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2025年8月25日 (月)

サマーフォーラムinきょうと(2・3日目:8月9-10日)

58回全国手話通訳問題研究集会〜サマーフォーラムinきょうと〜平和と人権はいのち 仲間と共に京都から〜

【講座・分科会】

2日目(8月9日)と3日目(8月10日)は、「講座」と「分科会」が行われました。

「こども企画」は8月8日〜10日の3日間です。

また、2日目の夜は、「実態調査相談会」「労働関係者の集い」「N-Actionのつどい」が行われました。

講座はA〜Dの4つに分かれています。A講座は、京都府を北部コースと南部コースに分かれて、手話関連施設をめぐる「体験学習」でした。

1_20250825172701 いこいの村聴覚言語障害センター

2_20250825172701 全国手話研修センター

B講座は入門で、全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会の歴史や「京都の自治体手話通訳者の仕事から学ぶ」などの内容でした。

C講座は人権・福祉として、「障がい者と女性の2つの差別と闘って」「旧優生保護法の実態」などについて学びました。

D講座は地域づくりで、「地域課題と住民活動」「自然災害から暮らしを守るために」なども学びました。

講座と並行して行われた6つの「分科会」では、今年度は33本のレポートと昨年度の10本に比べ多くのレポートの提出があり、熱い討議が行われました。私(伊藤)が司会をした第3分科会「手話通訳制度・しくみづくり」は、5本のレポートがありました。「地域生活支援事業の改革を国に働きかけるという提言の確認と認識の共有、運動の必要性」「地域間格差解消や資料の行政交渉への活用」「若年層の手話通訳者養成モデル事業が今後は地域生活支援促進事業としての展開の可能性ということだが、実現した場合はどのような影響があるか。また想定される課題など」「地域での相談支援と就労支援の統合に対して何が必要か」「企業が手話通訳を依頼するように働きかけるには何が必要か」「きこえない社員の働きやすさや働きがい」を柱に議論が活発に繰り広げられました。分科会でレポート発表した人は、「地元の実践をレポート発表できた」「来年もレポート発表したい」と語っていました。

また、今集会のテーマに「平和と人権はいのち」を掲げており、集会2日目の8月9日は、長崎原爆祈りの日で112分、各会場で黙とうが行われました。

3_20250825172701 4_20250825172701 分科会の様子

5_20250825172701 ストレッチ

6_20250825172701 黙とう

【閉会式】

最終日(8月10日)の「閉会式」で、最初に参加者の注目を集めたのが「こども企画」に参加した可愛いこどもたちからのコメントでした。一人ひとりが、2泊3日の楽しかった体験を手話で発表してくれました。

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主催の2団体の全日本ろうあ連盟の河原雅浩副理事長と全国手話通訳問題研究会の渡辺正夫会長から、きょうと集会の総括がありました。「この集合はひとえに京都実行委員会の団結で開催できた。素晴らしい集会になった」と、開催地である京都の頑張りを称える挨拶でした。

全日本ろうあ連盟小林泉理事からデフリンピックのキャラバン活動の進捗状況、全通研横溝和恵理事・岩谷誠司理事から機関誌『全国手話通訳問題研究』のPRがありました。

9_20250825172701 小林泉理事

10_20250825172701 横溝和恵理事・岩谷誠司理事

京都実行委員会の𠮷田実行委員長からは、「2年間いろいろなことがあって大変だったが、無事に集会をやり遂げることができた」と挨拶がありました。

11_20250825172701

来年度開催の静岡への引継ぎを行いました。皆で、来年は必ず静岡で再会することを誓いました。

なお、聴覚障害者災害救援本部の募金活動が行われ、30万円近くのご厚志が集まったことが報告されました。

今回の「サマーフォーラムinきょうと」は、京都の実行委員会の団結で、成功裏に集会を終えることができました。最後に、集会テーマの「平和と人権はいのち 仲間と共に京都から〜」を見事に実現した京都の実行委員会の皆さんと、関係の方々に改めて深く感謝したいと思います。

