働き方改革検討会

全国建設産業団体連合会 働き方改革

行動目標

一般社団法人全国建設産業団体連合会は、担い手を確保し、建設産業の適正な元下関係の構築を図ります。そのためには受注産業であり、屋外施工が主であるなど建設産業界の特殊性に配慮し、処遇・福利厚生などは企業規模により異なることを踏まえつつ、会員企業が一丸となって次の行動に取り組むこととします。

  1. 事業量の確保を働きかけ、安定的な受注確保を目指します。
    産業の維持、企業継続と雇用確保のためには受注確保が必要です。
  2. 収入の確保処遇の改善を目指します。
    新3K(給料、休日、希望)を実現できる産業を目指します。
  3. 工期ダンピング決別します。
    適正な元下関係構築のため適切な工程計画に基づく工期設定を遵守します。
  4. 価格ダンピング決別します。
    働き方改革に伴うコスト増大が見込まれる中、適正な利益を確保します。
  5. 生産性向上を目指します。
    担い手の減少に対応するため、ICT、i-Construction等に積極的に取り組みます。

本行動目標は当面、公共工事を中心に継続して取り組みます。中長期的には民間工事を含む全ての工事への適用を目指します。

以上

働き方改革に関する政策提言

令和4年8月30日

一般社団法人全国建設産業団体連合会

会長 岡野 益巳

当連合会では、平成30年3月に国土交通省からの要請を受け、「建設業働き方改革加速化プログラム」の具体的な取り組みを行うため、働き方改革検討会を組成し検討を行ってきたところである。

長時間労働の是正と週休二日制を推進し、給与・休暇・希望の新3Kを実現させ、魅力ある建設産業界とするためには、施工の平準化や建設現場における生産性の向上を図るとともに、建設産業界における就労人口の減少と高齢化に起因する業界構造の変革に機敏に対処することが肝要である。国においてもICT施工の普及等、i-Constructionを導入し建設現場の効率化、省力化を目指した取り組みが進められている。

本政策提言は、健全で持続的な企業経営を基盤に従業員の処遇改善等について、担い手三法や労基法等の改正を踏まえて検討したものである。

また、建設投資のうち建築工事が過半を占め、かつ、民間工事主体となっており、建設企業が働き方改革を実施するうえで、民間発注者の理解を得ることが不可欠である。国土交通省におかれては、本提言の趣旨に鑑み各種施策の実施を図られたい。

1.デジタル化の進展に伴う課題の抽出

(1)防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策を効率的に進めるためのデジタル化等を推進する考えが国から示されたところであり、新型コロナウイルスの対応やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を俯瞰した対応策を図られたい。

(2)特に、ICT施工の適用工種が拡大されることに伴って、人材の教育に要する経費等について、中小事業者に手厚い支援を図られたい。

2.建設キャリアアップシステム(CCUS)運用に伴う課題の抽出

(1)技能者に対しCCUSのレベルに応じた適正な評価が行われるよう労務費調査の改善を図られたい。

(2)経営事項審査での加点及び総合評価落札方式における評価項目に加わったことにより、上位ランク元請業者の事業者登録は増えているがCCUSに対する理解不足やメリット感が薄いと感じている専門工事業者の加入促進策を図られたい。

(3)多能工の評価・処遇について専門工と同様に資格・賃金、法的な位置付けを明示されたい。

(4)熟練工と基幹技能者との評価について
経験年数、技能習熟度、実績等を加味した評価制度に改善されたい。

(5)CCUSの導入費用について
専門工事業者等の加入促進を図るためにも、CCUSの導入費用等について、加入者負担を伴わないよう手厚い支援を図られたい。

3.4週8休を目指しての問題点について

(1)日給月給制の労働者が稼働日の減少に伴う収入減への対応
週休二日制を前提としている他産業労働者と同等以上の処遇を実現するため、不稼働日を加味した労務単価の設定を図られたい。
(例として4週6休から4週8休にしても週当たりの賃金は同額となるよう労務単価を引き上げる)

