秋雨に黒着て佇てば塑像めく
小澤克己
遠嶺
199901
足投げ出して秋雨の底にゐる
津田このみ
船団
199903
邂逅のそびら秋雨のビッグベン
村上光子
馬醉木
199911
わが骨に鬆を殖やしゆく秋雨か
白岩三郎
馬醉木
199912
秋雨や歯医者は明日のことにせむ
武井清子
沖
199912
秋雨に濡れて万歩を果たしけり
高橋作之助
俳句通信
199912
秋雨にほどかれてゆく蜘蛛の糸
川副民子
船団
199912
秋雨に舌ひっこめるアサリちゃん
黒田さつき
船団
199912
秋雨の匂い阪急神戸線
津田このみ
月ひとしずく
199912
晴女集へど今日の秋雨かな
関口房江
酸漿
200001
秋雨に廊下で大工する主人
熊谷みどり
いろり
200001
秋雨や道化の糸を君が織る
尾上有紀子
わがまま
200002
秋雨や出たとこ勝負のバスに乗る
星野早苗
空のさえずる
200002
武蔵野に秋雨上り路黒ぐろ
笹田元一
翡翠吟行
200010
秋雨や終らぬ話後にして
松沢久子
いろり
200011
秋雨や煙る湖より舟の音
小滝奈津江
酸漿
200012
秋雨や雨蛙まだ寝ねぬらし
和田敏子
雨月
200012
秋雨や昨日のことが嘘のごと
福田みさを
いろり
200012
秋雨に膨らむ川の黒光り
安徳由美子
沖
200101
思い出すままの童謡秋雨前線
金子皆子
海程
200102
秋雨がまっすぐに降る夫婦なり
笠学
船団
200102
秋雨の門に出でたるかたつむり
永見博子
酸漿
200111
秋雨や母の背なかを濡らしをり
福田みさを
いろり
200111
秋雨や音なく止まる救急車
金子つとむ
俳句通信
200111
昼の燭点け秋雨の骨董屋
能村研三
沖
200112
秋雨や土と草との縺れあひ
市川伊團次
六花
200112
宿の窓秋雨伝ふ一人旅
岡田芳子
ぐろっけ
200112
秋雨や子規の臥せりし六畳間
浜崎良彦
円虹
200201
秋雨に消えて樹間の比枝姿
鈴鹿野風呂
京鹿子
200202
秋雨に朝はモノクロ微熱気味
尾上有紀子
船団
200202
秋雨となる気配なく祝ぎ日和
稲畑廣太郎
ホトトギス
200210
常臥しの父秋雨の香を言へり
中村房枝
六花
200210
秋雨に浮かんで来たる海月かな
山尾玉藻
火星
200210
秋雨や来ぬかも知れぬ人を待ち
尾崎恭子
雨月
200211
絵葉書は秋雨に濡れて届きたる
宇田喜美栄
槐
200212
しんしんと秋雨を聴く果報かな
川崎洋吉
遠嶺
200212
逝きませしよりの秋雨あきの風
窪田佳津子
雨月
200301
秋雨や静かに刻を濡らしゆく
長山あや
ホトトギス
200302
秋雨の広場にひびくチヤペルの音
川口利夫
ホトトギス
200302
秋雨やどこへ行くにも和服着て
吉田小幸
ホトトギス
200302
秋雨や秋雨色の天守閣
丹後浪月
ホトトギス
200302
秋雨も視界も動きはじめけり
丹後浪月
ホトトギス
200302
秋雨に合はす仕事もありにけり
丹後浪月
ホトトギス
200302
秋雨や外に小道具大道具
高田令子
鴫
200302
深々と秋雨に沈む椅子ひとつ
矢野千佳子
京鹿子
200302
秋雨ぽつりイルカ一回転す
中島陽華
槐
200303
秋雨や円月橋の石擬宝珠
朝妻力
雲の峰
200309
秋雨にお歯黒獅子に初詣
安部里子
築地吟行
200310
秋雨に合掌の屋根みなけぶる
手島靖一
馬醉木
200311
秋雨やガラシャ婦人の欠け灯篭
中野薫
雲の峰
200311
秋雨や曲真似叩く「ラベル」の扉
中田みなみ
空
