■しかく目次
■しかく結成宣言
■しかく筋ジス病棟バーチャル患者会からの活動報告
■しかく動画
・20240127 筋ジス病棟バーチャル患者会 「『筋ジス病棟バーチャル患者会』結成宣言」 於:立岩真也さん追悼集会
■しかく結成宣言
筋ジス病棟とは?
みなさん、筋ジス病棟のことはご存知でしょうか?第二次世界大戦後、かつては結核患者が入院していた病棟があった国立療養所に、結核患者の減少とともに、筋ジストロフィー患者が収容され、現在の筋ジス病棟となりました。1964年5月6日厚生省より発表された「進行性筋萎縮症児対策要項」により、千葉下志津病院、宮城西多賀病院、広島原療養所、大分石垣原病院、大阪刀根山病院、北海道八雲療養所、徳島療養所、三重鈴鹿病院に設置された100床から始まりました。その多くが主に郊外の山間部などに位置し、一般社会から孤立し、病棟環境も閉鎖的なものになっています。
その後国立療養所は、2004年に独立行政法人国立病院機構へと名称を変えました。日本各地にある国立病院機構の統廃合が進められ、一部の筋ジス病棟はインフラの老朽化や民間への施設売却に伴い、その機能は統合先に建てられた新しい病棟へと移行していきました。名称も「病院」から「医療センター」へと改められ、その立地の利便性から地域の医療拠点としての機能を持つようになり、それに伴って筋ジス病棟も開かれたものになると期待させませたが、その閉鎖性は何一つ変わることはありませんでした。
わたしたちの置かれた状況
日本における筋ジス病棟の開設から半世紀以上、わたしたち入院患者たちは深海の貝のように、固く閉ざされた入院生活を送ってきました。私たちがどこから受け入れられているのか、入院生活について意見を述べることがタブーとされ、病院に入院できなくなるという不安を抱えてきました。わたしたちの多くが小学校を卒業するかどうかという年頃で入院しており、そのためかつて小児病棟でもあった筋ジス病棟は、人工呼吸器の導入や医学の進歩によって患者の寿命が延び、高齢化と重度化が進みました。それにしたがい、看護の人手が足りなくなり車椅子乗車や入浴に制限がかかるのにそう時間はかかりませんでした。職員は業務に追われ、患者は我慢をすることを強いられることが増えていき、ときには職員と遊ぶ余裕すらあった筋ジス患者の療養生活はより逼迫した状況へと変わっていったのです。
「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」から「筋ジス病棟バーチャル患者会」へ
一方、病院の外では、2003年の支援費制度の導入によって24時間の介護も認められるようになり、重度の障害者でも地域で生活することが可能になりましたが、わたしたちにこのような情報が知らされることはありませんでした。このような筋ジス病棟の状況を変えようと障害者団体など有志が集まって2019年2月に始まったのが「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」でした。プロジェクトは、地域の障害者の仲間が病院を訪れ、病棟の患者たちから直接聞き取って調査をすることから開始されましたが、翌年すぐにコロナ禍となりこの作業はオンラインに切り替わりました。
コロナ禍では死亡した人も多数おり、すべての国民が規制された苦しい生活を余儀なくされました。しかしわたしたちにはむしろ、あらたな出会いがあり人生の転機ともなる時期でした。筋ジスプロジェクトでは、地域の障害者と病棟の患者たちがオンラインで交流する企画が催され、わたしたちはそこで知り合うことができました。
わたしたちはまず、互いのことをよく知ろうと、各々のこれまでの歴史を聞く会を設けることから始めました。幼い頃からよく転んでいたこと、それが通学する頃には歩くことも困難になっていたことなど、誰もが経験したことをその都度自分のことのようにして聞いていました。
このように、コロナ禍になって飛躍的に広がったわたしたちの情報環境で知り得たことは、他病院で生活している患者の状況、地域で暮らす障害者の状況だけではありませんでした。世界では障害者の人々が国連障害者権利条約を後ろ盾に国に対して声をあげ、結束して願いを形にしている潮流が彼ら自身の手で起こされていることも知りました。2006年国連では、「Nothingaboutuswithoutus(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というかけ声の下、障害当事者が多数参加し障害者権利条約が採択され日本も2014年に批准しました。2022年9月には権利条約の日本審査が行われ、筋ジス病棟を含む障害者施設の置かれている状況への多くの問題を指摘されました。
わたしたちは、この障害者権利条約に定められたようにわたしたちの筋ジス病棟も地域に広く開かれたものにしたいと考えるようになりました。振り返ってみれば、病院の中でも外でも、わたしたち自身に関することがすべて、あまりにもわたしたち抜きに決められ過ぎたのではないでしょうか?そして自分たちがもっと主体的に関わっていかないといけないという思いから、自ら会を立ち上げることしました。「開け放とう閉ざされた扉の向こう側へ!」を合言葉に「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」において、入院患者自身が活動する唯一のグループとして筋ジス病棟を開かれた環境にすることを目指し、ここに「筋ジス病棟バーチャル患者会」の結成を宣言します。
わたしたちの求めること
わたしたちは障害者としてではなく、入院患者としてではなく、一人の人間、一人の国民として「あたりまえの権利」が尊重され、生まれた境遇や場所による差別を受けることなく、幸福で自由な人生を享受したいと願っています。そして、わたしたちは筋ジス病棟の入院患者が「どう生きたいのか」「何をしたいのか」、それらを選ぶ個人の権利が第一に尊重され、ただ病院に依存し管理されるのではなく自分の意志で生活の仕方を決めていけることを求めていきます。
これをわたしたちは、わたしたちを取り巻くすべての人たちと協力して実現していきたいと考えています。まずわたしたちはときには家族のようにすら感じる、長年私たちをケアしてくれている病院のスタッフにみな感謝の気持ちを持っています。病院の医師・看護士をはじめとするスタッフの医学的知見がなくてはわたしたちの願いは叶わないでしょう。そして地域の障害者の仲間をはじめとする支援者のみなさん、地方自治体をはじめとする病院外のアクターのみなさん、わたしたちといっしょにわたしたちのようなものでも安心して幸せに暮らせるようなあたらしい未来をつくりましょう。
■しかく筋ジス病棟バーチャル患者会からの活動報告
◆だいやまーく2024〜 筋ジス病棟バーチャル患者会 「筋ジス病棟バーチャル患者会からの活動報告」(arsvi内別ページ)
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◆だいやまーく20240127 筋ジス病棟バーチャル患者会 「『筋ジス病棟バーチャル患者会』結成宣言」 於:立岩真也さん追悼集会