神木の二の腕あらは鬼やらひ
鷹羽狩行
狩
199903
胸中の荒れ鬼やらふ聲に出づ
中原道夫
銀化
199903
艮を物のふたぎぬ鬼やらひ
亀丸公俊
銀化
199904
鬼やらふ孫たのもしき声変り
樋口英子
朝桜
199904
天領の雪あをあをと鬼やらふ
ほんだゆき
馬醉木
199905
白菜が畑に傾ぎぬ鬼やらひ
浜口高子
火星
199905
鮪食ふや隣家の子等の鬼やらひ
皆吉司
船団
199909
床の間の埴輪おどろく鬼やらひ
鷹羽狩行
狩
200002
身につきし婦唱夫随や鬼やらひ
水原春郎
馬醉木
200004
父赤鬼祖父青鬼の鬼やらひ
小林清之介
風土
200004
鬼やらふ鬼繞の字には魅さるるも
亀丸公俊
銀化
200004
鬼やらい娘に声を笑はれて
熊谷みどり
いろり
200004
山伏が天に矢を射て鬼やらふ
永野秀峰
ぐろっけ
200006
鬼やらふ豆を遺影が跳ね返す
野澤あき
火星
200011
わが声のほとほと貧し鬼やらひ
永岡セツ
酸漿
200104
大比叡に荒星そろふ鬼やらひ
益本三知子
馬醉木
200105
六階に更けて独りの鬼やらひ
斉木永久
馬醉木
200105
逃げ道の手筈ととのひ鬼やらひ
今西ひろえ
狩
200105
神の木の雪吹きおろす鬼やらひ
岡本眸
朝
200106
病院の霊安室の鬼やらふ
永野秀峰
ぐろっけ
200106
をかしさは声張り上げて鬼やらひ
鷹羽狩行
狩
200202
鬼やらひ終へたる後の空の張り
鷹羽狩行
狩
200202
鬼やらふ我に足らざる鬼の性
能村研三
沖
200203
ベランダより街の灯を見る鬼やらひ
山田暢子
風土
200204
真白なる高千穂はるか鬼やらふ
渕脇登女
苑
200205
福顔に面を被せて鬼やらひ
吉村玲子
円虹
200205
海鳴りの玻瑠戸に響く鬼やらひ
森重夫
春耕
200205
尼寺の直ぐ終りたる鬼やらひ
森重夫
春耕
200205
鬼やらい小鬼は専ら豆拾ふ
岡本幸枝
ぐろっけ
200205
鬼やらひ眼ン玉潰せの声かかる
松本文一郎
六花
200206
鬼やらひ無口な父の声高く
塩出眞一
ぐろっけ
200207
爺婆のそれぞれの声鬼やらふ
波田美智子
をりをりに
200208
くよくよもめそめそも鬼やらふべし
伊藤白潮
鴫
200303
北ことに壁なす星や鬼やらひ
鷹羽狩行
狩
200303
鬼やらひ早朝の庭に鳩の来し
長崎桂子
あを
200303
鬼やらふ神官の背の桃の紋
川野喜代子
雲の峰
200304
年男わが家に二人鬼やらひ
河野政恵
酸漿
200304
もの言はぬ一日の声の鬼やらふ
鉄山幸子
銀化
200304
鈍くさき鬼も登場鬼やらひ
塩川雄三
築港
200304
鬼やらひ人の動いて闇動く
塩川雄三
築港
200304
シャム猫の物見顔して鬼やらひ
阿部一彦
築港
200304
鬼やらふミス世田谷の声弾み
飯田政子
築港
200304
羽黒山坊つららの隙に鬼やらふ
岸のふ
馬醉木
200305
鬼やらひ片身に塩を振つてをる
栗栖恵通子
槐
200305
鬼やらひ影を大きく打たれをり
今瀬一博
沖
200305
何気なき小さき倖せ鬼やらい
竹下昭子
ぐろっけ
200305
戦争の噂しきりに鬼やらい
竹下昭子
ぐろっけ
200305
鬼やらい誰にも怖き人のいて
陶山泰子
ぐろっけ
200306
鬼やらひ風は大樹を怒らしむ
宇都宮滴水
京鹿子
200403
鬼やらふ夫この頃の気の短か
柴崎英子
沖
200404
福ばかりなるたらちねの鬼やらひ