200311
秋雨の中に驟雨のあまたたび
稲岡長
ホトトギス
200312
秋雨の音なき音に目覚めけり
廣島啓子
雲の峰
200312
耳塚の秋雨しげく流をつ
山田耕子
京鹿子
200401
秋雨や体育大学静かなり
寺門武明
あを
200401
秋雨や生命あがなふ脚一本
横山迪子
六花
200402
秋雨や指しなやかな檻の猿
黒田咲子
槐
200412
秋雨や火伏の幣の薄湿り
山口トシ
酸漿
200412
秋雨の小江戸にひびく時の鐘
阿部文子
酸漿
200412
秋雨や今日は銭湯定休日
藤井美代子
帆船
200412
秋雨や前も後ろも草千里
田尻勝子
六花
200412
秋雨や臥せゐて思ふこと多く
二瓶洋子
六花
200501
秋雨の瓦斯が飛びつく燐寸かな
中村汀女
沖
200507
秋雨や齟齬ともならず着陸す
稲畑汀子
ホトトギス
200509
秋雨の予報旅路に縦いて来ず
稲畑汀子
ホトトギス
200509
秋雨を楽しむ心少しあり
小黒加支
酸漿
200511
支那そばと書いてあるゆゑ秋雨やどり
鈴木榮子
春燈
200512
秋雨に強弱ありて今は強
倉持梨恵
鴫
200512
秋雨の湖上に競ふ大花火
小林幸子
酸漿
200512
秋雨の銀座に女占ひ師
鈴木照子
苑
200601
秋雨の波路きてまだ船心地
武藤縁
ぐろっけ
200601
秋雨の桟橋あゆむ波路きて
武藤縁
ぐろっけ
200601
秋雨に母の形見の傘さして
綿谷美那
雨月
200601
秋雨や山の畑の土肥えて
射場智也
六花
200601
秋雨去り緑いやます皇居かな
徳田正樹
河鹿
200602
秋雨の街を練り行く踊り笠
三反田輝夫
河鹿
200602
秋雨やカーペンターズ聴きながら
高安勝三
遠嶺
200602
秋雨にぬれて冴えたる閣美し
山田耕子
京鹿子
200603
東京にだけ秋雨といふ予報
稲畑汀子
ホトトギス
200610
秋雨の寺苑あをあを竜の髭
阿部ひろし
酸漿
200611
秋雨の窯元土の香薪の香
浜田南風
苑
200612
秋雨の滲む新聞飲酒事故
佐久間はるみ
苑
200612
天平の簷に秋雨やりすごす
狭川青史
馬醉木
200612
世の中がまた変はる秋雨の川よ
丸山佳子
京鹿子
200612
秋雨に鈍つてをりぬ拡声器
高田令子
鴫
200612
秋雨や傘を一振りして入る
永田勇
六甲
200612
秋雨の窓辺を被ふ百日紅
名取すみ子
酸漿
200701
秋雨に煙る湯宿や道祖神
大須賀容子
遠嶺
200702
榧の木に降る秋雨を見てをりぬ
野沢しの武
風土
200702
秋雨や小走りにゆく絵画展
松下幸恵
六花
200705
秋雨は眼に沁む雨や森を背に
林翔
沖
200710
提燈の中も秋雨降りをりぬ
佐藤喜孝
あを
200711
恙なく終へ秋雨の帰路につく
小澤克己
遠嶺
200712
秋雨に濡れ琅玗の輝けり
田中清子
遠嶺
200712
秋雨も子の言ひ分も筋のあり
秋千晴
空
200801
秋雨や指の数だけ爪を切る
竹下昌子
鴫
200801
秋雨や窓に映りし顔白く
真保喜代子
朝
200801
秋雨やテレビ画面に波郷兄
林翔
沖
200810
秋雨を走りぬけるぞゴーカート
高野綸
璦
200811
秋雨の激して後は照りにけり
椿和枝
鴫
200811
秋雨に岩波文庫読み耽る
能勢栄子
璦
200812
秋雨の音せぬ音を目に見たり
小野木雁
酸漿
200812
秋雨の運動場を横切りぬ
十川たかし
槐
200901
秋雨の止みし樹々より栗鼠の群
久本久美子
春燈
200901
秋雨や糶まつ屋久の貯木場
河村泰子
