が出るため、投票率の高い選挙区の一票の価値は小さくなり、投票率の低い選挙区の一票の価値は大きくなる。これは投票者数を基準として格差を測った場合の帰結であり、多くの国の法運用では採用されていない。同様に、各選挙区の人口を揃えても、選挙区ごとに人口に占める有権者の割合が異なり、有権者の割合の高い選挙区での一票の価値は小さくなり、有権者の割合の低い選挙区での一票の価値は大きくなる。これは有権者数を基準として格差を測った場合の帰結であり、これも多くの国の法運用では採用されていない。逆に、ドイツやイギリスなどのように多くの国とは異なる基準の法運用を行う国々では、各選挙区の人口格差が大きくなってもまったく問題にならない。これらの国々では格差を測るのに、人口を基準としない法運用をしているからである。中華人民共和国では、1995年の選挙法改正まで、8倍にのぼる都市と農村との間の一票の格差は、法運用上は問題にならなかった。
このように、問題となる格差・ならない格差は各国の法運用によって異なり、格差自体は問題にならなくても、格差を測る基準を定める法運用が問題視されることがある。中華人民共和国では、格差自体は問題にならなかったが、格差問題の有無を判断する法運用の方が問題とされ、2010年に農村と都市の間の格差を是正する法運用に改められた。
日本
日本では、2009年以前と以降とで、最高裁判所の判断に変化が見られる。2009年以前は著しい格差(衆議院で3倍、参議院で6倍ほど)のみを違憲ないし違憲状態としていたが、2009年以降は、一票の格差是正を積極的に促すような判決を下していて、その全てが違憲状態の判決である。ただし、定数配分を違憲ないし違憲状態とする判決においても、事情判決の法理によって選挙そのものは有効とされている。なお、投票価値の不平等が一般的に合理性を欠く状態が違憲状態であり、これが合理的な期間内に是正されない場合に違憲であるとされている。
2009年以前は一票の格差を問題視する住民は最大格差となっている選挙区のみで一票の格差を訴訟を提起していたが、2009年以降は一票の格差を問題視する住民は最大格差となっている選挙区のみの訴訟だけではなく、各高等裁判所管内の選挙区でも一票の格差の訴訟を提起し、各高裁において違憲又は違憲状態判決の数を背景に最高裁に判断を迫るという手法を取ってきている。
衆議院・参議院はこれまで一票の格差を是正することに取り組んできた。しかし、選挙制度改革とも関連しており政党や議員の利害が絡む問題であり、調整は必ずしも容易ではない。人口(有権者数)が多い選挙区の選出定数を増加させたり、区割りを変更したりするなどの抜本的な対策をおこなうべきと再三言われているが、十分な調整がなされていないと指摘されている。
衆議院小選挙区の一票の格差
衆議院では1994年以降選挙区画定審議会を設置し格差が2倍以上にならないことを目標にしているが、これは達成されていない。都道府県にまず議席を配分する基礎配分方式(1人別枠方式)と最大剰余方式を組み合わせていることが障害となっており、現状の方式を続ける限り実現は難しいといわれる。1人別枠方式は、結果的に人口の少ない地域の一票の重みを増大させており、票の格差を巡る裁判の判決において格差の要因であると指摘されている[2] 。格差を解消するために過去、議員定数について1986年「8増7減」、1992年「9増10減」、2002年「5増5減」の是正が実施された。
2000年国勢調査に基づく選挙区改定では、同審議会は(1)都道府県ごとの議席配分に増減が生じた場合、(2)都道府県ごとの議席配分に増減が生じなかった場合は選挙区の人口が議員1人当たりの人口(全国平均)の3分の4(1.333...)を上回った選挙区あるいは3分の2(0.666...)を下回った選挙区が存在した場合、(3)市町村合併があった場合で市町村ごとに選挙区の分断現象が生じた場合を対象に主な見直しを行った。その結果、改定時においても1人別枠方式の存在により都道府県ごとの議員1人当たりの人数が議員1人当たりの人口(全国平均)の3分の2を下回る県が生じてしまい、改定時から必然的に議員一人当たりの2倍以上の格差が生じることとなった。1人別枠方式について、最高裁判所大法廷は、導入当時(1994年)の激変緩和のための経過措置としては容認しうるものの、2009年総選挙の時点においてもはや合理性を有しておらず、憲法違反となっているとの判断を行った[3] 。なお、議員1人当たりの人口(全国平均)の3分の4を上回った選挙区あるいは3分の2を下回った選挙区という基準で選挙区の改定を行っているのは同枠内に仮にすべての選挙区の人口がおさまれば1票の格差が2倍以内にとどまることになるからである。
