菜種梅雨鬼の俎ひた洗ふ
野原春醪
馬醉木
199902
出漁へ合羽積み込む菜種梅雨
皆川盤水
春耕
199905
犬掘りし穴がそのまま菜種梅雨
皆川盤水
春耕
199905
菜種梅雨窯をのぞきし煤け頻
皆川盤水
春耕
199906
菜種梅雨鍾乳洞へ水溢る
野田晶子
春耕
199906
菜種梅雨頭巾をぬらし辻地蔵
小川花久
いろり
199910
菜種梅雨去年をくりし農日誌
小川花久
いろり
199910
菜園となせるベランダ菜種梅雨
内藤八重
俳句通信
200006
来し風は誤算だらけや菜種梅雨
保坂さよ
いろり
200006
菜種梅雨ピアニッシモな男たち
中原幸子
遠くの山
200010
菜種梅雨年輪の幅決まる時
能勢京子
船団
200011
房総の海が煙りて菜種梅雨
栢森定男
あを
200104
菜種梅雨かくれごころの塚一つ
田中干鶴子
狩
200107
海の色分かちて濁る菜種梅雨
閑田梅月
馬酔木
200108
菜種梅雨てのひらに音たててをり
田村はじめ
銀化
200205
飛石の一日黒し菜種梅雨
後藤志づ
あを
200205
菜種梅雨鷭の声する山上湖
皆川盤水
春耕
200206
三月一日父長逝家出せしことあり
このたびは帰らぬ家出菜種梅雨
利根川博
銀化
200206
新しき卓布の眩し菜種梅雨
清水晃子
遠嶺
200207
菜種梅雨ホテルの廊に意見箱
岡和絵
火星
200207
ぽろとこぼるるメロンパン菜種梅雨
中島陽華
槐
200207
牛飼の輪中一村菜種梅雨
下平しづ子
雨月
200208
占ひのあたる一日や菜種梅雨
片野光子
ぐろっけ
200208
孟宗竹の凭れ合ひたる菜種梅雨
戸栗末廣
火星
200209
菜種梅雨夫の残せしカルテ燃す
恒成久美子
ぐろっけ
200209
菜種梅雨子が窓に描くアンパンマン
朝妻力
雲の峰
200305
ひとすじの葉巻の煙菜種梅雨
中島陽華
槐
200306
人待つて動く階段菜種梅雨
斎藤棹歌
沖
200306
看経の声のうるめる菜種梅雨
内藤順子
酸漿
200306
目を伏せる挿絵の女菜種梅雨
徳永真弓
百鳥
200306
菜種梅雨糶の済みたる魚市場
塩川雄三
築港
200307
菜種梅雨鎌百挺を研ぎにけり
沖増修治
百鳥
200307
菜種梅雨中途半端に終りし日
長屋璃子
火星
200307
橋下いま電車併走菜種梅雨
岡本眸
朝
200405
築山の芝生の色や菜種梅雨
岩下芳子
槐
200406
石敷の安寿の塚や菜種梅雨
久保一岩
雲の峰
200406
月遅れ本持ち歩く菜種梅雨
井上信子
鴫
200507
鳥海山姿隠せり菜種梅雨
鈴木栄子
酸漿
200510
納屋の戸は蹴らねば開かず菜種梅雨
吉田かずや
春燈
200512
筋力で脊椎支へ菜種梅雨
渕上千津
沖
200605
菜種梅雨大和に友を見失なふ
斉藤小夜
風土
200606
菜種梅雨題のみ書いて立ち上る
徳丸峻二
風土
200606
辞書繰りて言葉さがせり菜種梅雨
後條さと子
苑
200607
破れ樋の日がな繰りごと菜種梅雨
金子輝
春燈
200607
菜種梅雨くちずさみゐる歌の数
舩越美喜
京鹿子
200607
三日とは続かぬ日和菜種梅雨
綿谷美那
雨月
200607
打傷の染み消え難き菜種梅雨
梁瀬照恵
ぐろっけ
200607
菜種梅雨真珠の海へ漕ぎだしぬ
蘭定かず子
火星
200705
菜種梅雨百万遍の数珠手繰る
三代川玲子
春燈
200706
菜種梅雨藍瓶の藍守り継ぐ
岩下芳子
槐
200706
信じられぬ君の訃報や菜種梅雨
若江千萱
雨月
200706
お隣も一人住まゐや菜種梅雨
鎌倉喜久恵
あを
200706
菜種梅雨独り合点の長ばなし
金子輝
春燈
200707
来し方の悔恨さそふ菜種梅雨
上藤八重子
酸漿
200707
引く椅子の音にきしみや菜種梅雨
桑原レイ
峰
200708
時かけて削る鉛筆菜種梅雨
川崎俊子
馬醉木
200806
良き事も些か残し菜種梅雨
森山のりこ
あを
200806
火の山を濡らしてをりぬ菜種梅雨
本多俊子
槐
200807
デパ地下に殿方ふらり菜種梅雨
鷲見多依子
璦
200905
防波堤の犬の出迎へ菜種梅雨
楢崎京
炎環
200905
菜種梅雨納豆ぐるぐる三十回
長崎桂子
あを
200905
菜種梅雨二時間置きのバス路線
長崎桂子
あを
200905
赤べこを突いてをりぬ菜種梅雨
三羽永治
遠嶺
200906
菜種梅雨膝に来し猫動かざる
和田幸江
春燈
200906
渋滞の車の列や菜種梅雨
横山さくら
春燈
200906
きびきびと部屋片の付け菜種梅雨