京都の皆様お疲れ様でした。

12_20250825172701

静岡の皆様よろしくお願いします。

13_20250825172701

14_20250825172701 𠮷田航実行委員長最後の挨拶

今年は、地元京都を始め多くのレポートを提出していただき、議論を深めることができました。近年の集会最終日の分科会は、参加者が減ることが多いのですが、今年は、ほぼ全員参加されました。以前の冬の討論集会を思い起こすような議論になりました。是非、来年以降も引き続きレポートを提出し、議論を深めていただければと思います。

ありがとうございました。

<番外編>

京都は、会議などでよく来る場所ですが、今回は会場が京都テルサだったので、ホテルからはほぼ徒歩圏内でした。

大雨の影響で、最終日にはまさかのJRが運休となり、いつ何が起こるか分からない、そんな体験も含め、とても思い出深い集会になりました。

翌日が祝日だったので、私は以前から10日の宿を予約しており、難を免れまれました。午後から、雨の中、歩いて伏見稲荷大社に行ってきました。外国人が多いのは聞いてはいましたが、こんなにかとびっくりしました。名物がいなりずしということは知っていましたが、すずめの焼き鳥は知りませんでした。

15_20250825172701 伏見稲荷

翌日、山陽新幹線はまだダイヤが乱れていたので、ディズニー新幹線に出会いました。

16_20250825172701 ディズニー新幹線

皆様お世話になりました。

(写真・文/全通研研究・活動推進部長 伊藤利明)

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サマーフォーラムinきょうと(1日目:8月8日)

58回全国手話通訳問題研究集会〜サマーフォーラムinきょうと〜平和と人権はいのち 仲間と共に京都から〜

1,333名が手話の聖地京都に」

8月8日〜10日に「第58回全国手話通訳問題研究集会〜サマーフォーラムinきょうと〜」を京都府京都市の「京都テルサ」にて開催されました。研究・活動推進部長の伊藤より、集会の3日間の様子をお伝えします。今回は、3日間通して会場が京都駅から徒歩圏内の「京都テルサ」で大変便利でした。

例年、台風等で開催が危ぶまれることもありますが、今年は特に混乱もなく無事に開催することができました。ただ、集会閉会後に大雨で新幹線が運休し、九州・四国・中国地方等の参加者の中で、延泊や駅近辺での宿泊を余儀なくされた方もいらっしゃいました。

【オープニング(京都聖母学院中学校・高等学校ダンス部)

すばらしいダンスで若い皆様の躍動感に圧倒されました。厳しい練習を積まれた成果と感じました。

1_20250825170201

【開会式】

開会にあたり、「サマーフォーラムinきょうと」の𠮷田航実行委員長から歓迎の挨拶があり、次に主催者より、全日本ろうあ連盟 石橋大吾理事長と、全国手話通訳問題研究会 渡辺正夫会長が挨拶しました。

2_20250825170201 主催者

3_20250825170201 石橋大吾理事長

4_20250825170201 渡辺正夫会長

京都府 西脇隆俊知事(代理:古川博規副知事)、京都市 松井孝治市長(代理:吉田良比呂副市長)をはじめ、来賓の方々から挨拶がありました。

5_20250825170201 来賓

次に、特別報告として、全日本ろうあ連盟の吉野幸代理事から「優生保護法問題の全面解決に向けて」についての説明と、同じく全日本ろうあ連盟の河原雅浩副理事長から「手話施策推進法」について、説明がありました。

[画像:6_20250825170201]吉野幸代理事 7_20250825170201 河原副理事長

最後に、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 吉元信治室長補佐による特別講演「意思疎通支援事業の現状と最新情報について(若年層の手話通訳者養成事業を含む)」が行われました。

8_20250825170201 吉元信治室長補佐

【記念講演】

「マンガと偏見の複雑な関係〜本当に「マンガはわかりやすい」のか〜」をテーマに、京都精華大学マンガ学部教授 吉村和真氏より、記念講演がありました。

「ステレオタイプ(固定観念)や偏見は感情、差別は行為と、分けると理解しやすい。マンガにはさまざまな文法やルールがあり、簡単に読めてしまう習慣や環境が問題でもあり、知らない間に身についていく」などの話がありました。講演を聞いて、京都国際マンガミュージアムに行こうと思った人はたくさんいるのではと思いました。