2011年3月の最高裁判決を受けて、選挙区是正が焦点となったが、各党が自党に有利な選挙制度にする思惑から様々な駆け引きが行われたため国会で法改正が進まなかった。最高裁判決から1年6ヶ月後の2012年11月16日に、小選挙区の1人別枠方式の規定削除と「0増5減」の選挙区見直しを定めた法案が国会で成立した。しかし、1人別枠方式は実質的に残されている[4] 。
2012年12月16日に投開票された第46回衆議院議員総選挙には、新たな選挙区の線引きが間に合わないため、2009年総選挙の違憲状態が解消されない状態で行われた[5] 。これにより、2013年3月25日に広島高裁に訴えのあった広島県第1区・広島県第2区について、約半年の猶予期間を経てから選挙無効の効力生じる手法を用いて戦後初の選挙無効判決が出て[6] (従来は全て「違憲状態又は違憲だが選挙は有効」という判決であった)、翌3月26日には広島高裁岡山支部に訴えのあった岡山県第2区について、猶予期間なしに選挙無効判決が出た。しかし、2013年11月20日に最高裁大法廷は「違憲状態」としながらも選挙自体は有効である判決を下した。
位 | 多い選挙区 | 人数 | 位 | 少ない選挙区 | 人数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 東京都第1区 | 493,811 | 1 | 宮城県第5区 | 231,660 |
2 | 北海道第1区 | 490,438 | 2 | 福島県第4区 | 234,210 |
3 | 東京都第3区 | 487,465 | 3 | 鳥取県第1区 | 238,498 |
4 | 東京都第5区 | 484,099 | 4 | 鳥取県第2区 | 239,286 |
5 | 兵庫県第6区 | 478,360 | 5 | 長崎県第3区 | 239,920 |
年 | 最多選挙区 | 人数 | 最少選挙区 | 人数 | 2倍超区数 | 最大格差 |
---|---|---|---|---|---|---|
第41回衆議院議員総選挙(1996年) | 神奈川県第14区 | 446,970 | 島根県第3区 | 192,999 | 62選挙区 | 2.316倍 |
第42回衆議院議員総選挙(2000年) | 神奈川県第14区 | 471,445 | 島根県第3区 | 191,241 | 87選挙区 | 2.465倍 |
第43回衆議院議員総選挙(2003年) | 千葉県第4区 | 459,501 | 徳島県第1区 | 213,689 | 27選挙区 | 2.150倍 |
第44回衆議院議員総選挙(2005年) | 東京都第6区 | 465,181 | 徳島県第1区 | 214,235 | 33選挙区 | 2.171倍 |
第45回衆議院議員総選挙(2009年) | 千葉県第4区 | 487,837 | 高知県第3区 | 211,750 | 45選挙区 | 2.304倍 |
第46回衆議院議員総選挙(2012年) | 千葉県第4区 | 495,212 | 高知県第3区 | 204,196 | 72選挙区 | 2.425倍 |
第47回衆議院議員総選挙(2014年) | 東京都第1区 | 492,025 | 宮城県第5区 | 231,081 | 13選挙区 | 2.129倍 |
年 | 最多選挙区 | 人数 | 最少選挙区 | 人数 | 2倍超区数 | 最大格差 |
---|---|---|---|---|---|---|
1995年(平成7年) | 神奈川県第14区 | 570,597 | 島根県第3区 | 247,147 | 60選挙区 | 2.309倍 |
2000年(平成12年) ※(注記)2002年区割変更前 |
神奈川県第7区 | 607,520 | 島根県第3区 | 236,103 | 95選挙区 | 2.573倍 |
2000年(平成12年) ※(注記)2002年区割変更後 |
兵庫県第6区 | 558,958 | 高知県第1区 | 270,755 | 9選挙区 | 2.064倍 |
2005年(平成17年) | 千葉県第4区 | 569,835 | 高知県第3区 | 258,681 | 48選挙区 | 2.203倍 |
2010年(平成22年) ※(注記)2013年区割変更前 |
千葉県第4区 | 609,040 | 高知県第3区 | 241,265 | 97選挙区 | 2.524倍 |