中山静枝
峰
200906
菜種梅雨腰の痛みのつづきける
山口まつを
雨月
200906
切り抜きしレシピの整理菜種梅雨
金井香ル
苑
200907
緩る緩るとひしほの匂ふ菜種梅雨
土居通子
ろんど
200907
幼等の声押入に菜種梅雨
清水伊代乃
酸漿
200908
菜種梅雨家居の時間過ぎ易く
稲畑汀子
ホトトギス
201004
眼前に淡き高千穂峰菜種梅雨
坂上香菜
苑
201005
爪皮の朱色そろそろ菜種梅雨
長崎桂子
あを
201005
菜種梅雨湖鈍色の日々続く
三川美代子
璦
201006
一粒の音より菜種梅雨となり
竹下昌子
鴫
201006
終の地の川面明りや菜種梅雨
峰幸子
沖
201006
菜種梅雨鬱々として口数減り
山田をがたま
京鹿子
201006
荷造りの少しあいまい菜種梅雨
辻直美
沖
201007
菜種梅雨夕べを告ぐる鐘遠し
水田壽子
雨月
201007
後家の身となりにし折も菜種梅雨
品川鈴子
ぐろっけ
201106
月余経て今なほ余震菜種梅雨
落合晃
璦
201107
何もせぬひと日の疲れ菜種梅雨
西村博子
馬醉木
201107
菜種梅雨ゆすつて納む兄の骨
戸栗末廣
火星
201107
地の機嫌空の機嫌に菜種梅雨
稲畑廣太郎
ホトトギス
201204
菜種梅雨晴れてふうはり昼の月
松本周二
かさね
201205
ハンガーを銜へて鴉菜種梅雨
野口喜久子
ぐろっけ
201207
頁繰る毎に睡魔や菜種梅雨
安斎久英
末黒野
201208
菜種梅雨買つてしまへりおしやれ靴
藤井久仁子
ぐろっけ
201208
集落に産小屋のあり菜種梅雨
北崎展江
くりから
201209
菜種梅雨トーストをやや厚切りに
?コ田千鶴子
馬醉木
201305
生きものを飼はぬやすけさ菜種梅雨
瀧春一
花石榴
201312
菜種梅雨一妻多夫の説を聞く
平井奇散人
船団
201403
絎糸のもつれをほぐす菜種梅雨
?コ田千鶴子
馬醉木
201406
菜種梅雨たたくガラスの送迎車
吉村摂護
空
201407
乳鉢を擦る音ぬくし菜種梅雨
吉武千束
太古のこゑ
201411
突き出してぐんぐんぐんと菜種梅雨
森理和
あを
201506
忘却てふ術を知りたり菜種梅雨
小林和世
末黒野
201507
百済仏見ませ大和は菜種梅雨
鎌田篤
雨月
201507
気晴らしに香薫きもして菜種梅雨
武生喜玖乃
雨月
201507
選挙済み祈るは平和菜種梅雨
神田惣介
京鹿子
201508
長堤に汽笛が声が菜種梅雨
長沼佐智
船団
201512
縄綯ふに足も働く菜種梅雨
宮内とし子
沖
201605
裏おもて使ふ俎板菜種梅雨
林昭太郎
沖
201605
日本を出でざる思考菜種梅雨
森岡正作
沖
201605
菜種梅雨鉢の記念樹地に移す
久染康子
沖
201605
根絡げの荒縄なじむ菜種梅雨
安藤しおん
沖
201605
長き長き貨物列車や菜種梅雨
七田文子
沖
201605
部屋ひとつ余すくらしや菜種梅雨
大沢美智子
沖
201605
復興の土盛り上げて菜種梅雨
内山花葉
沖
201606
泊船に早や灯のともり菜種梅雨
佐々木よし子
沖
201606
菜種梅雨ネオン明りの関帝廟
卯月十六
末黒野
201607
菜種梅雨恩賜公園染め上げて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201704
菜種梅雨ビル街の色奪ひゆく
稲畑廣太郎
ホトトギス
201704
菜種梅雨黒光りして能登瓦
豊谷青峰
春燈
201705
仮縫いの様なお二人菜種梅雨
平井奇散人
船団
201707
旋盤の油の匂ふ菜種梅雨
林徹也
空
201707
まなかひの島のけぶれる菜種梅雨
佐津のぼる
六花
201807
鈍らな生身の重み菜種梅雨
鈴鹿呂仁
京鹿子
201905
菜種梅雨波郷渡りし南白亀()橋
田中臥石
末黒野
201907
外出を控へる日日に菜種梅雨
長崎桂子
あを
202006
菜種梅雨農具見つめて近寄らず
石原健二
やぶれ傘
202007
菜種梅雨敢へて明るき句を詠まな
坂下成紘
沖
202007
海峡の波のけぶらふ菜種梅雨
笹村政子
六花
202007
菜種梅雨とは言へざるも曇り来し
稲畑汀子
ホトトギス
202104
高階のアンテナ茸菜種梅雨
奥田筆子
京鹿子
202107
雀等の声を濡らして菜種梅雨
高村令子
風土
202107
菜種梅雨敷石黒き艶放つ
窪みち子
空
202112
菜種梅雨籠り夜咄でもせむや
千田敬
沖
202205
本棚の古書のかをりや菜種梅雨
鈴木直充
春燈
202207