聴覚障害とマンガにこれほどの深い関係があるのかと感じました。聴覚障害に対する認識や理解を社会に広めることがマンガでできることが分かったので、今後、マンガを読むときの見方が変わるように思いました。

9_20250825170101 吉村和真氏

【交流会】 ホテルグランヴィア京都

その夜、行われた「交流会」です。

243名と多くの参加者があり、クイズなどで大いに盛り上がった交流できました。また、ホテルグランヴィア京都は初めてでしたが、料理がとてもおいしかったです。

渡辺会長からの閉会の挨拶では「ホテルスタッフが手話を使い、コミュニケーションを図ろうとがんばっている様子が伺え、手話施策推進法の影響では」と、法制定によって社会の変化が垣間見えた瞬間だと喜びの言葉がありました。

10_20250826090501 渡辺正夫会長

(写真・文/全通研研究・活動推進部長 伊藤利明)

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2025年8月19日 (火)

第1回WASLIアジア会議 報告(帰国後番外編)

マレーシアでは、レモングラスティーを広く一般的に飲む習慣があるようです。私は今回初めて口にして、そのさっぱり感とレモンの香りがとても気に入ってしまいました!私が「おいしい、好き!」と言うと、WASLIアジア会議に一緒に参加していたマレーシア人ろう者がこぞってその効能を説明してくれました。免疫力向上、炎症を抑える、疲れをとる、リラックスできてとても体に良い...などなど、だそうです。そしてその場で作り方の動画を探してくれました。すっかり気に入った私は、日本でもまた飲みたいと思い、その動画をシェアしてくれるようお願いしました。実は、日本にもティーバッグやペットボトルで販売しているらしいのですが、その時は全く知りませんでした。日本では生のレモングラスを手に入れることは難しいだろうとは想像できましたが、「絶対に作りたい!」と心に決め帰国しました。そして帰国後、早速オンラインショップでポチり、数日で届きました!

[画像:1_20250819135301] 開封時のレモングラス

2_20250819135301

動画を見ながら切って、叩いて、沸騰させながら煮ました。手順はいたって簡単です。生姜を皮付きのまま、まるごと叩き潰すのはなかなかのエキゾチックな感覚でした。

[画像:3_20250819135301] 準備完了、沸騰中

マレーシアでは氷に注いで飲みましたが、私は炭酸水で割ってみました。

[画像:4_20250819135301] レモングラスティー!

自分ではマレーシアで飲んだあの味を再現できたのではないかと大満足です!(今も飲みながら書いています。笑)最近の蒸し暑い気候にこのさっぱり、スッキリ感が最高で、帰宅中に、早くレモングラスティーが飲みたいと考えてしまう程はまっています。私はお砂糖は入れませんでしたが、本来マレーシアでは甘い飲み物が多いそうです。レモングラスティー未経験の方にはぜひ夏の間にアイスで試していただくことをお勧めしたいところですが、実際は好みとしては二分されるようです。(日本人の場合)

レモングラスはマレー語でスライと言い、市場などで手軽に日本とは桁違いの値段で手に入り、お料理にも欠かせないハーブなのだそうです。土地の風土や慣習的によるので日本でこれを手作りすることには少々無理があるのかもしれませんが、私にとっては思いがけず新しい味との出会いとなりました。

(文・写真:国際担当 内田美春)

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2025年8月18日 (月)

第1回WASLIアジア会議 報告(全体所感)