浅川悦子
雲の峰
200404
からつぽの池にひよどり鬼やらひ
城孝子
火星
200404
大いなる城の闇なり鬼やらひ
岡和絵
火星
200404
鬼やらひ早くから鬼来てゐたり
高橋将夫
槐
200404
夫の声ばかりが響く鬼やらひ
青木政江
酸漿
200404
豆握り失語の母の鬼やらひ
北島上已
酸漿
200404
ぬばたまの闇にぎはへり鬼やらひ
平野貴
対岸
200404
鬼やらひ追はれて鬼の逃げ場なし
加納花子
築港
200404
鬼やらひなかなか豆の飛んで来ず
加納花子
築港
200404
夜もしるき多摩の横山鬼やらひ
佐々木咲
草の花
200405
鬼やらひ児に見せむとて肩車
橋本靖子
苑
200405
わがこゑは骨を伝はり鬼やらふ
戸田和子
鴫
200405
鬼やらひ鬼ともならず吾子育つ
鈴木實
百鳥
200405
壬生寺のがんでんでんと鬼やらひ
安達風越
雨月
200406
鬼やらひ待つ人影を重ね合ひ
五十嵐暢子
対岸
200406
三鈷もて赤青黒の鬼やらふ
藤田かもめ
ぐろっけ
200406
紅拭ひ声を荒げて鬼やらふ
品川鈴子
六香
200501
白紙の山越えてゆく鬼やらひ
鈴木勢津子
槐
200503
そのうちにしみじみ唱ふ鬼やらひ
田中晃
帆船
200504
蘆の矢のまあるく飛びて鬼やらひ
萩原みどり
雲の峰
200504
夕星を仰ぎこころの鬼やらふ
遠藤真砂明
沖
200504
マンションの女一と間の鬼やらひ
大内佐奈枝
万象
200505
声高にくらす坐職の鬼やらひ
高橋邦夫
風土
200505
大津絵の鬼なら飼ふよ鬼やらひ
内藤静
風土
200505
裃のすこし着くづれ鬼やらひ
田口たつお
ぐろっけ
200505
末弟の声張り上げて鬼やらふ
松井洋子
ぐろっけ
200506
億光年彼方の星へ鬼やらふ
植村よし子
雨月
200506
残業やケータイ越しの鬼やらい
佐藤仁
集
200508
柊を鉢ごと置かれ鬼やらい
藤原りくを
八千草
200508
夕焼けは奥行深く鬼やらひ
浅田光喜
対岸
200605
鬼やらひ泣かれて鬼がなだめをり
山口素基
万象
200606
鬼やらふ夜空紫紺を張りにけり
伊藤白潮
鴫
200704
鬼やらひ使はぬ部屋は念を入れ
鈴木多枝子
あを
200704
鬼やらふ声の聞へず更けにけり
荒井和昭
鴫
200705
薄氷の水に戻りし鬼やらひ
百瀬七生子
海光
200705
鬼やらひ迷子かかへて巡査来る
広瀬俊雄
万象
200705
吾れ小声妻は大声鬼やらひ
松嶋一洋
峰
200804
ねのとしのやらずに過ぎし鬼やらひ
木下もと子
鴫
200805
本当の鬼もきてゐる鬼やらひ
高橋将夫
槐
200805
近隣に声なくなりぬ鬼やらひ
鈴木幾子
酸漿
200805
恙なきことが福なり鬼やらひ
西出俊子
酸漿
200805
隣保みな留守してをりぬ鬼やらひ
垣岡暎子
火星
200806
雪積めるあかるき庭や鬼やらひ
永岡セッ
酸漿
200806
遠き子の部屋丹念に鬼やらふ
和田和子
馬醉木
200904
星空のおぼろ温みや鬼やらひ
四條進
峰
200904
みそつ歯の鬼逃げ回る鬼やらひ
赤木亜華里
狩
200905
念力を少しゆるめし鬼やらひ
小原徳男
遠嶺
200905
生業の冥土の飛脚鬼やらひ
瀬川公馨
槐
200905
闇に向き女一人の鬼やらひ
前川明子
鴫
200905
産土の宮ちまちまと鬼やらひ
折橋綾子
鴫
200905
鬼やらふ声を窘められにけり
山内四郎
春燈