2010年(平成22年) ※(注記)2013年区割変更後 |
東京都第16区 | 581,677 | 鳥取県第2区 | 291,103 | 0選挙区 | 1.998倍 |
参議院選挙区の一票の格差
参議院は改革協議会の下に専門委員会を設置し議論しているが、衆議院に比べて是正は遅れている。参議院の場合は都道府県単位の選挙区設定と選挙区選出議員の定数設定の段階から一票の格差について構造的問題を抱えている。1994年に「8増8減」、2000年に定数削減、2006年に「4増4減」を実施した。2012年11月16日には「4増4減」する法案が国会で成立し、2013年の参議院議員選挙から適用された。
都道府県単位の選挙区設定について有権者数の少ない鳥取県と島根県の選挙区を合区すると一票の格差が是正されるため、そうした合区もたびたび提唱されるが、これには賛否両論がある。過去には最高裁判所の2004年判決の法廷意見に付された5名の判事による補足意見においても、合区した場合には「政治的にまとまりのある単位を構成する住民の意思を集約的に反映させることにより地方自治の本旨にかなうようにしていこうとする従来の都道府県単位の選挙区が果たしてきた意義ないし機能が果たされなくなるおそれがある」と述べて、合区が行われない現状に理解を示していた。
しかし、2010年参院選に関する最高裁の2012年判決では「都市部への人口集中による都道府県間の人口格差が拡大する中で総定数を増やす方法に制約があり、都道府県単位の選挙区を維持しながら投票価値の平等の実現を図ることはもはや著しく困難な状況」として[8] 、都道府県単位を選挙区とする選挙制度に否定的見解を述べた。
かつては定数2の選挙区が定数4の選挙区より有権者が多い逆転現象も存在していた。
参議院に関しては、アメリカ合衆国上院の制度のように、各都道府県から同人数の代表を選出する方式を採用すべきだという意見もある。これは1946年(昭和21年)12月に、地方区選挙制が盛り込まれた参議院選挙法案が貴族院に提出された時の趣旨説明で大村清一 内務大臣は「参議院の地方選出議員は地域代表的性格を持つ」と明言していたことから[9] 、各都道府県の同価値性を強調することで一票の格差という問題概念を理念的に無視するものである。しかし、この制度を導入すると、国会議員が地域(都道府県)代表としての性質を有することを理由として国民個々のもつ投票価値に大きな差異を生じさせることになるため、憲法第14条の平等権規定と憲法第43条に定められた「国会議員は全国民の代表者」という規定に反するおそれが強いことを指摘されている。そのため、このような制度は憲法改正をしない限り導入しえないともいわれる[10] 。
2015年の法改正では2012年の最高裁判決を踏まえて、有権者数の少ない4つの選挙区を2つの合区とすることを含めた「10増10減」が実施され、参議院初の選挙区の合区が実施された。
選挙区 | 定数 | 登録者数 | 一票の格差 |
---|---|---|---|
北海道選挙区 | 6人 | 4,424,026人 | 0 で除算しました。 倍 |
青森県選挙区 | 2人 | 1,054,074人 | 0 で除算しました。 倍 |
岩手県選挙区 | 2人 | 1,017,716人 | 0 で除算しました。 倍 |
宮城県選挙区 | 2人 | 1,913,773人 | 0 で除算しました。 倍 |
秋田県選挙区 | 2人 | 819,474人 | 0 で除算しました。 倍 |
山形県選挙区 | 2人 | 887,219人 | 0 で除算しました。 倍 |
福島県選挙区 | 2人 | 1,545,913人 | 0 で除算しました。 倍 |
茨城県選挙区 | 4人 | 2,399,889人 | 0 で除算しました。 倍 |
栃木県選挙区 | 2人 | 1,612,425人 | 0 で除算しました。 倍 |
群馬県選挙区 | 2人 | 1,598,441人 | 0 で除算しました。 倍 |
埼玉県選挙区 | 8人 | 6,164,504人 | 0 で除算しました。 倍 |
千葉県選挙区 | 6人 | 5,279,312人 | 0 で除算しました。 倍 |
神奈川県選挙区 | 8人 | 7,732,893人 | 0 で除算しました。 倍 |
山梨県選挙区 | 2人 | 680,538人 | 0 で除算しました。 倍 |
東京都選挙区 | 12人 | 11,554,700人 | 0 で除算しました。 倍 |