(2)朝夕の始業点検、片付け等を勤務時間に含むことを前提とする設計労務単価及び日当たり稼働時間を加味した施工歩掛の改善並びにこれらに伴う工期伸長分を考慮した適切な工期設定等とともに間接経費等についても適切な費用計上を図られたい。

(3)日当たり稼働時間の変更に伴い生じる重機などの機械経費のうち機械損料や運転経費及び仮設資材の損料などの計上見直しを図られたい。

4.労基法改正に伴う対応について

(1)中長期的な当初予算の安定的な確保と併せ、計画的な発注を行うとともに、繰越明許費・債務負担の活用による工期の設定などを講じ、更なる施工時期の平準化を図られたい。

(2)中央建設業審議会(令和2年7月20日決定)で示された「工期に関する基準」に基づき、公共発注者(都道府県、特に市町村)並びに民間発注者に対し、受注者との協議に適正に対応するよう周知徹底を図られたい。

(3)厚生労働省が提唱する暑さ指数(WBGT)では、 熱順化した作業者において、WBGT基準値25°Cで休憩時間を1時間あたり15分以上(1°C上昇するごとに休憩時間を各15分付加する。)とし、28°Cを超えると高代謝率レベルの作業は中止となる。近年の異常気象等によりWBGT値が終日28°Cを超える日数が増え、必要な対策を講じても基準値まで低減できない場合、休憩時間が増え、終日不稼働となる日も発生する。夏季においては、日あたり作業量が著しく低下する状況が連日生じていることから、工事現場の熱中症対策に必要な現行の経費に加えて、WBGT基準値を超える場合の作業効率低下に伴う歩掛等の補正について、設計変更で反映して頂くよう検討いただきたい。
また、真夏日が予想される時期を対象に、夜間工事を活用し、割増賃金等についても検討いただきたい。

(4)国土交通省の週休2日交替制モデル工事(維持工事、災害復旧工事(社会的要請により休日確保が困難な工事))の実施にあたっては、交代要員を確保するための割り増し経費を適切に計上するなど、地域の状況を鑑み検討いただきたい。

5.設計・積算について

(1)コロナ禍や自然災害による海外の生産拠点の減産等により、建設資材や原材料価格が高騰している。さらにウクライナ危機が加わり、建設業者の経営努力で対応できる水準は超えた問題となっている。このため、スライド条項の適用に当たっては、契約約款第25条において請負額変更が認められることとなっているが、品確法の趣旨に鑑み、受注者負担なしの検討をいただきたい。
また、工期延長等の柔軟な対応とともに、特に民間工事発注者に対し、価格転嫁を認めるよう周知徹底を速やかに図られたい。

(2)請負工事は総価契約が原則であることから、単価の乖離に対する変更は行われにくい。しかしながら施工パッケージは標準的な工法による積算の簡素化・省力化、透明性の確保の観点から対象工種も年々増え、施工パッケージの適用範囲が明確に定められているにもかかわらず小規模工事や特異な現場条件下においても適用している例が散見される。施工パッケージ単価と実施単価の乖離が著しい事例が見られるため積算内訳を明示されたい。

(3)施工パッケージによる積算が困難な現場においては、不調不落を防止するためにも見積りの活用等適正な予定価格の設定をしていただきたい。

(4)建築工事の積算について、現行の「市場単価方式」には、下請経費、法定福利費等がどのように反映されているのか判らないため、内訳を明示するとともに、土木工事と同様に「積み上げ方式」とするよう積算方法の改定を図られたい。

(5)アスベスト除去工事等の実施に当たり、酷暑期における作業中の暑さは、尋常なものではない。このため、酷暑期の発注を極力避けること。やむを得ない場合には、適切な工期設定と積算について特段の配慮をお願いする。特に、民間発注者に対する周知徹底を図られたい。

以上

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