200905
鶏の小屋に来し鬼やらひけり
杉浦典子
火星
200905
目に見えぬ姿なき鬼やらひけり
中緒和子
酸漿
200905
鬼やらひ八十路と思へぬ夫の声
棗怜子
春燈
201004
若き客なだれ込むなり鬼やらひ
坂本依誌子
春燈
201004
残業の果てて小声に鬼やらふ
市村健夫
馬醉木
201005
鬼やらふ手術日近き眼を瞠り
辰巳比呂史
苑
201005
向き合へる隣家の部屋も鬼やらふ
村上沙央
狩
201005
鬼やらひ星出揃ひし空に向け
西宮舞
狩
201005
甲高き乙女の声の鬼やらひ
大山妙子
酸漿
201005
だんだんに声をひそめる鬼やらひ
平居澪子
六花
201005
松明をぶんと回して鬼やらひ
涌羅由美
ホトトギス
201006
計略と言ふおぞましき鬼やらふ
長崎桂子
あを
201102
鬼やらふ功徳少しは信じつつ
刈米育子
苑
201103
鬼やらふこころに鬼を遊ばせつ
安立公彦
春燈
201104
胸中に打つものひとつ鬼やらひ
東亜未
あを
201104
予後の妻気合を込めて鬼やらふ
楯野正雄
苑
201105
装ひしものみなはづす鬼やらひ
中村恭子
鴫
201105
子の声の夫似と覚ゆ鬼やらひ
城戸緑
末黒野
201105
鬼やらひ声をあげても妻一人
藤波松山
京鹿子
201106
還暦のヅカジェンヌ来て鬼やらひ
山田佳乃
ホトトギス
201107
拝殿に「落雪注意」鬼やらひ
野沢しの武
風土
201107
人減りてなにやら寂し鬼やらひ
松本周二
かさね
201204
声高らかに大灘の鬼やらふ
遠藤真砂明
沖
201204
鬼やらひ息切れしたる鬼であり
安居正浩
沖
201204
四隅てふ小暗がりあり鬼やらひ
小嶋洋子
沖
201204
何の彼のと言ふても夫婦鬼やらひ
矢口笑子
春燈
201204
したたかに生きて米寿の鬼やらふ
穐好樹菟男
馬醉木
201204
大声の亡夫に重なる鬼やらひ
青野安佐子
峰
201204
西の空薄く染まりて鬼やらひ
中山純子
万象
201204
八十を越えし二人の鬼やらひ
向江醇子
ぐろっけ
201204
鬼やらひ終はり夜風の湿り帯ぶ
井上春子
春燈
201205
神木の動かざる息鬼やらい
鈴鹿呂仁
京鹿子
201205
鬼やらひ泣く児に飴のねりじ棒
坊野貴代美
ぐろっけ
201205
鬼やらひ赤子のしやぶる鬼の面
赤瀬川恵美
万象選集
201205
金網の基地の窓開く鬼やらひ
田崎@弘一
万象選集
201205
家業継ぐ長子に譲る鬼やらひ
石川笙児
馬込百坂
201206
鬼やらひ異国にありて豆三粒
須賀充子
パミール越え
201206
松明が闇を揺さぶる鬼やらひ
原友子
空
201206
山じゆうの闇の劈き鬼やらひ
鈴鹿仁
京鹿子
201303
鬼やらひ世界遺産といふ社
和田郁子
璦
201304
鬼やらひ闇に濃淡ありにけり
近藤喜子
槐
201304
浮灯台次ぎつぎ灯り鬼やらふ
鈴木千恵子
万象
201304
鬼やらひ海峡の灯の一つ減り
和田照海
京鹿子
201305
わし掴み鬼やらふ児は飢知らず
古井公代
ぐろっけ
201305
鬼やらい鬼より怖い無別法
鎌田慶子
ろんど
201305
放射能汚染とふ鬼やらふべし
堀井英子
雨月
201305
止めの矢は鬼門結界鬼やらひ
足立典子
雨月
201305
使はれぬ部屋を開け閉て鬼やらひ
塩見英子
雨月
201305
人波の前へ前へと鬼やらひ
栗原京子
空
201305
逃げ道を用意してやる鬼やらひ
吉田葎