新潟県選挙区 | 2人 | 1,842,601人 | 0 で除算しました。 倍 |
富山県選挙区 | 2人 | 867,580人 | 0 で除算しました。 倍 |
石川県選挙区 | 2人 | 935,591人 | 0 で除算しました。 倍 |
福井県選挙区 | 2人 | 628,446人 | 0 で除算しました。 倍 |
長野県選挙区 | 2人 | 1,710,930人 | 0 で除算しました。 倍 |
岐阜県選挙区 | 2人 | 1,633,395人 | 0 で除算しました。 倍 |
静岡県選挙区 | 4人 | 3,016,115人 | 0 で除算しました。 倍 |
愛知県選挙区 | 8人 | 6,111,083人 | 0 で除算しました。 倍 |
三重県選挙区 | 2人 | 1,460,720人 | 0 で除算しました。 倍 |
滋賀県選挙区 | 2人 | 1,152,633人 | 0 で除算しました。 倍 |
京都府選挙区 | 4人 | 2,084,943人 | 0 で除算しました。 倍 |
大阪府選挙区 | 8人 | 7,302,647人 | 0 で除算しました。 倍 |
兵庫県選挙区 | 6人 | 4,539,287人 | 0 で除算しました。 倍 |
奈良県選挙区 | 2人 | 1,121,510人 | 0 で除算しました。 倍 |
和歌山県選挙区 | 2人 | 786,202人 | 0 で除算しました。 倍 |
鳥取県選挙区 | 0人 | 0人 | 0 で除算しました。 倍 |
島根県選挙区 | 0人 | 0人 | 0 で除算しました。 倍 |
岡山県選挙区 | 2人 | 1,550,291人 | 0 で除算しました。 倍 |
広島県選挙区 | 4人 | 2,297,308人 | 0 で除算しました。 倍 |
山口県選挙区 | 2人 | 1,120,406人 | 0 で除算しました。 倍 |
徳島県選挙区 | 0人 | 0人 | 0 で除算しました。 倍 |
香川県選挙区 | 2人 | 800,572人 | 0 で除算しました。 倍 |
愛媛県選挙区 | 2人 | 1,121,812人 | 0 で除算しました。 倍 |
高知県選挙区 | 0人 | 0人 | 0 で除算しました。 倍 |
福岡県選挙区 | 6人 | 4,223,753人 | 0 で除算しました。 倍 |
佐賀県選挙区 | 2人 | 667,054人 | 0 で除算しました。 倍 |
長崎県選挙区 | 2人 | 1,092,899人 | 0 で除算しました。 倍 |
熊本県選挙区 | 2人 | 1,440,373人 | 0 で除算しました。 倍 |
大分県選挙区 | 2人 | 941,523人 | 0 で除算しました。 倍 |
宮崎県選挙区 | 2人 | 887,608人 | 0 で除算しました。 倍 |
鹿児島県選挙区 | 2人 | 1,319,420人 | 0 で除算しました。 倍 |
沖縄県選挙区 | 2人 | 1,178,239人 | 0 で除算しました。 倍 |
年 | 最多選挙区 | 人数 | 最少選挙区 | 人数 | 格差 |
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第11回参議院議員通常選挙(1977年) | 神奈川県選挙区 | 1,113,463 | 鳥取県選挙区 | 211,507 | 5.264倍 |
第12回参議院議員通常選挙(1980年) | 神奈川県選挙区 | 1,171,382 | 鳥取県選挙区 | 217,992 | 5.374倍 |
第13回参議院議員通常選挙(1983年) | 神奈川県選挙区 | 1,238,208 | 鳥取県選挙区 | 222,848 | 5.556倍 |
第14回参議院議員通常選挙(1986年) | 神奈川県選挙区 | 1,320,491 | 鳥取県選挙区 | 225,601 | 5.853倍 |
第15回参議院議員通常選挙(1989年) | 神奈川県選挙区 | 1,431,227 | 鳥取県選挙区 | 229,034 | 6.249倍 |
第16回参議院議員通常選挙(1992年) | 神奈川県選挙区 | 1,527,439 | 鳥取県選挙区 | 231,933 | 6.586倍 |
第17回参議院議員通常選挙(1995年) | 東京都選挙区 | 1,177,394 | 鳥取県選挙区 | 236,919 | 4.970倍 |
第18回参議院議員通常選挙(1998年) | 東京都選挙区 | 1,197,651 | 鳥取県選挙区 | 240,722 | 4.975倍 |