ぐろっけ
200901
再訪の屋久は秋雨夫婦杉
島純子
ぐろっけ
200901
すつぽりと秋雨に入る家並かな
きくちきみえ
やぶれ傘
200901
秋雨や休耕田に鷺並び
白石正躬
やぶれ傘
200901
秋雨にひきて短かき七分袖
斎藤弘行
遠嶺
200902
天地に淡き秋雨老い進む
高橋泰子
峰
200911
秋雨の音の幽かな夜の紅茶
國保八江
やぶれ傘
200911
秋雨や所在なき身に妻の声
日山輝喜
璦
200912
読経悲し秋雨に煙る能登の海
日山輝喜
璦
200912
指折りて秋雨を待つ砂漠町
伊吹之博
京鹿子
200912
秋雨に真面目な猫と大あくび
中谷仁美
船団
200912
また今日も五分で許してしまう秋雨
中谷仁美
船団
200912
秋雨に海坂のなき沖を舟
柴野静
苑
201001
秋雨に湖はけぶりて音もなし
小島三恵
酸漿
201001
秋雨に引越の荷の濡れて着き
伊藤トキノ
狩
201002
地の渇き潤ふ秋雨旅恋し
相沢有理子
風土
201002
秋雨の湖上に競ふ大花火
小林幸子
酸漿
200512
厨にも秋雨の音傳ひくる
滝沢伊代次
万象
201008
秋雨を得て長咲きの牽牛花
増田一代
璦
201012
秋雨や珈琲豆を挽くかをり
西岡啓子
春燈
201012
秋雨や今はいのちを癒やすとき
泉田秋硯
苑
201012
秋雨に淀川の猛るといふことも
大橋晄
雨月
201012
待ちわびし秋雨の音激しかり
島﨑久美子
酸漿
201012
秋雨や蜂蜜色の羅馬市街
小林愛子
万象
201102
秋雨の旧街道を迷ひ来し
山田佳乃
ホトトギス
201103
秋雨に昼を灯して紅をさす
丹生をだまき
京鹿子
201112
秋雨の秘めし音する淡海かな
本多俊子
槐
201112
電線の鳥秋雨に動かざり
蟻蜂
六花
201112
ひとしきり秋雨太く降る益子
飯田ひでを
峰
201201
秋雨や楽譜に残るめくり跡
浅木ノヱ
春燈
201201
秋雨のしきりに池の舫ひ船
國保八江
やぶれ傘
201202
船頭の笠に秋雨ふりやまず
志方章子
蟋蟀
201203
地蔵堂新た秋雨明るうす
赤座典子
あを
201211
秋雨の水面にぎはし日がな降る
山本達人
かさね
201212
力なき秋雨に濡れ柏崎
池内とほる
かさね
201212
秋雨中傘さして乗るたらひ舟
竹内悦子
璦
201301
秋雨に鳩の濡れ来てはたはたと
小川滋
やぶれ傘
201301
秋雨や鏡に写るぬひぐるみ
小山陽子
やぶれ傘
201311
秋雨に傘なく濡るる夜道かな
丸山酔酔子
かさね
201312
秋雨の磴のぼり継ぎ二月堂
渡邉孝彦
やぶれ傘
201312
秋雨やかがる糸選る手芸店
西岡啓子
春燈
201312
秋雨や改札口にキムチの香
藤田素子
火星
201312
秋雨を纏ひて鹿島詣でかな
仁平則子
峰
201312
秋雨に濡るるもよけれ「魔笛」果つ
荻野嘉代子
春燈
201401
秋雨にけぶる臨海大洗
羽賀恭子
峰
201401
秋雨や駅の小箱の時刻表
太田佳代子
春燈
201401
秋雨や句を展示する市民祭
中山静枝
峰
201401
秋雨のそぼ降る音に寝入りけり
枝みや子
やぶれ傘
201402
秋雨の戸口の孫に笑美返す
神田惣介
京鹿子
201402
御胸に秋雨流れ野の仏
植村よし子
雨月
201402
秋雨の止めばすぐ田に人の出て
松田泰子
末黒野
201402
笠置その秋雨に濡れ磨崖仏
難波篤直
川
201404
静かさや秋雨づつみにさざれ石
布川直幸
峰
201410
秋雨や地をすれすれに舞ふ黄蝶
上原重一
