医療DX(デジタル)化と精神医療の交差点:バラ色の未来か、それとも新たな分断か2

【編集部から】この記事は、前の記事の冒頭に記したように5月1日の「医療DX(デジタル)化と精神医療の交差点:バラ色の未来か、それとも新たな分断か」の続編で、内容が編集部にはむずかしかったので、紙の「おりふれ通信」には解説版を掲載し、ブログにはこの黒岩さんの原稿も掲載しているものです。

(精神疾患を抱えた)システムエンジニアの視点から 黒岩 堅

医療DXの一環として、電子カルテやマイナンバー保険証を用いた医療情報共有における監査ログ(アクセスログともいう=誰が、いつ、どこから、どの患者さんの情報を見たかの記録)の有無や仕組みは、非常に重要なプライバシー保護の観点です。以下に確認方法とポイントを整理します。

しかく 監査ログの有無を確認するための観点

1】電子カルテシステム単体での監査ログ

  • 多くの電子カルテベンダー(富士通、NECPHC、富士フイルムなどの業者)は、アクセスログ機能(誰が・いつ・どの端末から・どの患者情報にアクセスしたかを記録する機能)を提供しています。
  • ただし、病院ごとに設定・活用状況が異なるため、「システム上の機能があっても実際に記録・確認していない」ケースもあります。

確認方法

  • 通院中の病院の診療情報管理室または医療情報システム管理部門に対して以下のように尋ねてみてください:

「電子カルテの閲覧履歴(アクセスログ)は保存されていますか?また、希望すれば自分の医療情報に誰がいつアクセスしたか確認することは可能ですか?」

2】マイナ保険証を使ったレセプト情報のオンライン閲覧ログ

  • マイナンバーカードで医療機関を受診した場合、「マイナポータル」(=デジタル庁が運用するオンラインサービス。正式名称は「情報提供等記録開示システム」)というインターネットサイトで、自分の薬や病名などを確認できます。
  • しかし、医療者側の誰が・いつ、その情報を参照したか(閲覧ログ)は、現時点で、マイナポータル利用者には公開されていません。

確認先

  • デジタル庁または厚労省「オンライン資格確認等システム事務局」
  • 一般の問い合わせは以下:
    • オンライン資格確認等コールセンター(0120-95-0178)
    • マイナポータル お問い合わせフォーム

しかく 問題点・懸念点

項目

現状

懸念点

電子カルテの閲覧ログ

ベンダーごとに存在。ただし活用に差

患者本人が確認できない施設も

マイナ保険証経由の情報共有ログ

医療者側の閲覧履歴は非公開

誰がどこまで見たかが患者に不透明

患者への説明義務

不明瞭(機器操作で同意が取られているが)

実質的な同意か疑問が残る

しかく 改善提案と要求の方向性

  1. 「患者自身が監査ログを確認できる機能」の制度化
  2. 医療者側に「閲覧理由の記録」義務を持たせる
  3. アクセスの粒度(処方だけ、病名だけ等)を選択可能にするUI改善(=誰が、どの情報に、どこまでアクセスできるかを細かく設定できるようにすること)
  4. 同意を取った記録の文言・操作ログの保存

まとめ

  • 電子カルテの監査ログはシステムとしては存在しているが、患者が確認できるかは施設ごとに異なる。
  • マイナ保険証での情報共有における「誰が見たか」の記録は原則非公開で、制度的な課題が残る。
  • 確認のためには、診療機関・電子カルテベンダー・厚労省窓口へ個別に問い合わせる必要があります。

    補足
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000760676.pdf P10で下記の内容があります。マイナンバーは住基カードと同様のことは起こりえるシステムとなっております。

2025年07月16日 当事者レポート, オピニオン, 時事・ニュース | 固定リンク

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