千葉県(630調査情報開示請求)への反論書から
埼玉県の精神医療を考える会 村田京子
昨年、千葉県へ630調査の情報開示請求をしましたが、在院者についての情報(調査票5〜49の全て)が「個人の権利利益を害するおそれ」を理由として非開示でした。8月に審査請求をし、ようやく年明けに弁明書が届き、さっそく反論書を書いて2月に提出しました。
弁明書への反論なので、弁明書にある非開示理由「特定の立場にある者が有する情報あるいは入手し得る情報との照合により、特定の個人が識別される可能性がある」を否定することがメインです。そしてその項は、神奈川精神医療人権センターの稲川洋さんが資料提供してくださった反論書から、ほぼ引用させていただいきました。反論書としては、その項に尽きます(他府県でも個人情報を理由に非開示となった場合には、この項が参考になると思います。関心のある方はお問い合わせください)。
ただ、それ以外にも我ながらかなり熱く書いている部分がありました。一つは「高度な秘匿性が求められる情報」について。精神科だからと特別視されている感じがどうしても私には引っかかってしまうのでした。
高度な秘匿性が求められる情報について
弁明書に「加えて、措置入院や医療保護入院という本人の同意なくして精神科病院に入院することとなった患者の高度な秘匿性が求められる情報も含まれており、個人の人格的な権利利益の保護に欠けることのないよう慎重に判断すべきものである」とある。確かに人権侵害と表裏一体の実情を孕む精神科病院の患者情報であれば、人格的な権利利益の保護に特段の配慮が求められるのかもしれない。しかし、「だから非開示」という判断は浅慮と言わざるを得ない。開示による不利益と同様、非開示による不利益も十分に考慮されてこその慎重な判断である。
自分に関係する情報が、高度な秘匿性が求められる情報とされ、非開示に、また黒塗りにされることは、むしろ個人の尊厳を傷つけることもあり、必ずしも人格的な権利利益の保護となるとは限らない。また秘匿、あるいは非開示によって、存在や実態が見えにくくなることは、周囲の理解を阻み、存在感を弱め、社会からの隔絶をもたらしかねない。すなわち精神科病院や患者を知られざる存在として地域から遠ざけることになり、患者や家族を孤立させ、追い込むことにも繋がりかねない。
さらに、「情報」を守ることが「個人やその人権」を守ることになるのかという懸念もある。精神科病院に本人の意思に基づかず強制的に入院させられるという場面は、患者個人に対する重大な人権侵害があり得る場面である。さらに年単位で、意に反した入院が続いている患者が少なくないのが精神科病院である。仮にも個人情報を盾にするなどして情報が秘匿されれば、個人、またその人権が危機に晒されることにもなりかねない。高度な秘匿性が求められる情報だからこそ、むしろ「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要」な情報でもある...
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