第1回WASLIアジア2025会議も無事に全日程を終了しました。

今回の参加者は187人。ろう者が71人、難聴者2人、聴者114人。これまでのアジア会議に比べるとろう者の参加が増えました。国別の参加者は開催国であるマレーシア72人、インドネシア17人、フィリピン17人、やはり近隣諸国は多いですね。次いで日本が15人、デフリンピックの手話通訳やボランティアを担当するので予行練習のために参加したという方もいました。シンガポール13人、香港12人、中国12人、韓国8人、オーストアーラリア4人、インド4人、マカオ2人、モルディブ2人、パキスタン2人。コスタリカ、ドイツ、モンゴル、南アフリカ、台湾、英国、米国からは1人ずつでした。アジアのイベントでしたが、アジア以外の国からも参加があり嬉しいことです。

今回のWASLIアジア2025会議で感じたことは、ろう者の参加が増えたこと。国際手話を使える人が増えたこと。手話通訳者のメンタルへルスに関する発表が多かったことでしょうか。

WASLIは2019年から各地域代表としてろう者と聴者を一人ずつ選出するようになりました。2020年からは新型コロナウイルス感染拡大により移動が制限され、従来のようにどこかの国に集まってアジア会議を開催することができなくなりました。そこで、アジアでは各国のろう者の要望に応えて、精力的にオンラインでの研修やワークショップを開催してきました。その成果か、2023年のWASLI会議 in 韓国や、2024年にインドネシアで久しぶりに開催したアジア手話通訳者会議には、たくさんのろう者が出席しました。

会場では基本的に国際手話が使われます。国際手話の広がりはこの7年間で大きく変化したところかと思います。日本では11月に開催される東京2025デフリンピックに向けて、全日本ろうあ連盟が国際手話講座を開催してきましたが、言語は使用を継続しないと忘れてしまいますね。せっかく習得した国際手話を定着させるためにも、ぜひ今後の国際イベントにご参加ください。

[画像:1_20250818172001]閉会式挨拶

今回の会議では、国際手話の通訳チーム6人とマレーシア手話の通訳チーム7人が通訳を担当しました。ステージの右側には国際手話通訳者が、左側にはマレーシア手話通訳者がそれぞれ配置されました。 国際手話通訳チームはアジアだけでなく、オーストラリアの聴者の通訳者も加わってくれました。ところが、私のなんちゃって国際手話は読み取りにくかったようで(通訳者さん、ごめんなさい...)しばしば通訳が途切れることがありました。そのようなときは、アジアの手話通訳者がすかさずフォローに入り(アジア同士は通じるのか...?)、さらに、アジアろう地域代表がステージ下に移動してきて、私に国際手話をフォローしてくれました。このような手話通訳者の機敏な行動も見事なものです。チームで通訳を担う意識が根付いているように感じました。

[画像:2_20250818172001]WASLIアジア代表挨拶をフォローする通訳チーム

WASLI設立当時、アジアの国会員(全国レベルの手話通訳者協会)は片手にも満たない数でしたが、現在は14協会となりました。手話通訳者の組織が作られるということは、共に課題に立ち向かい、共に嬉しさを分かち合う仲間ができるということです。国ごとに課題は異なるかもしれませんが、それぞれの経験を交流して共に手話通訳の未来を変革していきたいと思います。それがろう者をはじめすべての人が共に生きる社会を豊かにすることになりますから。そして、国内でも各地域の取り組みを全国で共有し、共によりよい未来を創っていきましょう。

[画像:3_20250818172001]WASLIアジア地域代表3人組

(文・写真 副会長 宮澤典子)

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2025年8月12日 (火)

第1回WASLIアジア会議 報告(4日目:8月3日)

第1回WASLIアジア会議 報告(4日目:83日)

1WASLIアジア会議の最終日は、2つのセッションがありました。

最初に行われたトークセッション「Crossfire:Ethical Perspectives Across Generations: Comparing Views of the Old and Young(世代を超えた倫理的視点:古い世代と若い世代の比較)」では、中堅どころのモデレーターと若手手話通訳者2名、先輩手話通訳者2名が2つのテーマについて意見交換をしました。

