ハイパーサーミア(がん温熱治療)
より効果的ながん治療法を目指して。
温熱を武器に、がんに挑戦するプロジェクトの歩み。
ハイパーサーミアによるがん治療を推進するためには、腫瘍を42〜43°Cに加温する高性能の装置が必要です。1975(昭和50)年、菅原努・京都大学名誉教授が中心となり、加温装置の開発に着手しました。山本ビニター(株)が製造元となり、多数の医師・研究者・技術者などの協力を得た一大プロジェクトに発展しました。
加温方法には当初、体外から患部を狙って熱を加える「温水」や「赤外線」が考えられましたが、皮膚の部分は加温できても深部までは熱が到達しません。そこで細胞に振動を与えて発熱させる「超音波方式」が考案されましたが、骨や腸管ガスなどが超音波を反射するため、深部の加温は無理でした。また「マイクロ波」による方法は、エネルギーの吸収性が高くて発熱効率は良いのですが、深さ2〜3cmでしか加温できず、皮膚がんなどにしか使えませんでした。限界が明らかになりました。
これに対して「高周波」は生体の透過力が大きく、胃・肺・肝臓などの深部がんにも有効であることが分かったのです。高周波でも比較的周波数の低い8MHzを利用した誘電加熱法により、42〜43°Cに加温することに成功しました。1979(昭和54)年、試作1号機が完成。さらに改良と臨床治験を重ね、「サーモトロン-RF8」が完成し、1984(昭和59)年12月に、がん治療用具として厚生省(現厚生労働省)の認可を得るに至りました。