空
201403
心中に見えぬささくれ鬼やらひ
森理和
あを
201404
やはらかきナースの声や鬼やらひ
阪本哲弘
璦
201404
鬼やらひ福紙の付く五円受く
中村洋子
風土
201405
鬼やらひ終へし星空美しき
大橋伊佐子
末黒野
201405
鬼やらひ境内つつむ声揺らぐ
赤羽陽子
春燈
201405
鬼やらひ一人居の爺豆を撒く
市川伊團次
六花
201405
鬼やらひ枡を落としてしまひけり
鎌田光恵
鴫
201405
新藁の熾に風立つ鬼やらひ
深澤鱶
火星
201405
逸りたるキューバの太鼓鬼やらひ
森清堯
末黒野
201405
鬼も友たつた一人の鬼やらひ
岡山敦子
京鹿子
201406
産土の法螺を合図の鬼やらひ
落合由季女
雨月
201409
鬼やらふ宵の船笛定劾に
荒井千佐代
沖
201504
裃を脱いで寛ぐ鬼やらひ
岩下芳子
槐
201504
恵方巻食べて終はりぬ鬼やらひ
塩千恵子
峰
201504
殺戮より眼をそむけたり鬼やらひ
坂上香菜
璦
201504
長老のひと声で足る鬼やらひ
藤野力
馬醉木
201504
鬼やらい雲の厚みのぼっと割れ
北上政枝
面
201505
鬼やらふ幼き声の闇ふかし
小野喬樹
馬醉木
201505
鬼やらふ声を限りに介護妻
山口誠
馬醉木
201505
鳴弦の儀に鎮もりぬ鬼やらひ
石黒興平
末黒野
201505
三光門あけ放ちたる鬼やらひ
瀬川公馨
槐
201505
思ふこと途切れ途切れて鬼やらひ
飯岡敬子
鴫
201505
ふだん着の小野照さまの鬼やらひ
内海良太
万象
201505
鬼やらふ声に満月上りたり
沢辺たけし
万象
201505
声高な祝詞聞こゆる鬼やらひ
廣瀬推男
やぶれ傘
201505
薬師仏の御前に修す鬼やらひ
横山昭子
雨月
201505
大黒天出でて果つるや鬼やらひ
横山昭子
雨月
201505
半分は母に隠れて鬼やらひ
吉田葎
空
201506
鬼やらひべそかく幼に鬼が泣く
岸本順子
京鹿子
201601
面取ればやさしき童鬼やらひ
上辻蒼人
風土
201605
鬼やらひ子を待つほどのこともなし
岸洋子
空
201605
大声も小声も可笑し鬼やらひ
高橋道子
鴫
201605
鬼やらひ神杉の秀ゆ鴉発ち
森清堯
末黒野
201605
鬼やらひピーナツ混る今朝の庭
長尾良子
末黒野
201605
鬼やらふ天王山の照り翳り
吉村幸子
雨月
201605
豆鉄砲食らひし鳩や鬼やらひ
佐藤喬風
末黒野
201606
サッシ屋に猫の入り口鬼やらい
後藤雅文
船団
201612
鬼やらひべそかく幼に鬼が泣く
岸本順子
京鹿子
201601
面取ればやさしき童鬼やらひ
上辻蒼人
風土
201605
鬼やらひ子を待つほどのこともなし
岸洋子
空
201605
大声も小声も可笑し鬼やらひ
高橋道子
鴫
201605
鬼やらひ神杉の秀ゆ鴉発ち
森清堯
末黒野
201605
鬼やらひピーナツ混る今朝の庭
長尾良子
末黒野
201605
鬼やらふ天王山の照り翳り
吉村幸子
雨月
201605
豆鉄砲食らひし鳩や鬼やらひ
佐藤喬風
末黒野
201606
サッシ屋に猫の入り口鬼やらい
後藤雅文
船団
201612
うすらひや隣家の夫と長話
亀井紀子
空
201604
うすらひをつつけば指のいろに溶け
荒木甫
鴫
201605
うすらひの抱きたるものみな透けて
雨村敏子
槐
201605
うすらひや遠き日のごと玻璃のごと
芦田しずく
京鹿子
201701
2023年2月6日
作成