テーマ1は「ソーシャルメディアについて」。デジタルエイジと呼ばれる若者層にとってソーシャルメディアはごく身近なものです。発信はもとより、ソーシャルメディアから情報や知識を得ようとするのはごく当たり前のことで、年配層とは感覚が違います。ソーシャルメディアは情報を拡散したり、手話通訳に関する認知度を上げるのに効果的ではありますが、やはり使い方を間違えると怖いものです。近年、ライブ会場や会見における手話通訳場面の写真が投稿されることも増えました。たしかにそれらは公開されているものではありますが、手話通訳者自身が自己のアカウントで投稿するのはいかがなものでしょうか。また、手話通訳活動とは区別しているつもりでも、個人の私生活を投稿することで、手話通訳利用者からのストーカーに発展するケースもあります。手話通訳をする人がソーシャルメディアと付き合う際は慎重さが求められます。

テーマ2は「バーンアウトについて」。これは今回の会議中よく取り上げられていたテーマです。年配層は経験の中からストレスとうまく付き合う術を身に着けた人が多いですが、若年層はやはり一つ一つの案件が負担になり、一人では処理しきれなくなることも多いようです。ライフレベルが0になる前にスーパービジョンを受けたり、友人と話すなど、早めの手当が大切です。ストレスについて、ろうの手話通訳者が、手話通訳行為自体はもともとストレスフルなものなので、終了後や帰宅後は気持ちを切り替えるようにして乗り切れるが、聴者や音声言語に囲まれたり、デフ・スペースがない空間に身を置かなければならないときが一番ストレスであると語っていました。

人の思考は話し合うことで共有されます。言語の違いが思考に影響するように、年代の違いもまた思考や感覚に影響します。しかし、繰り返し話し合うことでお互いの思考や情報を共有できるはずです。私たちは手話通訳というコミュニケーションを仲介する素晴らしい活動をしています。手話通訳者同士、仲間同士、意見の違いをとことん話し合って相互理解に到達したいものだと強く思いました。

1_20250812170401 トークセッション

次に行われたのはパネルディスカッション「The Business of Interpreting: Strategies for Fair Compensation and Sustainable Management(通訳のビジネス:公正な報酬と持続可能な管理のための戦略)」です。韓国、シンガポール、フィリピン、マレーシアの代表がパネラーとなり、手話通訳の道に入ったきっかけや、活動を始めた頃の体験などを語りました。昔は手話通訳養成がなかったことや、行政からの支援がなかったので、すべてボランティアだったことなどが語られました。どの国も始まりは似ていますね。

ただ、マレーシアやフィリピン、韓国などは、アメリカやカナダを参考にして大学における手話通訳養成を始めました。そのため若い手話通訳者が多いです。さらに、フィリピンや韓国は手話に関する法制度を整備し、手話通訳の保障が拡大しました。それでもまだ報酬が十分ではなかったり、社会的立場が弱いと言います。そのため、手話通訳のほかに仕事を持っていて、手話通訳に行くときは本業を休んでいくことも多いとか。これも日本と似ていますね。

通訳制度が整備されていないために、妊婦検診に男性の手話通訳者が派遣されたり、通訳報酬として魚をもらったりなど、今となっては笑い話のような体験談もこぼれてきました。

また、シンガポールのように民族も宗教も複数あるような国では、通訳者は多岐にわたる知識を備えていなければなりません。知識がなければ通訳できない。それで不利益を被るのは通訳利用者なのだ、という意識は通訳者の鏡だと思えます。

日本でもようやく「手話施策推進法」が可決成立しました。障害者権利条約が謳う「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(第21条)」の実現のため、法律を味方につけ制度の充実に取り組まなければならないと強く思いました。

2_20250812170401 パネルディスカッション

(文・写真 副会長 宮澤典子)

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2025年8月 6日 (水)

だいやまーく第1回WASLIアジア会議 報告(3日目:8月2日)その2

今回のアジア会議の講演等に関して、全体的に「通訳」や「手話」のアカデミックな内容というより、一般人にも自分事として理解できるテーマも取り上げられているように感じました。