第19回参議院議員通常選挙(2001年) | 東京都選挙区 | 1,233,477 | 鳥取県選挙区 | 244,913 | 5.036倍 |
第20回参議院議員通常選挙(2004年) | 東京都選挙区 | 1,264,178 | 鳥取県選挙区 | 246,218 | 5.134倍 |
第21回参議院議員通常選挙(2007年) | 神奈川県選挙区 | 1,197,275 | 鳥取県選挙区 | 246,434 | 4.858倍 |
第22回参議院議員通常選挙(2010年) | 神奈川県選挙区 | 1,215,760 | 鳥取県選挙区 | 242,956 | 5.004倍 |
第23回参議院議員通常選挙(2013年) | 北海道選挙区 | 1,149,739 | 鳥取県選挙区 | 241,096 | 4.769倍 |
年 | 最多選挙区 | 人数 | 最少選挙区 | 人数 | 格差 |
---|---|---|---|---|---|
1975年(昭和50年) | 神奈川県選挙区 | 1,599,437 | 鳥取県選挙区 | 290,656 | 5.503倍 |
1980年(昭和55年) | 神奈川県選挙区 | 1,731,087 | 鳥取県選挙区 | 302,111 | 5.730倍 |
1985年(昭和60年) | 神奈川県選挙区 | 1,857,994 | 鳥取県選挙区 | 308,012 | 6.032倍 |
1990年(平成2年) | 神奈川県選挙区 | 1,995,098 | 鳥取県選挙区 | 307,861 | 6.481倍 |
1995年(平成7年) | 東京都選挙区 | 1,471,701 | 鳥取県選挙区 | 307,465 | 4.787倍 |
2000年(平成12年) | 東京都選挙区 | 1,508,013 | 鳥取県選挙区 | 306,645 | 4.918倍 |
2005年(平成17年) | 大阪府選挙区 | 1,469,528 | 鳥取県選挙区 | 303,506 | 4.842倍 |
2010年(平成22年) ※(注記)2012年法改正前 |
神奈川県選挙区 | 1,508,055 | 鳥取県選挙区 | 294,334 | 5.124倍 |
2010年(平成22年) ※(注記)2012年法改正後 |
兵庫県選挙区 | 1,397,033 | 鳥取県選挙区 | 294,334 | 4.746倍 |
地方議会選挙での一票の格差
都道府県議会選挙でも一票の格差の問題が指摘されている。また公職選挙法第271条では地域事情による特例選挙区の設置が認められている。学説では特例選挙区の設置は島部選挙区のような他の選挙区との合区が著しく困難な場合に限られるとする見解もあるが、最高裁は特例選挙区は都道府県議会の合理的な裁量の行使に委ねられるとする。
1991年愛知県議会議員選挙では、例外的に置かれている特例選挙区によって発生した5.02倍の格差(南設楽郡選挙区と西尾市選挙区)について1993年10月22日に最高裁判所は合憲としている。
最高裁判決例
対象選挙 | 投票日 | 判決日 | 衆議院 | 参議院 | ||
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格差 | 判決 | 格差 | 判決 | |||
1962年参院選 | 1962年 7月1日 | 1964年(昭和39年)2月5日 | - | 4.09 | 合憲 | |
1971年参院選 | 1971年 6月27日 | 1974年(昭和49年)4月25日(第1小法廷) | - | 5.08 | 合憲 | |
1972年衆院選 | 1972年 12月10日 | 1976年(昭和51年)4月14日 | 4.99 | 違憲 | - | |
1977年参院選 | 1977年 7月10日 | 1983年(昭和58年)4月27日 | - | 5.26 | 合憲 | |
1980年衆院選 | 1980年 6月22日 | 1983年(昭和58年)11月7日 | 3.94 | 違憲状態 | - | |
1980年参院選 | 1980年6月22日 | 1986年(昭和61年)3月27日(第1小法廷) | - | 5.37 | 合憲 | |
1983年参院選 | 1983年6月26日 | 1987年(昭和62年)9月24日(第1小法廷) | - | 5.56 | 合憲 | |
1983年衆院選 | 1983年12月18日 | 1985年(昭和60年)7月17日 | 4.40 | 違憲 | - | |