峰
201411
秋雨や込み合ふ郷の診療所
武政礼子
雨月
201412
秋雨に梲洗はれ蔵の街
小川玉泉
末黒野
201501
秋雨の花壇を囲む煉瓦の朱
杉浦典子
火星
201501
秋雨に手水の水の溢れけり
市川伊團次
六花
201501
秋雨やかがる糸選る手芸店
西岡啓子
春燈
201503
近づきし秋雨降りて雨降りて
稲畑汀子
ホトトギス
201508
秋雨に鳴咽すまいぞ弟よ
山田六甲
六花
201509
秋雨のかくもひんがし襲ふとは
大橋晄
雨月
201511
セルビアに来ても秋雨降りやまず
松村光典
やぶれ傘
201512
秋雨やつながれてゐる寺の犬
高野春子
京鹿子
201512
秋雨や小児科医院廃業す
吉村摂護
空
201512
秋雨や大清の獅子物悲し
王岩
あを
201511
秋雨に負けず国会デモの群
吉野夢宙
峰
201512
秋雨や傘と竹刀の二刀流
松村光典
やぶれ傘
201602
秋雨の一人に余す男傘
押田裕見子
空
201602
秋雨に迷ひ因幡のそばすする
山田六甲
六花
201610
秋雨にしかと根付けり御柱
杉本光??
沖
201611
秋雨の豪雨となりぬこの三日
大坪景章
万象
201611
秋雨の瓦濡らして過ぎゆけり
出口誠
六花
201612
秋雨や身の内どこか淋しくて
佐藤三男
万象
201612
秋雨や肩叩かれる渋谷駅
竪山道助
風土
201701
秋雨や枯山水の石光る
長谷川はるみ
万象
201701
秋雨に須磨の汀の昂り来
善野烺
六花
201702
秋雨来て包丁を研ぐたっぷりと
川添光代
船団
201707
秋雨も茶室彩るものとして
稲畑廣太郎
ホトトギス
201710
秋雨して七光年はどのあたり
山田六甲
六花
201710
秋雨のやうやく止みて闇潤む
岡崎春菜
万象
201712
秋雨の始発電車に赤子ゐて
上谷昌憲
沖
201712
秋雨に落ちついてをり瓦屋根
出口誠
六花
201801
秋雨の軒に生飯台万福寺
吉田万喜子
雨月
201801
秋雨や滴る波紋風見えて
市川村欽子
雨月
201801
秋雨に軽く駆け出す麒麟の子
中嶋陽子
風土
201801
外湯へと秋雨少し来てゐたり
安藤久美子
やぶれ傘
201710
秋雨や丁寧に拭くヨガマット
小山陽子
やぶれ傘
201711
秋雨に乳房重たき野犬かな
赤松赤彦
六花
201712
秋雨にけぶる初島伊豆は晴れ
松村光典
やぶれ傘
201712
秋雨にうたるるもよし露天の湯
松村光典
やぶれ傘
201712
秋雨に皇居の緑より深く
枝みや子
やぶれ傘
201712
秋雨の庭に鳥来る晴るるらし
奥田温子
やぶれ傘
201712
秋雨や木馬は瞳潤ませて
斉藤マキ子
末黒野
201802
秋雨の降りみ降らずみ句会へと
大橋晄
雨月
201802
秋雨に汽笛くぐもり出航す
高濱朋子
ホトトギス
201803
秋雨に摘むラベンダーしばし手に
岩井京子
空
201802
秋雨の砂に染みゆく早さかな
高倉和子
空
201803
秋雨前線自由席はどこですか
東英幸
船団
201806
秋雨や芭蕉史跡に石一つ
稲畑廣太郎
ホトトギス
201809
秋雨や我が家の居間に碇泊中
石森理和
あを
201811
秋雨を寂と歩めり老夫婦
安斎久英
末黒野
201812
叡山より翼拡げて秋雨来る
大石喜美子
雨月
201901
秋雨のビルに電光掲示板
天野美登里
やぶれ傘
201901
秋雨前線動かず二円切手足す
高木晶子
京鹿子
201901
髪に惨む秋雨森の香をふふむ
田中藤穂
集
201904
2021年10月11日
作成