特に多く目に(耳に)して気になったキーワードは、ストレスの多い特殊な職務である手話通訳に関する「メンタルヘルス」「バーンアウト」「メンター」です。今日の基調講演でもテーマとなっていました。日本でももちろん語られてはいますが、ほかのアジア地域ではもっと広く身近に語られて、とても大切にされている分野のような印象を受けました。

[画像:1_20250806164101]

[画像:2_20250806164201](メンターシップ)

[画像:3_20250806164101](レジリエンス)

講演者が毎日行っている呼吸法を会場のみんなで一緒に体験してみたり、また、まるで仕事帰りにマッサージに行くような気軽さでメンターと話をしている雰囲気や、バーンアウト(日本では「燃え尽き症候群」と訳されることもあると思いますが)からの復活方法がおしゃべりやよく寝ることで、翌日はまた元気になれるとか...どこかストレスの感じ方や感度とそれに対する対応方法と回復力(レジリエンス)のとらえ方が私のイメージとは違うと思い...、もっと柔軟に幅広に捉えるようにしてもいいのかも、と気づかされました。

[画像:4_20250806164101](セルフケア)

(写真・文 国際担当部員 内田美春)

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だいやまーく第1回WASLIアジア会議 報告((3日目:8月2日)その1)

3日目は基調報告、論文発表、ワークショップが複数会場で実施されました。

1_20250806162301

基調講演:「Emotional Intelligence and Mental Health of the Sign Language Interpreter(手話通訳者の感情的知性とメンタルヘルス)」

モンゴルでメンタルヘルスの研究をしているソヨルマー・ラムジャブ氏の基調講演では、手話通訳者は頑張るほどに心身の疲労が蓄積されていき、徐々にパフォーマンスが低下し気づいたときにはバーンアウト寸前になっているケースが多いとのこと。脳の前頭前野にある言語野が過活動となり、無関心、悲壮感が強くなる傾向がある。そうならないために、日ごろから呼吸を整える、手話通訳とは無関係な人たちと会話する、スーパービジョンを受けるなど、「回復すること」を意識づけていくことが大切であるとのことでした。

また、手話通訳時は窮屈過ぎない服装を着用し、長時間同じ姿勢は避ける、終了後の振り返りはネガティブなことばかりではなく、お互いの良かったところやうまくいったことなどポジティブな話をすることなど、健康で手話通訳活動を行うために大切なことであると語られました。

2_20250806162301

論文発表:「Barriers to Justice - Sign Language Interpreters in POCSO Proceedings(司法への障壁:POSCO手続きにおける手話通訳者)」

インドのレヌカ・ラメシャン氏の論文発表では、インドでは2012年に制定された子どもを性犯罪から守るのための法律「児童性犯罪保護法(POSCO)」と手話通訳の関係が話されました。ろう児も被害を受けているが、手話通訳者は整備されておらず、「A special educator(特別支援者)」としてろう学校経由で介入するとのこと。しかし被害児には十分な教育を受けていない子も多く、手話通訳を超えた支援が必要となっている。手話通訳者の身分の確立と専門的な研修が、ろう児を犯罪から守るための大きな課題となっているとのことでした。

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ワークショップ:「AWorld beautiful stories told in sign language(物語の達人:手話通訳者の物語を生き生きとさせる役割)」

韓国のジー・ミキョン氏とマレーシアのアン・ローラ・ベネディクト氏が豊かな表現力について実践を交えてのワークショップを行いました。写真をご覧いただいてもわかるように、物語を感じるとはまさにこのことです。特に聞こえる人がVisual Vernacular(ビジュアル・ヴァーナキュラー)をするためには、ストーリーや登場人物を言葉ではなく、特徴をつかみ映像でイメージし身体で伝えることが大切とのことでした。

スケジュールにはクアラルンプール市内観光ツアーがありました。バス4台でツアーに出発です。まず訪れたBatu洞窟は272段の長い階段があります。


Batu Caves(バトゥケーヴス)の手話は指文字の「む」の人差し指の先を両頬に当てる、日本手話の「笑顔」のような表現です。意味は、この寺院で1月・2月の満月の時期にタイプーサムという体中に針を引っ掛けて山車を牽く苦行が行われることから、この手話は頬に鉄の棒が貫通していると言う意味だそう...衝撃的ですね。