1986年衆院選 | 1986年7月6日 | 1988年(昭和63年)10月21日 | 2.92 | 合憲 | - | |
1986年参院選 | 1986年7月6日 | 1988年(昭和63年)10月21日(第2小法廷) | - | 5.85 | 合憲 | |
1990年衆院選 | 1990年 2月18日 | 1993年(平成5年)1月20日 | 3.18 | 違憲状態 | - | |
1992年参院選 | 1992年 7月26日 | 1996年(平成8年)9月11日 | - | 6.59 | 違憲状態 | |
1993年衆院選 | 1993年7月18日 | 1995年(平成7年)6月8日 | 2.82 | 合憲 | - | |
1995年参院選 | 1995年7月23日 | 1998年(平成10年)9月2日 | - | 4.97 | 合憲 | |
1996年衆院選 | 1996年10月20日 | 1999年(平成11年)11月10日 | 2.309 | 合憲 | - | |
1998年参院選 | 1998年7月12日 | 2000年(平成12年)9月6日 | - | 4.98 | 合憲 | |
2000年衆院選 | 2000年6月25日 | 2001年(平成13年)12月18日 | 2.471 | 合憲 | - | |
2001年参院選 | 2001年 7月29日 | 2004年(平成16年)1月14日 | - | 5.06 | 合憲 | |
2003年衆院選 | 2003年11月9日 | 2005年(平成17年)9月27日 | 2.064 | 却下 | - | |
2004年参院選 | 2004年7月11日 | 2006年(平成18年)10月4日 | - | 5.13 | 合憲 | |
2005年衆院選 | 2005年 9月11日 | 2007年(平成19年)6月13日 | 2.171 | 合憲 | - | |
2007年参院選 | 2007年7月29日 | 2009年(平成21年)9月30日 | - | 4.86 | 合憲 | |
2009年衆院選 | 2009年8月30日 | 2011年(平成23年)3月23日 | 2.304 | 違憲状態 | - | |
2010年参院選 | 2010年7月11日 | 2012年(平成24年)10月17日 | - | 5.00 | 違憲状態 | |
2012年衆院選 | 2012年12月16日 | 2013年(平成25年)11月20日 | 2.43 | 違憲状態 | - | |
2013年参院選 | 2013年7月21日 | 2014年(平成26年)11月26日 | - | 4.77 | 違憲状態 | |
2014年衆院選 | 2014年12月14日 | 2015年(平成27年)11月25日 | 2.13 | 違憲状態 | - |
アメリカ合衆国
上院は各州2議席が割り当てられることが憲法条文で明記されている。さらにこの条項の改正に限っては、改憲により議席割合の減少するすべての州の同意が必要と規定されている。当初の憲法では州議会が上院議員を選出することになっており、人民を代表する下院に対して、上院は州の代表に位置づけられている。したがって、格差に換算すると70倍を超えるが、憲法違反とはならない。
下院議席は各州に人口に比例して割り当てられることが憲法に規定されている。10年ごとの国勢調査に基づき、州ごとにヒル方式で議席を配分したうえ、州ごとの定めに従って州内で均等に区割りをする。州ごとに整数の議席数を割り当てることにともなって必然的に生じる一定の格差は許容範囲とされるが、同じ州内の各選挙区同士の人口については厳しく平等性が求められ、行政区画とは独立に選挙区が設定される。不平等があれば違憲立法審査の対象となり、裁判所から具体的な是正命令が下る。
また、州議会選挙の選挙区の格差に対しても、連邦裁判所による是正命令が下される。州下院はもとより、州上院に関しても格差は容認されない。そのため、連邦上院にならって各郡に同数の議席を割り振るといったことは、現代では禁止されている。
現時点においては、選挙区あたりの人口数の格差はあまり問題となっておらず、むしろ党派や人種・言語間の格差について問題とされ、ゲリマンダーに関してたびたび議論が起こる[12] 。
イギリス