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カンファレンス・ディナーで各国の参加者と交流したあとは、クアラルンプールの名所となっているペトロナスツインタワーを見学。夜はいっそう煌びやかでした。

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(写真・文 国際担当部員 長山 綾)

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2025年8月 4日 (月)

第1回WASLIアジア会議 報告(2日目:8月1日)【番外編】

今回は、開催国マレーシアのおもてなしについてご紹介します。

まず1つ目

1_20250804110201 IDカード

これは受付で渡されるIDカードです。見ての通りいろいろとおまけがくっついており、木製のチャームと、リストバンド、そしてスターバックスのチケットが入っていました。リストバンドは丸い突起が並んでおり、「頭が疲れたらプチプチしてリラックスしてね」とのこと。今すぐにでもプチプチしたくなりました。マレーシアにはスターバックスにたくさんのデフ・スタッフが起用された1号店があります!期間限定の無料チケットをいただきました。

実は、これだけでは終わらないカラクリが...。なんとIDカードの付け根の白い部分が取り外せて、充電ケーブルになるんです! 凄いですよね〜。

2_20250804110201 ケーブル差し込み

2つ目は、ティーブレイクです。

3_20250804110001 ロビーの様子

講演やワークショップの間に15分〜30分程度の休憩時間があります。日本のイベントでは、ロビーに書籍や飲み物の販売コーナーがあるかと思います。しかし今回はコーヒーや紅茶、そしてマレーシアの伝統的な軽食を囲みながら休憩時間を楽しむことができます。

WASLI アジアの会議には、手話通訳に関わるきこえる人やろう者が集っています。国籍を超えて、ホッと休憩しながらの国際交流もとても貴重なひと時です。

3つ目、スターバックスのコーヒーテイスティングタイムがありました。全員にコーヒーとクッキーが振る舞われ、コーヒーマイスターの資格を持つデフ・スタッフからコーヒーの楽しみ方についてレクチャーがありました。コーヒーを飲む時は、まず口の部分を手のひらで覆い、少しだけ隙間を開け、香りを楽しみ、次に少しだけ口に含んでコーヒーのフレーバーを味わいます。デフ・スタッフさんは、パワーポイントを使用しながらとても分かりやすくレクチャーしてくださいました。

4_20250804110001 デフ・スタッフのレクチャー

おもてなしとは別のお話ですが、81日に「Friday Prayers(金曜礼拝)」というスケジュールがありました。そしてホテルの部屋の天井には、矢印でメッカの方角が示されています。イスラム教徒が多い国ならではですね。

5_20250804110001 矢印

朝から晩まで国際手話と英語のみで、頭がパンクしそうな時間が続いていますが、マレーシアのおもてなしのおかげで、ほっこりと心が満たされ、頑張ろう!と思えます。

(写真・文 国際担当部員 長山 綾)

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第1回WASLIアジア会議 報告(2日目:8月1日)

今日は会議が盛りだくさんで、開会式ののち、午前中に2セッション、午後に4セッションもの講演や研究発表がありました。全体で参加するものや分科会形式のものもあり、中にはろう者と聴者に分かれて開かれたワークショップもありました。海外ではろう者の通訳者の活動が当たり前になっていて、日本よりも活発な印象を受けます。

1_20250804101901 全体講演

2_20250804101901 全体講演

全体としては、アジアのみんなでもっと横のつながりを強くし、もっと団結して、アジア全体の底上げを図り、アジアの国々の地域に応じた最適な手話通訳の形を模索するためにそれぞれの知恵を持ち寄ってお互いに発展していこう!という強く、熱いメッセージが発信されていました。心強いと感じると同時に日本とはどこか温度差があるのでは、という不安感に似たものを感じました。

ろう者と聴者に分かれたワークショップですが、聴者向けは「Beyond Signing: The Challenges and Techniques of Voice Interpreting(音声通訳の課題と技術)」というタイトルでした。それぞれデフファミリー生まれで、オーストラリアの男性聴者2名が講師でした。読み取りに自信が持てない私は、どんな話が聞けるのかと参加してみました。属性や資質から、信頼関係を作る、知識をつける、技術を磨く、自信を持つ、音声言語能力を上げる、対人スキルを上げる...などなど、さまざまな角度からの重要性が挙げられていました。どれも納得できるものばかり。技術ばかりに目が行きがちな私は視野が少し広がった気がしました。そして周りの参加者もみな同様にうなずいているのを見て、課題はどこの国でも同じなのかな、となぜかちょっとホッとしました。

また、研究発表の中にとても印象に残るものがありました。タイトルは「Where Cultures Collide but There is A Passion to Learn(文化が交錯しながらも学ぶ情熱がつながる)」で、モルディブ、パキスタン、スリランカの通訳者が、2023年開催のWASLI韓国会議をきっかけにオーストラリアの講師による研修を受け、人生が変わったという話でした。

3_20250804101901 パキスタン報告

4_20250804101901 スリランカ報告

それぞれ言語や文化、宗教などが異なり、また時差や健康面など困難もありましたが、一緒に研修を受けて知識や技術を身に着け、現在では国内で数少ない通訳者の中でも中心的な立場となり活躍している様子が語られていました。彼らの情熱が伝わってきて、キラキラ輝いているように見えました。日本と比べれば制度面など、まだ発展途中ではあると思いますが、どこかうらやましく感じられ、印象に残りました。

5_20250804101901 研究発表

日本国内にいるだけではなかなか海外の情報は得にくいですが、今回、多くの刺激を受けて、改めて自分や地域などを俯瞰できるよい機会になりました。

(写真・文 国際担当部員 内田美春)

2025年8月 4日 (月) | 固定リンク | コメント (0)
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2025年8月 1日 (金)

第1回WASLIアジア会議 報告(1日目:7月31日)

だいやまーく第1回WASLIアジア会議 報告(1日目:7月31日)

世界手話通訳者協会(WASLI)は、世界を9つの地域に分けて活動をしています。

ここアジアでは、今年、第1回WASLIアジア会議を開催することになりました。マレーシアの手話通訳者協会JUPEBIMがホストとなり、アジア地域20か国から187人の参加者を迎えて、基調講演やワークショップ、研究発表などが行われます。

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左から、内田国際担当、長山国際担当、宮澤副会長

初日となる今日(7/31)は、アジアのWASLI国会員の代表が集まってワークショップ「WASLIアジア能力強化研修」を行いました。参加者は7か国9協会から18人、全通研からは国際担当2人が参加しました。6人ずつ3グループに分かれて、国際手話だけで話し合いを進めます。

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話し合いは「5 WHYs (なぜを5回)」による原因分析です。各グループに1つずつ課題が与えられ、その課題が生じているのはなぜか?を繰り返し考えていきます。たとえば、「遠隔手話通訳において技術的障壁がある」という課題について、それはなぜかを考えます。理由として「手話通訳者にIT技術がないから」という意見が上がったら、ではなぜ手話通訳者はIT技術がないのだろうかと考えます。そして「高齢でIT技術に対応できないから」という意見が出たら、ではなぜ高齢だとIT技術に対応できないのか」と問います。このようにWHYを5つ繰り返すことで、真の原因は何かを考えるのです。

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国が違う手話通訳者が集まって出した答えは実にさまざまである一方で共通性もあり、なかなかおもしろい結果になりました。国は違っても手話通訳者の課題は共通しており、その課題解決のためにどのようなアクションを起こしたらよいのか、共に考える仲間がいることはとても頼もしく思えました。

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全通研は、新たな体制を構築するために皆さんと共に検討中です。この方法を取り入れて侃々諤々、和気あいあい意見交換するのもいいなぁと思いました。

(文・写真 副会長 宮澤典子)

2025年8月 1日 (金) | 固定リンク | コメント (0)
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