イギリスには、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの地域ごとに、裁判官などで構成される"境界委員会"が置かれており、10年程度に1度、有権者数に応じて選挙区の区割りを見直し、選挙区の分割や合併などの再編成が行われる。 現在は、各選挙区の有権者がおおむね5万人-7万5000人になるように調整されているが[13] 、離島の選挙区は例外になっており、最大の格差は有権者が約2万2000人のアウターヘブリディーズ諸島選挙区と、約11万人のワイト島選挙区との間の5倍程度である。これは、「本来の再編成を行った場合、ワイト島では選挙区が2分割される」として、住民が反対しているためである。
かつてイギリスでは、投票者人口が極端に少ない腐敗選挙区が存在したが、1832年に行なわれた法改正で消滅した。またスコットランドには多くの定数が配分され、意図的に議員数を多くしていたが、独自の議会が設置されるなど自治権が拡大され、国政上の優遇の必要がなくなったことから、スコットランドの定数は削減された。現在では、平均してイングランドに比べてスコットランドが1.1倍、ウェールズが1.2倍程度の優遇になっている程度である。
フランス
原則1.50倍以内で調整することになっている。しかし、実際には農村部などに人口の少ない選挙区が存在し、1999年の国勢調査ではヴァル=ドワーズ県第2区とロゼール県第2区の間に、5倍以上の格差が確認された。その後、2010年の選挙区再編によって、最大格差は2.37倍まで縮まっている(フランス本土のみでの比較値。セーヌ=マリティーム県第6区とオート=アルプ県第2区との間)。
ドイツ
総選挙があるたびに、1年以内に一票の格差を是正する。
全人口を選挙区数で割り、1議席あたりの人口の平均値を求め、原則としてこの+25%から-25%に収まるように区割りがなされる。ただし、州境を超えないようにするためにやむを得ない場合などは+33%から-33%まで許容される。このため、最大格差は2倍まで発生し得る。
比例ブロックは、開票後、実際に投票した者の数に比例して定数を配分する。このため、投票率の低いブロックの有権者一人当たりの議員数は減少し、一票の格差が生じる。
イタリア
1.22倍以内で調整。
イスラエル
全国一区の比例代表制のため、議席は投票者数に比例して配分される。区割りそのものが存在しないため、一票の格差は生じない。
オランダ
全国一区の比例代表制のため、議席は投票者数に比例して配分される。区割りそのものが存在しないため、一票の格差は生じない。
脚注
- ^ a b c 諸外国における選挙区割りの見直し - 国立国会図書館デジタルコレクション(PDFファイル)
- ^ 衆院区割り見直し難航...市町村合併や格差判決で 読売新聞2011年2月26日
- ^ 平成22(行ツ)207 選挙無効請求事件 (PDF) 2011年3月23日
- ^ 小選挙区定数0増5減/衆院区割り審28日勧告 四国新聞 2013年3月28日
- ^ 【衆院解散】午後に衆院解散 「0増5減」成立へ 違憲状態は解消せず 産経新聞
- ^ 広島高裁が選挙無効判決 1票の格差訴訟、戦後初めて 共同通信
- ^ a b c d e f 総務省. "平成26年9月2日現在選挙人名簿及び在外選挙人名簿登録者数". 2014年12月27日閲覧。
- ^ 平成23(行ツ)64 選挙無効請求事件 (PDF) 2012年10月17日
- ^ 地方自治研究資料センター「戦後自治史III(参議院議員選挙法の制定)」(文生書院)
- ^ 衆議院憲法調査会平成16年12月02日議事録
- ^ 過去の議員定数是正訴訟最高裁判決 (PDF) 経済同友会
- ^ 森脇俊雄『小選挙区制と区割り: 制度と実態の国際比較』芦書房、1998年。
- ^ 一覧はイギリス次回総選挙の選挙区(英語)を参照のこと。
参考文献
- 三輪和宏 河島太朗 参議院の一票の格差・定数是正問題―我が国・諸外国の現状と論点整理― 国立国会図書館 ISSUE BRIEF 調査と情報 第610号(2008年3月)
関連項目
外部リンク
- 参院選挙改革:西岡議長「1票の格差は1.9倍が限度」、毎日新聞、2011年7月28日
- 総務省(選挙関連資料)
- 一票の格差の意義を考える会
- 一票の格差を考える会
- 経済同友会 一票の格差是正ウェッブサイト
- "「一人一票」を実現しよう!" 弁護士 升永英俊 ブログ
- 一人一票実現国民会議
- 全国の一人一票実現裁判を応援しよう! - 1person x 1vote プロジェクト -
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